あなたの中に名作はいますか?と言われた気がする。

圧倒的読書量の差がここにあるな。
僕の大好きな森見登美彦さんとの差はえげつないものがあると実感させられる物語。あの名作たちを全部自分色に染め上げることが出来るほど僕は読み込めていない。もちろん名作を読んでいることが読書量の証明にはならないが、もしも僕が誰かの作品を「新釈」してみろと言われてもここまでのものはかけないであろう。

また、舞台が京都の町になっていて「走れメロス」では事細かに描写が書いてある。まるで自分の足で何度も歩いたことがあるかのように情景が浮かぶ。僕は他人にその場所を具体的に浮かばせるほど知っている場所を知らないし、妄想の中で一つの町を作り上げるほど豊かではない。ここでも負けだ。何の勝負をしてるのかと言われても何も言えないのだが好きな人には勝ちたいという欲望が出てしまうのでしょうがない。

ところで、僕は、本人の意思かどうかはわからないが森見登美彦さんの小説は説教じみた高説みたいなのがなくて本当に好きでしょうがない。何かを読み取らないといけないのではないかという焦りがない。
ただ森見登美彦さん自身のスキルを余す事なく使ってみたらこんな文章が書けました、読んでみてくださいと言われている感じで気兼ねなく読める。情景がすぐ浮かんできて、不思議なふわふわした世界が現実にあるようにまるで体験したことがあるようにすんなりと自分の中に入ってきて楽しい。

いつか何かの文章が書けるなら「新釈 森見登美彦」を書きたいな。

「新釈 走れメロス」 森見登美彦

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