2020_0616 GCPレビュー

（全敬称略）

2020_0616 GCP
ススキドミノ作

総論

レディがしっかり振り切ったことで
全員が演技の枠幅を大きくとることができたと思います。

またエリートのテンポキーパーの作用が強く働き
各演者が演じやすい環境を生み出していたように思います。

その上で、ピエロとガールは
どういう表現を選んだのか？ということになりますが
その辺は各演者様ごとに関してのレビューに！

この上演の特徴は、大どんでん返しを楽しむというよりも
安定した構造の上で、終始漂う危なげな雰囲気を
保ち続けたところにあると思います。

ピエロ♂：金飾艮之介に関して

やや高めの声を出す際、男性的になりすぎないように
女性の声の響きを意図してるのかなと感じました

実際この方、声のアウトラインが細いので結構ハマります。

ただもっとガンガンに高い、声の裏返る手前まで
攻めても違和感ないと思うし、キレキレになると思いました。

早いテンポで巻くセリフも、もっとスピードを上げても
声の相性的にはむしろハマると思います。

時間でいうと22:30くらいからの方が、俄然ノッてきてます。

エリート♂：ガロに関して

怒気を孕んだチンピラ感を遺憾無く発揮しています。
やや鼻にかけながら声を上下させる煽り方は
この人の特徴的な部分ですね。

リズミックに役を捉えると
（安定方向）ガール≦エリート＜＜ピエロ≦レディ（奔放方向）
という感じで劇は進むのですが

エリートは最後まで声と演技に
一定のリズムを保っています。

この方の演技は、激情的な振る舞いをする配役のものを
多く聞いていたのでリズムキーパーとしての彼はちょっと新鮮でした。

上記の蛇行するような煽りのときでさえ
一定のスピードで舞台を走らせられて、とても安定してると思いました。

レディ♂：アルコに関して

遠慮なく振り切っています。
これは、外連味とかそういう意味ではないです。

男性の声のまま女性の演技をしても全く違和感がないんですね。
これってフルスロットルでやってる人だけに起こる現象だと思います。
このレディは実在してます。

この極度な振り切りがあることで
他の配役に表現のマージンが生まれています。

好き勝手に振る舞うというよりは
思いっきり端に寄ってくれている感じ。
その結果、道路がすごく広く感じて
他の役者さんはある程度のチャレンジがしやすかったのでは？

ガール♀：麻音に関して

今回はニュートラルな音作りをしていると思うが
それが配役のバランス上、良い全体相を生み出している。
他の上演を前提として考えると
今回の演技は比較的フラットに、
敢えてカラーをつけすぎないという判断をしたのだと思う。

後半の見せ場では、遠慮なく、それでも変な作為を乗せず
ストレートに心情を表現していると感じます。
今回の上演は、安心して得意のストレートを選べた
という心境だったのではないでしょうか。