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「Viva! 公務員」

原題:Quo vado?
監督:ジェンナーロ・ヌンツィアンテ
制作国:イタリア 
製作年・上映時間:2015年 86min
キャスト:ケッコ・ザローネ、ソニア・ベルガマスコ、エレオノーラ・ジョバナルディ

 公務員という大きな括りで話し始め不快になられる方もあるかもしれないが、大方の人々の意見は洋の東西を問わず同じで「公務員なったもの勝ち」。
 この夏、唯一手放しで楽しんだのはこの作品。
 ヨーロッパの映画の中ではイタリア作品はシリアス、コメディに拘わらず根底に「生きることを楽しむ」ことがあることが多く若干他国と出来合いが違い、期待を裏切られないことが多い。

 幼い頃から周囲の大人の影響で将来の職業は就労内容は楽で退職後も一生生活が保証されている「公務員」と飛行士や科学者に目移りするどころかターゲットは全くブレずに強力な「コネ」まで使い希望を叶える。夢を叶えた筈が政策変更によるリストラの波が公務員まで押し寄せ彼にも不幸な矢が刺さろうとするところを懸命に逃れる話、と実に他愛ない。が、元々俳優ではなくコメディアンであるケッコの演技は終始アクが無い笑いを取りぱなっし。茶化しているようだが、これって事実で日本もそうよね、と苦笑も多々。

 原題にもあるよう「次は何処?」上層部は最後の抵抗者ケッコを退職させたくてあちらこちら「僻地」へ左遷するのだが、それが極地であっても楽しんでしまう彼。この辺り、ステレオタイプのイタリア人を自虐的に良く描いている。少なくとも日本では先にも触れたように根底に「人生を謳歌する」ことよりも「真面目・規則遵守等々」の方が強くこの手の作品は難しいだろう。

 リストラ担当役人シローニ女子がケッコに劣らず好演。どのような難題を用意しても暖簾に腕押し状態で彼女は段々と仕掛ける策略に自らが絡み始めコメディの仲間入り化しているところを真面目に演じギャップで笑いを取っていく。

 実は上記の一枚が映画冒頭シーンであり、時々挿入される場面だ。
 アフリカのとある場所で原住民カズー族に捕まる。ケッコの命は彼が話す身の上話の「出来」にかかるが、そこに嘘が混じるようなら即死が待つという展開。ケッコの回想が始まるがこれ自体嘘のような話なのでカズー族らはその話にウケたりブーイングしたり「死」が右へ左へ行くのだが、これもまたコメディ味。この冒頭の大人の寓話的な設定が全体にまとまりを与えていた。
 館内は終始笑いがあり、心地よい時間だった。
★★★☆

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