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勢いでお泊り

インド・ラジャスターン州に入り、私が最初に訪れたのは"白の街"と呼ばれる「ウダイプル」。

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この街に辿り着いたことをSNSにアップしたところ、日本に住むインド人の友達からコメントが投稿された。

「ここは私の故郷です。でも今は引っ越して家族はジャイプルに住んでいます。ジャイプルに行ったら、私の家族があなたを観光に案内したり、ご飯を一緒に食べることができます」と。

この日本に住むインド人の友達だが、私の英語のリスニング力が申し訳ないほど低いため、いつも上手く会話が成り立っていなかったのにこのようなコメントを書いてくれた。

だけど、せっかくこのようなコメントをくれたので、可能なら彼女の家族に会ってみたいなと思った。「私の英語力は乏しいけれど、それでも大丈夫ならぜひ会ってみたいです」と返答した。

すると彼女はすぐに家族に連絡を取ってくれたので、私はジャイサルメールという街から9月28日にジャイプルに到着する予定であることを伝えた。

ジャイプルに到着した1日目と2日目は1人で観光、3日目は日本に住むインド人の友達家族とランチ、そして4日目の夜に次の街へ向かうことにした。

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ジャイプル3日目、9月30日の朝11時、今日は日本に住むインド人の友達の妹さんとお父さんがホステルへピックアップに来てくれる約束だ。

朝11時を過ぎるか過ぎないかのころ、「渋滞で30分ほど遅れる」とのメッセージが入って来た。(どんな人なのだろう)私は緊張していた。連絡のツールとして使っているWhat's UPのお父さんの写真は無表情で少し怖そうに写っていたからだ。

11時半頃、明らかにお父さんらしき人が現れた。「ウェルカーム(ようこそ)」と笑顔で言ってくれて一気に緊張が緩んだ。妹さんはモデルのようにスタイルがよく高校生なのに大人っぽい。

車に乗り込んで自己紹介をしたら、「お腹空いている?今、妻がランチの準備をしているからすぐに家に向かうよ」と声をかけてくれて、チョコレートをくれた。出会った瞬間から(すごくいい家族だな)というのが伝わって来た。

家に着くと、お母さんが見えたと思ったらシュッと消えて行った。(私が来たらまずかったのかな)と一瞬不安になったが、すぐに出てきたので挨拶をした。

私は自分の名前を言った後に「プリーズ・コールミー・ラクシュミー(ラクシュミーと呼んで)」と言った。

私が"ラクシュミー"というニックネームを選んだことには理由がある。インド人に名前を聞かれたときに、もちろん本名を名乗るのだが、その音がインド人には認識するのが難しいらしく「ラクシュミー」と聞こえるらしいのだ。インド人の多くの人が信仰するヒンドゥー教には「ラクシュミー」という神様が存在することもあり、実際にこの名前を持つ女性も多い。

そして偶然にも、この家族のお母さんの名前も「ラクシュミー」だった。"Wラクシュミー"ということで盛り上がりつつ、ご飯も出来上がりランチタイム。

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丁寧に作られた、できたてのインドの家庭料理。
レストランで食べるものと比較にならないぐらい美味しかった。スリランカでも思ったが、家庭料理は本当においしいと思う。理由の1つは、食べる時間に出来立てを食べられるように作る点があると思うが、あとは作る人の腕と込める愛情か。

ランチの後は、私が行きたいとリクエストした、染物が有名な街「サンガネール」に連れて行ってくれた。

ここには染物工場がたくさんあるらしく見てみたかったが、すでに夕方になっていたということもありそれらしき場所はどこか分からなかった。友達の家族は、ここで私にインド女性の普段着の洋服とベッドカバーをプレゼントしてくれた。

その後、ホステルに送り届けてもらうために車に乗っていたが、日本に住むインドの友達から電話がかかって来た。

「このままホステルに戻りたい?それとも家に泊まりたい?」私は迷った。せっかく出会えたのにこのままお別れもさみしく感じて「泊りたい」と答えてしまった。お父さんは「一旦ホステルに寄る?」と聞いてくれたが、面倒かと思いそのまま家に直行してもらうことにした。

そして、夜ご飯もお母さんの手料理をありがたくいただき、エアコンもWi-Fiも完備された快適すぎる環境で私は泊るのであった。

翌朝、私はホステルに戻る気満々でいたのだが、お父さんは言った。「夜に出発するなら、夜まで家にいなさい。駅まで送って行ってあげるから」と言う。(こんなにお言葉に甘えていいのかな)と思いつつも、ついついお言葉に甘えて一旦ホステルに荷物を取りに送ってもらい家で過ごさせてもらうことになった。

朝、昼は日が昇ってとにかく暑いので家の中でグータラし、少し涼しくなった夕方前ぐらいに、妹さんのダンスの衣装の買い出しに行くことになった。私が訪れたこの時期は、インドのお祭り"ディワリー"の直前。妹さんはとってもダンスが上手らしい。

着いた店はキラキラでカラフルな衣装が並ぶ、ダンス服の専門店。
かわいい服がいっぱいで目移りしている私をよそに、お母さんと妹さんはサクサクと厳選し購入!続いて、洋服に似合うアクセサリーや靴など、次々と選んでいく。目くるめく速さで彼女たちの買い物は終わった。

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お母さんは、妹さんの靴と一緒に私にも靴を買ってくれようとしたが、前日に洋服もベッドカバーも買ってもらったので、さすがにそれは遠慮した。

このお買い物エリアまで、今日はお母さんの運転で来たのだが、なかなか激しいカーチェイスだった。日本では右が追い抜き車線なので、基本的に1車線でも追い抜くときは右からである。しかし、インドはどちらからでも追い抜く。その追い抜いたり追い越そうとする車を器用にかわし、スズキのマニュアル車を乗りこなすお母さんはスーパーかっこよかった!(私には絶対無理だ)

家に戻り、お母さんは夕食の準備に取り掛かる。私はそろそろ出発の時間なので最終パッキングに入る。友達家族からは、洋服やベッドカバーのほかにも、象の神様・ガネーシャの置物やキラキラのチャームなどかわいいお土産をたくさんもらった。

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私は尋ねた。「なんでこんなに親切にしてくれるの?」お父さんは言った。「君は、僕の娘の友達だ。そして今は私たちの友達だ」

そんなことを話していたら、お母さんがご飯ができたと言う。しかし電車の時間が迫っている。するとお父さんは「今、電車で食べる分を詰めるからもう少し待っててね」と、お弁当箱にご飯を詰めてくれた。

そして、お母さんと妹さんに礼と別れを告げ、お父さんのスクーターに乗せてもらい、猛スピードでジャイプールの駅に向かった。

幸い、ここはインドなので電車は遅れており、お父さんと別れた後も当分電車は来なかった。

やっと来た電車の中、私はお母さんが作ってくれたカレーとチャパティとご飯を噛みしめていた。

突如決まった今回の訪問だったが、何を持っていけばいいか迷った末に思いつかず手ぶらで訪れてしまい、家では何をどう手伝っていいか分からず散々くつろがせてもらい、私は最低の来客だった。しかし、友達家族は温かく迎え優しく接してくれた。

私はよく思う。
出会いは必然。人生に無駄はない。
会うべき人に会い、訪れるべき場所を訪れる。
失敗をしたとしても、それは必ずいい意味で未来につながる。

私の英語力は乏しいけれど、思い切って会う決意をして良かった。

余談だが、ジャイプルはピンクシティと呼ばれている。故に?駅の色もピンクっぽい色をしている。この駅が夜にライトアップされるとラブホテルのように見えたのは私だけだろうか。

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※2016年9月28日~30日 インド・ジャイプル
「Over30女子バックパックでアジア周遊」

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