2020_0717 パラノーマンズ・ブギー カラーズ・ウォーEP2 葡萄鼠の穴レビュー
(全敬称略)
2020_0717 パラノーマンズ・ブギー
カラーズ・ウォーEP2 葡萄鼠の穴レビュー
総評
パラノーマンズブギーはお祭り感のある
良質なエンタメだと思うのですが
今回のお祭り感は抜群の一言でした。
大乱闘スマッシュパラノーマンズは
どの役者も非常に高回転で最後まで
誰一人失速することなく舞台を
ブイブイ回しておられました。
駅:月宮 はるに関して
キャラクターの年齢設定及び背景を意識して
はっきりと男性(青年)に寄せた声を出されています。
清く凛々しい声で思い切りよく演技していて
この方のイメージがガラッと変わりました。
たおやかな女性の役がよく似合うかなと思ったが
美丈夫の青年を思わせる演技もとても映えますね。
中盤から、押掛女房感がそこはかとなくにじむ
「やたら存在感のあるうやうやしさ」を見せてくれます。
これが実に良い。実に良いんです、とてもいいです。
私の名前も聞いてください。
金田:愛の伝道師しょーに関して
『とっぽい感じ』が実にいいです。
不良感というか、こういった仔ヤンキー感を
出せる人と出せない人がいるんですが、しっかり出てます。
悪そうな感じと小悪そうな感じというのは
ハッキリ違うと思うのですが
この方の金田は後者の方で同時に
本作のムードメイカーとしても最高に機能しています。
かといって単なる賑やかし役というわけではありません。
変幻自在の一人芝居からのシリアスな空気の立ち上げは
鮮やかな手際で非常に見事でした。
この方は一人芝居や長いセリフでの
リズムの取り方が抜群にうまいです。
早すぎず遅すぎず、ボールキープ中の挙動が
めちゃくちゃ安定しています。
テンションも上げすぎず下げすぎず、丁度良いところで
劇中のボルテージをうまく指揮しておられました。
緒方:ぱんだ。に関して
声帯の負担を恐れずに豪快に中低音を響かせてます。
普段のお声と比較すると相当荒ぶっておられるので
結構大変だったと思います。
ここまで、デフォルメを思い切ったことにより
ハッキリとジェンダー感を飛び越えていると感じます。
よく乾いた薪に火をくべて、そこにオイルを上掛けしたように
どんどん毒気とギラつく感じがセリフ毎に加速していきます。
その一方で、殺気を抜いた時の少年のあどけなさも
しっかりと残してあるのが憎いですね。
ブンブンブイーン ガシャーーン!
のところが、私本当好きなんですよ。
本気でこういう擬音を出した時って
ものすごいリアリティが生まれると思います。
これほど美しく、違和感なく
「死ね」
って告げられる人もいないんじゃないのでしょうか。
仲也:yato。に関して
野太いアナコンダのような太くも鋭い声をしてます。
メリハリのつけ方でも爬虫類的な恐怖を与えます。
敢えて息を吐き出し切らずに、半ばで飲み込みながら
セリフからセリフへコントラクション・アンド・リリースで
駆け込んでいく早回しは目も回る狂気感があります。
単に邪悪なだけでなく、どことない愛らしさを出しているのが
この人の上手いところだと思いました。
徹底されたデザインの中に相反する一要素が見えると
キャラクターがずっと魅力的に見えるんですよね。
木本:たかはらたいしに関して
冒頭の出演では正中の中段、
あえて下に潜らない表現を好んで選んでいるように感じました。
これは、今作での木本の役割の意味を反映させて
あえて王道に近いスタンスにシフトさせたのだと思います。
リズムも前回の登場時のように
裏を意識した、やや後ろノリで来ることなく
ごくシンプルな拍子でした。
金田とのタイマンまでは。
ここからはこの方の本領発揮です。
後攻のインファイト、やや音をビビらせたように
下から上に大きくぶち上げる台詞回しで
引っ掻くように母音をジャキジャキ鳴らしながら
相手を煽りながら後追いのドッカンターボで
聞かせてくれます。
そして今回、この方は殴りバフの立ち回りをしています。
前回は殴られるために前に出るように
相手の演技に積極的に添いながら
自分のテンションを逼迫させるというやり方をされてましたが
今回はそれに加えて、相手のテンションを高めるために
前に出ていくというアプローチを意図しているように思います。
相手はもちろん金田です。
ボールキープのうまい金田だからこそ、
この高度なフリにしっかりと答えてくれたのだと思います。
花宮:KiRi❇︎に関して
今回の上演では呼吸とビブラートに関して
はっきり意識しているように感じました。
具体的には、声での鳴きと、息での鳴きとの違いを
しっかり分けようと意図されてたのではないかと。
その意図が及ぼす作用は、圧力の違いだと思います。
どうしても声だけで鳴くと高い音域での作用になって
薄くなってしまう傾向があるのですが
しっかりと息で鳴くと、擦り切れてしまうような音ではなく
圧迫感を伴う鳴きになり存在感が出ます。
やっているご本人は結構息苦しかったかと思います。
金田と駅に接触するタイミングでは殺気を遠慮なく前に立て、
かと思えば、次の場面では曹長との広い距離を
瞬間的に選択されてます。
やはりこの人は間合いのセンスが抜群に良いですね。
駅との1:1の構図では珍しく花宮側から
仕掛けに行くタイミングがあります。
その際、ここまで温存していた(かのような)
平時よりずっと低めの説得力のある声を選んでいます。
フォークボールを勝負の一球までとっといた、隠し球ですね。
その選球眼もとても良い。
そういう意味じゃありません!以後の
プレッシャーなんか半端じゃないです。
今回の花宮さんは下から上まで使い切った
捨てるところなしのマンボウのような役回りでした。
殺意の波動に目覚めた花宮の狂気感といい
相手の動きに随意合わせられながらも
ご本人は縦横上下の幅が広い役者だと思います。
N・隊員・店員・曹長・伝馬の戦士:オルット3に関して
本日のオルットさんは
いつもよりずっとトルクが出ていました。
これまで、あまり前に出てこないようにした
控えめなナレーションをされていたように感じましたが
今回の声は恐れず前面に出てこられてます。
強く押し出すと苦味より色気が出るんだなこの人は。
他の役でもいつもよりグイグイと出てきます。。
全役者中、出演が最も多いオルット3さんのナレーションは
この企画の顔といっても過言ではないと私は思います。
音響はゆう兄とガロ
動画はアダツさんでした!
いつもフェスティバルの準備ありがとうございます。
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