月が綺麗ですね。
夏目漱石が「I love you」をそう訳したみたいだがそれに続く言葉なのかなって僕は勝手に思ってしまった。
「君の膵臓を食べたい」
ヒロインは最期の言葉にそれを残して言った。冒頭付近でふざけ半分で言われるその言葉とは意味合いが違う。しっかりとした意味がある。
自分を持っている主人公にひそかな憧れを持ち無茶なわがままを言い続けた。彼女のわがままだけが二人の関係を取り持つものだった。関係性を「なかよし」とか名前を呼ばない小さな抵抗で、曖昧なものにしてきちんと特別な存在として受け入れれない不器用な二人の物語。
ちゃんと彼女は死んだ。助かる道は無かったとしても、最後に唐突に理不尽に平等に死んだ。彼女が言っていた、「命は平等。私の前に君が急に死ぬかもしれない。だから毎日をきちんと生きないと。」その通りなんだけれど自分には言えない、自分の命が長く続くように願ってしまって大切な人と長くいたいと思ってしまってそんなことは言えない。とても余命宣告された高校生の言葉だと思えない。すごい強いと思ってしまったけど、それは気丈に振舞っていただけだと知った。押しつぶされそうになりながらも彼女はそれを死ぬ間際まで主人公以外には貫いた。彼女はそれを弱いからなんて言うけれど、そこまでの信念を持てるならもう十分強いと思う。
彼女の死に方はベストだった。死に方にベストなんて無いかもしれないけれど僕はあの死に方がこれ以上ないくらい綺麗だと思ってしまった。
「君の膵臓をたべたい」 住野よる
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