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声劇レビュー

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拝聴した声劇をレビューしたものをまとめています。
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2020年7月の記事一覧

2020_0727ハイドラレビュー

(全敬称略)

2020_0727ハイドラレビュー
ススキドミノ作

総評全ての役者が全力で
フルスイングするハイドラでした。
熱量というよりも純然たる熱さを感じます。

声そのものもそうなんですが
今回のキャストは四人とも演技のスタンスが
それぞれ違ったように思います。

プレイングスタイルに違いがある方が
私は好きなので、今回の上演とても楽しめました。

アリシア:瀬良に関して幼さと若さの間に

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2020_0725 椀種にはお豆腐を レビュー

(全敬称略)

2020_0725
椀種にはお豆腐を
穂春 作

総評独特のリズム感を持つ早瀬と
非常に特徴的な声質の宮原による
実に面白い組み合わせでした。

食事と家族をテーマにした
穏やかな空気の台本の上で
独特の化学反応を起こしていると思います。

宮原がモノローグを担当せず
また、早瀬の役者の個性が少し弱かったら
また違う印象を受けたと思います。

声と演技にそれぞれ特徴のある役者さん二

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2020_0725 夜雨に浮かぶ、月を見上げて

(全敬称略)

2020_0725
夜雨に浮かぶ、月を見上げて
月宮はる 作 

総評芯まで冷え切ってしまった寂しさを持つ柚月と
優しさというよりは頼りなさが先立つ感じの裕人の
切なさと苦味が強い組み合わせ。

二人がかりで愛の詩を紡ぐような台本だと思いました。
ああ、きっと救われねえんだろうぁこのシナジーは……。
と思いながらも劇後の二人の結末が少し気になる、
そんなお芝居でした。

市原柚月:

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2020_0717 パラノーマンズ・ブギー カラーズ・ウォーEP2 葡萄鼠の穴レビュー

(全敬称略)

2020_0717 パラノーマンズ・ブギー
カラーズ・ウォーEP2 葡萄鼠の穴レビュー

総評パラノーマンズブギーはお祭り感のある
良質なエンタメだと思うのですが
今回のお祭り感は抜群の一言でした。

大乱闘スマッシュパラノーマンズは
どの役者も非常に高回転で最後まで
誰一人失速することなく舞台を
ブイブイ回しておられました。

駅:月宮 はるに関してキャラクターの年齢設定及び背景

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2020_0714妖狐の婿取りレビュー

2020_0714 妖狐の婿取り
ちえ作

(全敬称略)

総評昔めかした物語の空気感をしっかりと描ききっています。
台本の世界観もしっかりしていて
そこに徹し切れる役者が乗ると
ファンタジーとリアリティは相反せずに
両立することを証明していると思いました。

現代劇ではあまり耳にしない言葉が多かったのですが
それらのニュアンスとイントネーションは
とても自然で現実に引き戻されることはありません

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2020_0715ハイドラレビュー

2020_0715 ハイドラ
ススキドミノ作

(全敬称略)

総評初めて観劇する演目でした。
冒頭から暴れられるアンセムを鳴らすような
攻撃的な台本だと思いました。

もし最初の加速でしくじったら、と考えると
ゾッとするような構造だったのですが
全役者が出鼻からお互いに踏みっぱなしだったので
最初からトップスピードに乗れて一瞬で引き込まれました。

最高速からゆっくりと減速して
また立ち上がる

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2020_0714 22:00 シガレットキスレビュー

2020_0714 22:00 シガレットキス
偪山 漱流作

(全敬称略)

はじめに今回は、同日2枠連続で
同じ1:1台本を別の演者で聴くという
大変実験的な機会を得ました。

後発22時組のお二人には申し訳ないのですが
21時組のお二人と比較を楽しみつつ
レビューを組ませていただきます。

総評全体を通して、この二人の組み合わせは
非常にドライブ感が強いです。

21時の二人は全体的に表現は

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2020_0714_21:00 シガレットキスレビュー

2020_0714 21:00 シガレットキス
偪山 漱流作

(全敬称略)

総評しっかりとした演技と声のトーンで
大人のときめきを体現できていたと思います。

やり取りのリズムの活かし方がうまく
場面のテンポやムードを損なうことが
一度もありませんでした。

ため息のタイミングさえ完全にシンクロしてます。
本当に腐れ縁の二人のように感じさせてくれました。

本編通して一度も凡ミスがなく
あわや

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2020_0711 パラノーマンズ・ブギーカラーズ・ウォーEP1 港湾の群青

(全敬称略)

2020_0711
パラノーマンズ・ブギー カラーズ・ウォー
EP1港湾の群青
ススキドミノ作

総評この外伝エピソードには本編とはまた異なる
往年のラブストーリーのような
コク深い甘さがあったように感じました。

それは、登場人物たちがお互いに撫で合うような
心地よい優しさに包まれているためでしょうか。

そんなメロウな雰囲気が出た一番の理由は
全員が非常に高いレベルで演技され

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2020年7月10日劇団摂氏零度第三回本公演レビュー

(全敬称略)

2020年7月10日
劇団摂氏零度第三回本公演

音響・主題歌制作 アルコ(摂氏零度座長)
作 動画制作 羽白深夜子(摂氏零度副座長)
演出 出演 劇団摂氏零度

総論テーマ楽曲を劇団座長が
ワン・オフにしているので
摂氏零度の世界観を完全に立て込んだまま
一気に劇場の椅子に座らせてもらえました。

開幕までそれはもう、焦らしていただきました。

待つのが楽しい劇場は最高だと思い

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2020_0709 tRiskEleレビュー

(全敬称略)

2020_0709 tRiskEle
揚巻作

総論間髪開けずに再びトリスケルレビューです。
私はこの劇の『全ての役が全力で感情をぶちまけられる』
という部分がとても好きです。

多分これから先も演者を変えて
しょっちゅうレビューさせていただきます。

今回のキャスティングは女性二人の対照性が顕著で
それをゲイルが少し引き気味にうまくまとめている
左右に幅が広いもののバランスが良

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2020_0616 GCPレビュー

(全敬称略)

2020_0616 GCP
ススキドミノ作

総論レディがしっかり振り切ったことで
全員が演技の枠幅を大きくとることができたと思います。

またエリートのテンポキーパーの作用が強く働き
各演者が演じやすい環境を生み出していたように思います。

その上で、ピエロとガールは
どういう表現を選んだのか?ということになりますが
その辺は各演者様ごとに関してのレビューに!

この上演の特徴

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2020_0628 デュプリケイト・サンクス レビュー

(全敬称略)

デュプリケイト・サンクス
ひよこ大福 作

総評キャスティング時点で企図していたのかわかりませんが
このトリオ、とにかく耳触りが良いのです。
質感は三者三様に違うのですがどれも耳に
心地よくて優しい。

劇でありながら環境音楽のようなリラックス感を覚えます。
命をつなぐ、という難しいテーマを扱った
お話だと思うのですが
この耳触りが、上手に皮を剥いてくれて
優しく食べやすくしてくれ

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2020_0706 紫煙の行方/バツが欲しくてレビュー

(全敬称略)

紫煙の行方
揚巻 作

総評間を味わう劇だと思いました。
両演者さんともそれを踏まえて
敢えてリズムを一定にクルーズコントロール。

緩やかな夜の
上り高速道路のような雰囲気を出して
テンションの落差も小さく、粛々とお話を進めていました。

恭子:麻音に関して喫煙者がタバコを飲みながらしゃべる時の
独特の呼吸感がよく表現されていると思います。
とくとくと緩やかにボウリングが転がるよ

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