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「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」

原題:Genius
監督:マイケル・グランデージ
製作国:イギリス・アメリカ
製作年・上映時間:2016年 104min
キャスト:コリン・ファース、ジュード・ロウ、ローラ・リニー、ガイ・ピアース、ニコール・キッドマン

 予告を見た時は、キャステイングが揃い過ぎて寧ろ外さないで欲しいと願うほど。只、この映画に限らないがアメリカ男性二人を描いているにも関わらず、男性陣が見事に英国人である。これでいいの?と、つぶやきたくはなる。
 「奇蹟がくれた数式」同様、ここでもtitle「Genius」が示すように天才が描かれる。天才を世に理解させる為のpartner関係の年齢差も親と子に近い意味では両作品は似ている。

 フィッツジェラルド、ヘミングウェイこの文学者の名は仮令その著作を読んでいなくても多くの人が知っている。アメリカ文学史の屋台骨のような編集者マックスウェル・パーキンズと彼に見出されて名を残すトマス・ウルフの話だ。元々フィッツジェラルドが好きだった為、この当時の時代背景が伺えたことは大変面白かった。でも、ガイ・ピアースがフィッツジェラルド役だったのは様々な役をこなしてはいるのは承知だが驚く。

 トマス・ウルフ著作へのアドバイスが許容を越える辺りから、トマス自身に限らず観ているこちら側も編集者の権限、領域は一体どこまでなのかと考えてしまう。「戦争と平和であってもこんなにカットしていくのか?」と食い下がる場面。天才自身には解らなくても「天才を見てきた人には解る領域」があるのだろう。
 相手がどれほど天才であっても、それが世に出された時に人々に正当に理解される、或いは受け入れられることは保証はされていない。トマス・ウルフの感性を変えようするのではなく感性を際立たせる作業。前にも書いたが原石を磨き、カッティング方法を教えるのが編集者の仕事なのだろう、おそらく。

 編集者を演じるコリン・ファースは大きな演技は見せない。全般原稿を手にしており表情が全てといってもよい位だ。一方、精神の振れ幅の大きいウルフ役のジュード・ロウは躰全体でその自由闊達さを伝えてくる。夫々の妻たちの控え方もバランスを崩さず上のポスターそのままの映画だ。
 天才と凡人。天才から迸る叡智、言葉、閃きは切磋琢磨の結果ではなく源流を体内に持つオリジナリティの圧倒的存在。偶然に天才物を同じ日に二作品観て持った感想である。
★★★★


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