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Study88_3.【トマトの基本を押さえよう!】オーブン焼きで何百種類もの新たな風味分子が生まれる/加熱のしすぎで風味は落ちる
前回の記事では、トマトの加熱方法によるトロミの変化についてまとめていきました。今回は、焼き方の違いによる変化について踏み込んでいきます。
この記事は、「野菜Labo」がつくる東広島野菜をつかったポタージュスープ「朝のひとくちめ」の種類にトマトのポタージュを加えるべく、レシピ開発に向けての実験を行なっていくものです。
蒸す、焼く、オーブンで焼く、は
酸性な環境に置かれるので硬く仕上がる
蒸す,焼く,オーブンで焼く,といったように水に浸けない調理法では,細胞壁が弱酸性の細胞液にさらされるだけなので,(蒸気自体はpH6でやや酸性)、同じ時間煮るのと比べて硬い仕上がりになる.
「煮込み」だけではなく、焼きの話に派生してきました。「焼き」は水分でふやけないから硬く仕上がるのかな、くらいに考えていたのですが、自らの弱酸性の細胞液に晒されることも硬い仕上がりに繋がっているのですね。また、「蒸す」際の蒸気がやや酸性、というのも新発見でした。
オーブン焼きで何百種類もの新たな風味分子が生まれる
柔らかくなるのが早すぎたり遅すぎたりする場合は,以上のような影響を考慮して調理方を変えてみると良い.例えば,野菜を水で煮てからトマトソースを加えるとか, …… 例えば水っぽいトマトの風味を濃縮するなど,部分的に乾燥させる場合もあれば,完全に乾燥させてしっかりした歯ごたえやサクサク感をだすこともできる.食材の表面が乾燥してしまいオーブンの庫内温度に近づくと,炭水化物やタンパク質の褐変反応がはじまり,何百種類もの新たな風味分子が生まれて,風味が非常に深まる.
話は褐変反応に移ってきました。何百種類もの新たな風味分子が生まれて風味が非常に深まる…聞いただけで美味しそうですね。
オーブンに入れる前に油を塗ることも多いが,この簡単な方法には二つの効果がある.一つ目は,表面の薄い油の層は蒸発しないので,油が吸収する熱エネルギーが全て油と食材の温度を上げるということ.油を塗らない場合に比べて表面温度が高くなるので,すぐに焦げ目がつき中まで火が通る.二つ目は,油の分子の一部が褐変反応に関わり,生成する反応産物のバランスが変わってくるということ.これにより独特の豊かな風味が生まれる.
低温炒めで油の風味とコクを染み込ませる
油炒め,ソフリット
もう一つの(ソフリット)と言われる調理法は …… 油炒めとは対照的に低温で行う. …… 風味を引き出して濃縮し,なじませて行く.野菜を油につけてゆっくりと加熱しながら柔らかくし, 油の風味とコクを染み込ませるというのは,「コンフィー」と同じような調理方法である.
こちらの方法は、「炒め」の場合に参考にできそうなポイントです。ここで言われているのは加熱温度についてですが、ポタージュに生かせそうかもと思ったのは「野菜の切り方」の方です。そもそもソフリットは刻んだ野菜を多めの油で炒めるので、油に触れる表面積が大きいということ。つまり「油の風味とコクを染み込む面積が大きい」ということだし、「油の分子の一部が褐変反応に関わり、生成する反応産物のバランスが変わってくる面積が大きい」ということともとれます。加熱の強さによる違いも比較していきたいですね。
トマトの天日干し、という手もある
アンズやトマトペーストを日干しにする場合,抗酸化剤として二酸化硫黄を使わない限り,カロテノイド本来の色はほとんどなくなる.
トマトペーストを天日干しにする料理なんてあるのですね。気になって調べてみたところ、トルコ風の天日干しトマトペーストをつくっている方の記事が出てきました。10日も天日干しにしてかなり濃厚そうでおいしそうなペーストができていました。一度天日干しペーストにしてから豆乳で伸ばしてポタージュにしてみたらどんな味になるのでしょうかね。書籍にはカロテノイドの本来の色はほとんどなくなると書かれていましたが、天日干しペースとは黄色味が減ってとても濃い赤色に変化していました。この黄色味がカロテノイド本来の色なのですね。天日干しではなくとも、黄色味がどこまで残るのかをみてみるのもおもしろそうです。
加熱のしすぎで風味は落ちる
野菜ストック
1時間以上煮込んでも,それ以上は風味が良くならないばかりか,かえって風味が落ちるということが多い.
オーブン、炒め、煮込みなどの工程で、加熱のしすぎにも気をつけなければいけません。調理は最後の滅菌も含めて1時間以内に収めることにしてもいいかもしれませんね。
トマトの保存
最後に、トマトの保存についてです。
トマトはもともと暖かい気候に育つ植物なので,室温で保存するべきである.冷蔵保存すると新鮮な風味が損なわれやすい.成熟した緑のトマトは特に13℃以下で冷蔵すると膜が損傷し,室温に戻した後にもほとんど風味がよくならず,所々変色して柔らかくパサついたテクスチャーになる.完熟トマトは冷蔵にもある程度耐えるが,風味を生み出す酵素が失活して風味が落ちる.酵素活性はある程度回復するので,冷蔵されていたトマトは室温に戻して1〜2日おいて食べるとよい.
トマトを密閉状態にする,といった物理的なストレスをかけないようにする.
13度以下にすると風味を生み出す酵素が失活してしまうけど、ある程度は戻るので食べる1〜2日前に冷蔵庫から出しておく必要があるのですね。現実的には、買ってきたら涼しい場所で常温保存し、1・2日で食べ切るのが良いかもしれません。また、ストレスをかけないように袋の口は開けておいた方がいという点は、冷蔵保存だったとしても実践してみると良さそうです。
ここまで長くなってしまいましたが、Study88_1~3をまとめつつ、比較実験したいポイントが少しずつ見えてきました。続いての記事では、実際に比較実験を行なっていきます。お楽しみに*
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