ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開
急に抽象画を描きたくなり、その参考に最適の展覧会を発見したので、早速、アーティゾン美術館へ。抽象画展を見たからと言って、こうして展覧会レビューを書いたから抽象画を描けるようにわけではないが、ちょうど見たかった絵が揃っているこの機会を見逃す手はない。
「抽象絵画」という大きな括りの展覧会には、その定義や成立の歴史の解釈が重要だが、本展は「抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」というサブタイトルが示す通り、セザンヌに始まる構成となっている。抽象絵画というのは原始や古代の時代にもあったのではないか等と色々考えてしまうのだが、西欧における「覚醒」をセザンヌからと捉える解釈にも頷ける。
ジャクソン・ポロックやホアン・ミロ、カンディンスキー といった、抽象絵画と言えば思い浮かぶ画家がもれなく登場するのも嬉しく、その数と多種多様な表現に圧倒される。
印刷物やデジタル画面で見慣れている有名な絵も、アウラに満ちた実物を目にして、違った印象を受けることがある。それは一抹の翳りだったり、深みだったり、痛みだったりと様々だが、その多様さも抽象絵画の魅力なのだろう。
アカデミックな西洋絵画の伝統から逸脱し、当時としては前衛中の前衛だったこれらの作品は、具象絵画よりも鮮烈かつ敏感に時代の雰囲気を捉えているとも言えるだろう。現代人の目で見ても斬新な作品が揃っているが、そのコンテンポラリー性によって、どこか懐かしい印象を受ける作品も少なくない。
本展の特徴は、日本における展開も盛り込み、日本人作家の作品も豊富に取り上げている点である。世界各地で様々な解釈で開催されてきた同種の展覧会とは一風異なる構成となっている。
また、終章で「現代の作家たち」 の作品も多数紹介しており、歴史を辿るだけではない、現代におけるコンテンポラリーな展覧会として完結している。これは、現代美術まで取り上げるというアーティゾン美術館のコンセプトによるものらしいが、その充実ぶりから、アートを未来に繋げていくという石橋財団の意気込みが感じられる。
今回は、リタ・アッカーマン、鍵岡リグレ アンヌ、婁正綱、津上みゆき、柴田敏雄、髙畠依子、横溝美由紀の作品が終章を飾っているが、今後も全ての企画展の終章が「現代の作家たち」となるのなら、「目指せ、アーティゾン!」がアーティスト達の目標の一つとなる日も近いことだろう。
あら、なんと今日まで!まだの方はぜひお見逃しなく。
展覧会名:
ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ
会期: 2023年6月3日[土] - 8月20日[日]
開館時間: 10:00ー18:00(8月11日を除く金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日
主催: 公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
会場: アーティゾン美術館 6・5・4階 展示室
https://www.artizon.museum/
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