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Study88_4.おいしいトマトのポタージュをつくる(加熱温度によって風味・テクスチャー・味の違いがものすごく出る!)
前回まで記事では、トマトの「成分」「香り」「調理による変化」「保存方法」に項目を分けて根本から理解していきました。今回からは、いよいよ実際の実験に移っていきます。
この記事は、「野菜Labo」がつくる東広島野菜をつかったポタージュスープ「朝のひとくちめ」の種類にトマトのポタージュを加えるべく、レシピ開発に向けての実験を行なっていくものです。
一連の流れを全て確認したい方は、下記過去の記事をご覧ください*
▶︎Study88_1.【トマトの基本を押さえよう!】トマトは肉の代用にすらなりうる/トマトの香りは、エキゾチックと青葉の香り加熱方法によってバランスが変化
▶︎Study88_2.【トマトの基本を押さえよう!】ペクチンによって状態が目まぐるしく変わる/酸性の煮汁で煮ると硬く仕上がる塩水で煮ると早く柔らかくなる
▶︎Study88_3.【トマトの基本を押さえよう!】オーブン焼きで何百種類もの新たな風味分子が生まれる/加熱のしすぎで風味は落ちる
この実験から生まれた商品はこちら
下記2つのマガジンにピックアップしていただきました*
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6日間で2万5000view突破しました!たくさん読んでいただきとてもうれしいです!トマト好きが増えますように*
今回の実験テーマは「加熱温度による香りの違い」を確認することです。
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これまでの下調べで、以下のポイントが分かってきました。
・トマトの香りには大きく分けて「青葉,刈草の匂い」と「トロピカルフルーツ,エキゾチック,麝香(じゃこう)」の2種類がある
・早く沸騰させると「青葉臭」は最小限に抑えられ、生のピューレを室温に置いたりゆっくり加熱したりすると風味分子は多くなる。
この「青葉臭」をあらためて認識することと、加熱方法によってどの程度差が出てくるものなのか?そして、その結果は人にとって好ましいものなのか?これらの点を明らかにしていきます。
今回用意した条件はこちらの2つ。
A、 トマトペーストを、強火で煮詰める
B、 トマトペーストを、トロ火で煮詰める
細胞の壊れ方の条件を合わせるため、両方ともペーストです。常温放置でトロミの変性が進まないように、ミキサーにかけてからすぐに加熱していきます。まずは強火からです。
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ミキサーにかけてすぐのトマトペーストに顔を近づけると、けっこう青臭い香りがしてきます。
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鍋ふちが焦げつかないようたまに混ぜながら加熱していきます。
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火にかけてから3分半ほど経つと香りが変わってきたことに気がつきました。青臭い香りが消えて、比較的慣れ親しんだ「トマト料理の香り」に変わっています。これが「トロピカルフルーツ,エキゾチック,麝香(じゃこう)」と表現されている香りなのかもしれません。そのまま加熱を続け6分ほど経ったところで鍋底にこびりついてきて焦げつきそうになったので火を止めました。
続いてトロ火加熱です。
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トロ火の場合、しばらくはうんともすんともいいませんでした。
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その後フライパンの中心がぷくぷくと沸騰してきたので、中心だけ温度が上がりすぎないようかき混ぜながら加熱をしていきます。表面温度を赤外線式の温度計で確認したところ、常時63〜79℃付近に収まりながらの加熱となりました。
強火で色が濃くなり、トロ火で白っぽくなる
完成したペーストがこちらです。
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まず色の違いに気づきました。写真だと全く分からなくなってしまったのですが、の「トロ火」は色が乳白色がかっています。「強火」は赤色が濃く、よくみるトマトペーストやトマト缶のトマトの色と同じです。
強火はモタッとずっしり、トロ火はぷるっと滑らかに
また、ペーストのトロミにも違いが。
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「強火」のは滑らかさが少なく「モタモタ」「ボテッ」としているのですが、「トロ火」は「プルプル」としています。フライパンからお皿に移す際も、お皿をテーブルに置く振動でもペーストが「プルッ」と動くのがわかります。「トロ火」は表面もテカテカしてとても滑らかです。
スプーンで混ぜたときの感触にも違いがあり、「強火」は硬く、「トロ火」は柔らかいのがわかります。
強火はトマト料理らしい香り、トロ火はフレッシュな香り
肝心の香りにも違いがありました。どちらとも常温に冷ましてから香りを確かめたのですが、器に顔を近づけて香りを嗅ぐと、香りの総量としては「強火」の方が「弱火」よりも強く感じます。これは予想外でした。というのも、
生のピューレを室温に置いたりゆっくり加熱したりすれば,風味分子は多くなる.
という記述があったことから「トロ火」の方が香りが強いと想定していたためです。香りの種類にも違いがありました。加熱途中にも感じたように、「強火」はいわゆる「トマトペースト」の香りが強く、「トロ火」はどことなく青臭い香りがしてきます。青臭さは生のペーストほどではなくやさしいフレッシュな香りで、嫌な感じはしませんでした。サラダやグリル野菜などのさらっとした滑らかなソースなどに使用する際は、低温じっくり加熱が向いていそうです。加熱温度による違いをどちらを採用するかは、作りたい料理の用途によって選べるようになるといいですね!
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青いフレッシュな香りは、混ぜたときに香りやすい?
この後、この香りの差は本当か?と何度も香りを試してスプーンでかき混ぜたりなどしていると新たな発見がありました。かき混ぜると(B)の方が香りが立って青い香りが強く感じられるようになりました。一方(A)はかき混ぜるとあの「トマトペーストらしい香り」が少し弱まり、代わりに青い香りが少し出てきます。主観の比較のため断定することはできませんが、青い香りは動きがある状態で香りやすい性質があるのかもしれません。(あくまでも仮説です)
強火はドロッとしてガツンと旨味
トロ火はふわっとしたテクスチャーで酸味が広がる
続いて味・舌触りについてです。テクスチャーと味にも大きな違いが出てきました。「強火」はドロッとしたテクスチャーで、口に含んだ瞬間ガツンと強いうま味を感じ、少しの甘味、奥に酸味を感じます。「トロ火」は舌にふわっと とろっとしたテクスチャーがあたり、酸味が水分と共にすーっと広がります。舌の上で柔らかくペーストが溶けていくような感覚がありました。
これはもしや、この現象が起きたのではないでしょうか。
生のピューレを( … )ペクチン分解酵素の変性温度(80℃付近)よりも低温で加熱すると,( … )ピューレのトロミが著しく増す.
この実験で、加熱温度によるトマトペーストの「香り」の変化のみならず「色」「味の感じ方」「テクスチャー」にも変化が出てくることが分かってきました!
実験はまだまだ続きます。続いての記事では、カット方法による違いを見ていきます。お楽しみに*
▼次の記事はこちらから▼
Study88_5.おいしいトマトのポタージュをつくる(加熱前のトマトのカット方法によっても甘味の出かたが全然違う!)
実験結果を生かして完成した商品はこちら↓
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