ミックスってどうやったらいいの⑤

前回の記事でキック・ベース・メロディ楽器の
パラミックスおよび2MIXが終わりました。

ちなみにメロディ楽器に対する補足ですが
リバーブに関しては、パラミックス完了後
「音量が適切なのに浮いている」場合のみ
一番最後にショートタイプを差すようにしてください。

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■ピアノ

どの程度の量を打ち込んでいるかにもよりますが
ここでは伴奏と呼べるくらい、1トラック内で
低~高音域までカバーしていると想定します。

現在、パラの段階で最低限のコンプとEQを差した状態です。
お次はマルチバンドタイプでダイナミクスを
コントロールできるプラグインをインサートします。
※マルチバンドコンプレッサーでもOKです。
(参考:私はDAW付属の『Multiband Dynamics』を使用)

そして低・中・高を別個で処理していきます。
基本的に低音はキック・ベースと被るので
強めに潰す + Gainを下げて馴染ませます。

中間の帯域は大半のピアノ音源において
音がくぐもって聞こえる原因になっています。
このあと追加でEQ処理をおこないそれを解決しますので、
下準備としてここではわずかにGainを上げておいてください。

高音は鍵盤を弾いたときのアタック感に関する領域ですが
ソロ以外は原則「まるっこい響き」にした方が全体として
まとまりやすいため、低音と同じく強めに潰し、Gainは据え置き。

上記がすべて終わりましたら、適用→バイパスを繰り返し
ちょっとでも聴きやすくなったかを確認します。
問題なさそうなら、今の処理によって変化した音を
再びEQをつかって整えていきます。
~200Hzはハイパスフィルターを軽くかけてソフトにし
500Hz~1kHzは2バンド使ってそれぞれ-3dbくらい削り
音をくぐもらせている中間成分を取り除きます。
2kHzは美味しいことが多いので少しブーストを吟味。
それ以降の帯域も、先ほど潰したアタック感の微調整がてら
少しブーストしてみても良いと思います。
なお、EQにオートゲイン機能がついてる場合はONにしてください。
ない場合は、下がった分の音量を
「プラグイン内の全体Gain」を上げて手動で調整します。

ここまで来たら、次はリミッター。
これもコンプと同じで、波形が見られるやつを用意してください。
で、例えば平均的な山頂部分(ピーク)が-6dbで
谷底部分が-10dbになっているような場合は、
-9dbを目安にそれ以上の音をばっさりカットしちゃいます。
この際、明らかに音がゴワつく場合は
もう少しCeilingを上げて対応しますが、
原則として山頂と谷底の中間地点(本例では-8db)よりも
少し下のところでカットしたほうが良いので
もし整合性が取れないようでしたら
ここまでに差したプラグイン設定を見直してください。
なおリミッター適用後も、マルチバンド処理後と同じように
EQで微調整を加えます(音の不足・過多を修正するイメージで)。

さて、この段階で良い感じのピアノに仕上がっていれば良いのですが
キック、ベース、メロディと同時に鳴らしてみて
「まだ融け込んでくれないんだよな……」という時は
魔法系プラグインの出番です。※もってない人はゴメンナサイ。

・依然として相当くぐもっている→Zynaptiqの『UNFILTER』
・いかんせん中音域にツヤがない→Techivationの『M-Clarity』

これらを差し、プリセットを基軸にブラッシュアップします。
(その後もやはりEQで微調整してください)
そして最後に、特定の音程だけが飽和して
ハウリングみたいな響きになっている時は
それを狙い撃ちで修正できるKirchhoffなどのEQで
Q幅を最大限絞って、その不快な部分だけGainを下げましょう。

■コードトーン役のトラック

あまり動きのない、楽曲の和音を補強する役割をもった
単一音程で書かれている中音域前後を担当する楽器や
(例:ホルン、ビオラ、クラリネットなど)
和音で書かれるストリングス・PAD系の処理についてです。

まず前者(単一音程系)はパン60~80(LR不問)に設定します。
その上で、2個目のコンプレッサーを差して強めにかけるか、
すでに波形の凹凸が結構なだらかで良い感じの場合は、
リミッターで山頂-2dbくらいを削り、さらに海苔波形っぽくします。
あとは他のトラックと比較して相対的に「目立たない」よう
EQでカドを削りつつ「でも存在感はある」を目標に調整します。
この時“加工感バリバリすぎる……”という音質になってしまったら
もう少し自然になるよう、ここまでのプラグイン設定に戻ります。
最後はフェーダー音量で微調整して完了。
※理想形は、のっぺりしていて誰も邪魔しないような優しい響きです。

後者(和音系)につきましてはデフォルトのパン(センター)のまま
基本的に前者と同じ処理をしていきますが
ここで重要となるのは「くぐもった成分」を敢えて残すこと。
和音系コードトーンはすっきりクリアな音質にさせてしまうと
楽曲が軽くて安っぽく、タイトでぺらぺらな響きになりがちです。
他のトラックは晴れやかな方向に加工していって問題ありませんが
このトラックだけはわざと濁り成分を活用していきましょう。
その意味でサチュレーターやテープシュミレーターでの補強は有効ですし
ロングリバーブとの併用なんかもオススメです。
※ただし、もともと奥行き・ステレオ感のあるPADなどは不要。
 フラットな音のストリングス系などに効果を発揮します。

なおステレオイメージャー系のプラグインをお持ちでしたら
それぞれWidthを80%~120%くらいで吟味するとベターです。

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