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ゆるすということ

昨日、約30年ぶりに旧友との再会を楽しみましたが
この人たちと出会った高校には姉妹校があり、
当時その姉妹校で学長をされていたのが
故シスター渡辺和子です。

何年か前に著書『置かれた場所で咲きなさい』が
ベストセラーになったので、
ご存知の方もいらっしゃるのではと思います。

※余談ですが「シスター」というのは敬称のひとつなので、
シスター〇〇さんという言い方はしません。
今で言うと「さかなクンさん」みたいなことになりますから!※

二・二六事件のその後


シスター渡辺は85年前の今日、二・二六事件で
お父上が銃撃される一部始終を間近に見ていた方です。

お父上は当時教育総監だった渡辺錠太郎氏。
シスターはまだわずか9歳の少女だったときのことでした。

お母様や歳の離れたお姉様の言によれば

軍隊は強くなければいけない。でも戦争だけはしてはいけない

戦争は勝っても負けても国を疲弊させる
 自分が勝った国、負けた国に
 駐在武官として長いこと行ったけども
 そこの人たちがどれほど食糧や着るもの、家を壊されて
 困っているかをつぶさに見てきた。
 戦争だけはしてはいけない

と絶えずおっしゃっていたそうです。

それがもしかするとその当時、ひたすら
「戦争をしなければならない」
と思っていた側にとっては邪魔な存在になっていたのかもと
回顧しておられます。

後年、修道生活に入ってから

「お父様を殺した人たちを恨んでいますか」

と聞かれても

「いいえ、
 あの方たちにはあの方たちの信念がおありになったんでしょう。
 命令でお動きになった方たちを、
 お恨みしておりません。憎んでおりません

と淀みなく答えていらしたそうですが
ある日、テレビ局に請われて2月26日頃の収録に出かけられた際
ご本人になんの断りもなく、
かつてお父上を銃撃した反乱軍側のご遺族も呼ばれていたばかりか
控え室も同じで顔を突き合わせることになり
それはそれは重い空気が流れたそうです。

気を利かせて局の方がコーヒーを淹れてくださったけれど、
何度カップを口元に運んでも
ついに一口も飲むことができなかったと仰っていました。

口では憎んでいないと言いながら、
実際にはそういう方を目の前にしてコーヒーの一杯も飲めなかった、
そのようなご自分に修養が足りないと感じ

「私の中には父の血が流れているんだと感じました。
 私がどれほど頭でお赦ししていると言っても、私の血が騒ぐ。」

とありのままを述懐されています。

さらに時は過ぎ二・二六事件から50年が経った年。

今度は50年の節目の法要に招請されて参列されています。

反乱軍側の将校のご遺族主催で営まれた法要で、
それまで何度案内を受けても断り続けていた法要への参列でした。

意を決して岡山から上京したものの、法要が営まれている間じゅう
それはそれはつらいお心持ちでいらしたそうです。

この法要のあと、ある人から促され、言わば父上の仇とも言える
反乱軍側将校のお墓参りに初めて出向かれて
そのときのことを後にこのように語っておられます。

お参りしてお線香とお花を供え、
立ち上がってお墓から階段を降りて参りましたときに
男の方が2人、涙を流しておられた。
そのお2人が、私の父の寝所まで入ってこられた
高橋少尉と安田少尉の弟さんだった。
「これで私たちの2・26が終わりました」
「私たちがまず、お父様のお墓参りをすべきだったのに、
 あなたが先に参ってくださった。
 このことは忘れません。ついてはお父様の墓所を教えて下さい」
と言われ、お教えして、その日は終わりました。
-
その日以来、毎年お盆とお彼岸と、折あるごとに多摩墓地の
父のお墓はお掃除が行き届いて、時には植木が刈り込んである。
高橋様と安田様とはお手紙を交わす間柄になりました。
本当に、父が引き合わせてくれたことだと、
しみじみ思ったんですね。
-
自分だけが被害者のような気持ちを持っておりましたけれど、
反乱軍という名前をつけられた方々のご家族の50年、
どんなに辛い思いをなさったか、私は一度も考えていなかった。


ゆるすということ


シスター渡辺は、晩年、このようにもおっしゃっています。

父を殺した相手を好きになることはできなくとも
許すことはできます。
「許す」ということは相手の支配下から逃れること。
自分が自由になるために大切なことです。
いつまでも許せずにいると
「今あの人は何しているのだろう」と
結局その相手が私の心を支配し続けるわけです。
一度相手に対して悔しい思いを抱いているうえに
自分の貴重な時間を相手に支配されるなんて、
もっと悔しいことだと思いませんか。
「断捨離」という言葉がはやっているそうですが、
人間関係においても同じ。
「断つ」「捨てる」「離れる」をしないと
相手のことでがんじがらめになってしまいますから。

シスター渡辺のような壮絶なご経験はなくとも
私たちは常に小さな腹立ちとか憤りを感じやすい生きものです。

人間だもの。

中にはどうしてもゆるせないことも有って当然。


この世の中にゆるせないことはたくさんあって当然だし

ゆるすゆるさないは他人が決めることではありません。

また、ご自身でお決めになったとしても。
それは「頭で」決めたことです。

シスターのお話にもあるように、いざその人を目の前にして
究極、リラックスした気分でいられるかどうか、
何事もなかったように冷静でいられるかどうかは
また別の話です。

許す・赦す・恕す


心底ゆるすことを日本語では

恕す

と書きます。

当用漢字に含まれる「ゆるす」は「許す」のみです。
これは許可する意味のゆるす。
英語でのpermitのニュアンス。

「赦」の漢字も当用漢字に含まれてはいるものの、
「赦(ゆる)す」という読みは認められていません。
赦免とか恩赦とか、なんらかの罪をゆるすイメージ。
こちらはabsolveでしょうか。(違ってたらご指摘ください)

そしてもっとも私たちに必要で心に平安をもたらしてくれるのが

「恕す」と書く「ゆるす」。

「恕す」に至っては当用漢字にすら含まれていませんが
スマートフォンやタブレット、パソコンのキーボードでは
「ゆるす」と入力すればおそらくこの漢字も出てくると思います。

これは心底納得して、腑に落ちての「ゆるす」

英語だとたぶんforgiveになるのでしょうか。

「ゆるす」という意味の単語は、おそらく宗教とか文化の違いからか
英語の方がたくさんの種類を持っている印象です。

“恕す” には

私たちは些細なことでさえ「ゆるせない!」と思うことがあります。

それは人間として正常な「怒」の心の動きの一つです。
「怒」そのものは良くも悪くもありません。

完全なる中立です。

だから無理にその感情を抑え込んだり隠したりしなくていいです。

良い悪いと色をつけているのは私たち人間だから。

ゆるせないツボは人それぞれ。
その程度や深さも人それぞれ。

たとえば

なぜ怒る』の記事でも触れた

☆ 期待が外れたとき

他にも

☆ 信じていた人に裏切られたとき

☆ DVやハラスメント、虐待など暴力を受けたとき

☆ 大切なものが奪われたとき

など。

ゆるせない!と思っていても、すぐに忘れられるほどのことなら
特に生活に支障はないと思います。
忘れてそのまま、ということは既にゆるしているも同然だから。

受けた痛みやダメージが大きければ大きいほど、
人はなかなか人をゆるすことができません。

相手をゆるすことは自らを再び傷つけるも同然の痛みを伴うから。

だから、それに耐えられるだけの力や環境が整うまで
ゆるせない気持ちはそのまま抱え込んで・包みこんで、
持っていてもいいと私は思います。

ただし。

その出来事が、またはその相手のことが、頭から離れないとか
何十年経ってもフラッシュバックしてつらい、
嫌な気持ちからはもう解放されたいなどと思ったときは

恕して手放した方がスッキリします。

これはシスター渡辺も経験しておられる通り、確かなことです。

頭ではなく心でゆるす、心底からの「恕し」。
“恕し”は“緩し”にも通じます。


少し話がそれますが、
無意識に怒りを溜め、閉じ込める人には、肩こりや肩の痛みとなって
体が怒りを表現することがあります。
四六時中、緩まないからですね。

また、徒然草に
「ゆる(緩)くしてやはらかなる時は、一毛(いちもう)も損せず」
とあります。

ゆるして損することは実は何一つないと、私もそう思います。

ただ、実際問題として、程度の差はあっても
ご自身にとってダメージが大きかったゆるせない出来事ほど
恕すために自らの心の整理をすることはとても難しく、
気が遠くなるような時間と気力を必要とすることが多いです。

人間だもの。

大切なものを奪っていったり
自分や大切な人に危害を加えた人をそんなに簡単に
ゆるせるわけがありません。

生きているうちにそれができなくて、
ゆるせない気持ちを抱えたまま、苦しみのうちに身罷られる方も
多いと思います。

そう、
恕すことは結局は自分を苦しみから解放することなんですね。


ゆるし、にもフラワーエッセンスは大変役に立つツールですが
さすがにフラワーエッセンスだけでは時間がかかりすぎて
大変な場合もあります。

また、心底ゆるしたい、とご本人が思っていないことには
いくらフラワーエッセンスを飲んでも
なかなかその方向には進みません。

時短で“恕す”ためには、まずはご自身の心の深いところで
「ゆるす」ことに同意していただき、
フラワーエッセンスとカウンセリング、日々の内観などを
併用しながら進めていくのがおすすめです。

「恕」とフラワーエッセンス

ゆるしのためのフラワーエッセンスについては
明日、お伝えしたいと思います。
(※下に追記しました)

今日も最後まで読んでくださってありがとうございました。

いつも貴重なお時間を割いて読んでくださり、スキ♡してくださったり
コメント入れてくださったり…ありがたいことばかりです。
ありがとうございます。

awatosanuki@gmail.com

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