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Study88_5.おいしいトマトのポタージュをつくる(加熱前のトマトのカット方法によっても甘味の出かたが全然違う!)

前回は下調べを経ていよいよ1回目の実験を行い、「加熱温度による風味・テクスチャー・味の違いはどのくらい出るのか?」を確認していきました。今回の実験テーマは「トマトのカット方法による味の違い」を確認することです。

この記事は、「野菜Labo」がつくる東広島野菜をつかったポタージュスープ「朝のひとくちめ」の種類にトマトのポタージュを加えるべく、レシピ開発に向けての実験を行なっていくものです。

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▶︎Study88_4.おいしいトマトのポタージュをつくる(加熱温度によって風味・テクスチャー・味の違いがものすごく出る!)

この実験結果を参考に生まれた商品はこちら

今回はトマトの加熱前の切り方によって出てくる違いを見ていきたいと思います。今回用意した条件はこちらの3つ。

A、 ピューレ
B、 サイコロ切り(1㎝角ほど)
C、 1/6のくし切り

全てフライパンを使い、油は入れずに中火で加熱します。トマトの個体差を平すため一旦全てのトマトをくし切りにし2片ずつ入れ替えます。

3つのトマトを2片ずつ混ぜる前
加熱前の様子 左からA、B、C
(B)サイコロ切りをヘラで潰し始めた様子

炒めている最中も「ペースト」「サイコロ切り」「くし切り」それぞれ様子が全く違います。ペーストを炒める時は鍋底に水が溜まらなくなるまでトマトが焦げることはなかったのですが、「サイコロ切り」は5分半ほど、「くし切り」は2分ほど経った時点で焦げつきそうな気配を感じ、ヘラを使って潰す必要がありました。ちょっとでも焦げてしまうと一気に風味が悪くなり苦味も出てしまうので、炒めやすさもレシピづくりの大切なポイントになっていきそうです。

(C)くし切りを炒める前
(C)くし切りを炒めて2分ほどの様子 すでに広がった水分の端から焦げそうな兆候が

完成したペーストがこちら。

左からA、B、C

ペーストは白っぽく、大きくカットするほど赤色が濃くなりオレンジがかる

見た目にも違いが出てきました。今回も写真だととても分かりにくいのですが、大きく分けると「ペースト」と「サイコロ切り・くし切り」で大きく色の傾向が違います。「ペースト」は色が白っぽく赤色自体も若干薄いように見えます。「サイコロ切り・くし切り」は色の傾向が似ていて、赤色が濃くくすんでいて、オレンジがかっています。その傾向は「くし切り」の方がより強い傾向にあるように見えます。

ペーストは酸味が強く、大きくカットするほど甘味が強くなる

味に関しても「ペースト」と「サイコロ切り・くし切り」の間で大きな差がありました。「ペースト」は酸味が強く、「サイコロ切り・くし切り」は甘味が強く感じます。その甘味の強さは、若干ですが「くし切り」の方が強く感じました。

ペーストはぷるっと、大きくカットするほどネトッとする

テクスチャーにも違いがありました。「ペースト」はネトッとした糖分系のテクスチャーが無い代わりに、ゲル化しているようなペーストのまとまりの良さがあります。

(A)ペースト スプーンで平した様子 

一方「サイコロ切り・くし切り」はキャラメルの様な糖分を煮詰めた時のネトッとしたテクスチャーがあります。そしてこの傾向も、より「くし切り」の方が強いように感じました。この感覚はフライパンから取り出す時にとても分かりやすく、ネトッとしたテクスチャーが強いほどフライパンにくっつきやすい傾向がありました。

これらのことから、カットが大きいと何かしらの原因で糖分が表面に引き出され、その結果 舌で甘みを感じやすくなっているのではないかと予想できます。カレーをつくるとき、とにかくトマトを炒め尽くして水分を飛ばしてから水を加えよ!とよく言われますが、この現象を起こすためなのですね。

この実験で、カット方法によりトマトペーストの「色」「味」「テクスチャー」にも変化が出てくることが分かってきました!続いては、加熱中の油の有無による違いを見ていきます。お楽しみに*

次の実験記事は、こちらからどうぞ*
▶︎Study88_6.おいしいトマトのポタージュをつくる(炒めるの時の油の有無でフレッシュな酸味がでたり、コクに差が出る!)

この実験結果を参考に生まれた商品はこちら


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