2020_0706 紫煙の行方/バツが欲しくてレビュー
(全敬称略)
紫煙の行方
揚巻 作
総評
間を味わう劇だと思いました。
両演者さんともそれを踏まえて
敢えてリズムを一定にクルーズコントロール。
緩やかな夜の
上り高速道路のような雰囲気を出して
テンションの落差も小さく、粛々とお話を進めていました。
恭子:麻音に関して
喫煙者がタバコを飲みながらしゃべる時の
独特の呼吸感がよく表現されていると思います。
とくとくと緩やかにボウリングが転がるようなリズムで
優しく話しかけるのは新鮮でした。
灰皿に置いたタバコの煙のように
スピード感が緩やかな劇でしたが
もったいぶらない一定のリズムがあることで
冗長にならずに済んでます。
今回の上演を聞いてこの人の
老婆の演技を聞いてみたいと思った。
徹 :金飾艮之介に関して
わかりづらくて恐縮なんですけど
この方、なんとも言えない従兄弟っぽさがあります。
久しぶりに冠婚葬祭で会う、少し年の離れた
思春期終わりかけの従兄弟が見えます。
力まない、飾らない、男性にしては
柔らかい輪郭の声を持っているので
懐にも意識にもスッと入りやすいです。
軽く吐き捨てるような言い回しでも
当たりが柔らかい。
武士を思わせるようなお名前とは裏腹に
この人の柔らかい声は競合が少ないと思いました。
敢えてセリフの中で緩急をつけずに
今回の演目の独特の立ちのぼり感を味わせてくれます。
バツが欲しくて
揚巻 作
総評
今回は掌編の二本立てでしたが
両名共二部でそれぞれキャラクターを変えてきています。
そういう意味でも連続上演した意味があって、
二幕の対比と演者の創意を探るのも面白かったです。
ユリ:麻音に関して
明らかに意図的に声に圧縮をかけて
コミカルな演技をわかりやすく出しています。
とても表情豊かで、スピーディーな表現が上手。
この方は、劇中でアップ・サイド・ダウンを演じさせると
劇エンジン(?)がドカンとかかるように思います。
演じているうちにしっかりと自分の中に
役が入ってくるタイプなのかもしれないですね。
キャッチーで元気な演技はとても上手なのですが
この人の声は、劇後半テンポを落とした時の
申し訳なさそうなネットリした声に旨みがあると思います。
春樹:金飾艮之介に関して
紫煙〜の柔らかさから脱力の演技に転向して
駒のように音を変えて回転するユリの
忙しさをゆらりゆらりと受け流しています。
全体的な受けに徹するっていうのは
結構大変だよなぁと思うんですが
この方の地(ぢ)は、とても落ち着いて聞こえるので
捕手的な振る舞いとの相性はめちゃくちゃいいと思います。
この方の声は息をよく震えさせると予想以上に強く振動するので
感情表現をする際に隠し球として使えそうです。
最後の口説き方は実直でゆっくりと迫る感じがしてグッときますね。
非常にわかりづらいと思いますがバツイチ男感も
非常によく出ててます。なんの共感でしょうこれ。
でもバツニは市場価値大きく下がるから気をつけろ!
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