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賑やかな客席の話(脚本・演出家 藤井颯太郎)

お芝居をつくり続けていると色んなお客さんに出会う。面白いことなど1mmもないシーンで笑い転げる人、重要な場面に限って咳込んでしまう人(心配になる)、突然歌を歌い出す人(心配になる)、感想がリアルタイムに口から漏れでる人、バレないように小声で歌を歌い出す人(心配になる)、お気に入りのセリフを俳優よりも先に口にしてしまう人など、本当に色々なお客さんに出会う。

二十歳の頃、僕の芝居を見て「あなたの作品が好きではない」という文章から始まる四万文字ほどの劇評を送りつけてきたお客さんがいた。その芝居の台本は三万字位だったので、越された一万文字分、妙に感心した。内容としては作品への批判と改善方法がびっしりと書かれていた。「期待して応援しているから伝えているのだ」という一文も、繰り返し添えられていた。内容に納得いかず腹が立ったので、その劇評に対する評「劇評評」を五千字ほど書いて送り返した。数日後、四万文字に対して五千文字を返したのがよくなかったのか、「劇評評評」が送られてきた。仕方がないので僕も「劇評評評評」をしたため送り返す。やりとりは何週間も続き、最終的にちょっと仲良くなった。

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