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Study88_6.おいしいトマトのポタージュをつくる(炒めるの時の油の有無でフレッシュな酸味がでたり、コクに差が出る!)

前回の実験では、カット方法によりトマトペーストの「色」「味」「テクスチャー」にも変化が出てくることが分かってきました。今回の実験テーマは「炒めるの時の油の有無による風味の違い」を確認することです。

この記事は、「野菜Labo」がつくる東広島野菜をつかったポタージュスープ「朝のひとくちめ」の種類にトマトのポタージュを加えるべく、レシピ開発に向けての実験を行なっていくものです。

一連の流れを全て確認したい方は、下記過去の記事をご覧ください*
▶︎Study88_1.トマトは肉の代用にすらなりうる/トマトの香りは、エキゾチックと青葉の香り加熱方法によってバランスが変化
▶︎Study88_2.ペクチンによって状態が目まぐるしく変わる/酸性の煮汁で煮ると硬く仕上がる塩水で煮ると早く柔らかくなる
▶︎Study88_3.オーブン焼きで何百種類もの新たな風味分子が生まれる/加熱のしすぎで風味は落ちる
▶︎Study88_4.加熱温度によって風味・テクスチャー・味の違いがものすごく出る!
▶︎Study88_5.加熱前のトマトのカット方法によっても甘味の出かたが全然違う!

この実験結果を参考に生まれた商品はこちら!↓

これまでの下調べで、以下のポイントが分かってきています。

油が吸収する熱エネルギーが全て油と食材の温度を上げるということ. …  油の分子の一部が褐変反応に関わり,生成する反応産物のバランスが変わってくるということ.これにより独特の豊かな風味が生まれる.
(ソフリット)と言われる調理法は …… 油炒めとは対照的に低温で行う. …… 風味を引き出して濃縮し,なじませて行く.野菜を油につけてゆっくりと加熱しながら柔らかくし, 油の風味とコクを染み込ませる …… 

Harold McGee(2008).マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで- 共立出版

このことから分かる油を加えることによって起こるであろう違いとしては、

1、高温で加熱することになること
2、油の風味とコクが素材に染み込む
3、油の分子の一部が褐変反応に関わり,生成する反応産物のバランスが変わってくる

つまり、風味も味も変わってくる可能性があるということです。そこで今回用意した条件はこちらの2つ。

A、 トマトペーストを、油と一緒に煮詰める
B、 トマトペーストを、油なしで煮詰める

「油あり」はコンロが汚れるが、極限まで水分を飛ばしやすい

いずれもフライパンを使って強火で加熱していきます。さっそく調理していくと、調理工程での様子の違いも見えてきました。「油あり」はとにかく序盤から油はねがすごく、みるみるコンロ周りに跳ね散らかしていきます。「油なし」に比べて加熱温度が高くなっていることが予想されます。これはおいしくなったとしても難点ですね。

(A)油あり を煮詰める様子 

しかし「油あり」は良い点もあり、煮詰まってきてもフライパンにこびりつきにくく、加熱後フライパンにこびりついたペーストの量の差は歴然でした。焦がさずに水分を完全に飛ばしやすいという利点はうれしいポイントです。

(A)油あり が煮詰まってきた様子

完成したペーストがこちらです。

左から、A、B
(A)油あり
(B)油なし

「油あり」は油の香ばしさがプラス
「油なし」のが香りの総量は多い

「油なし」はこれまで通り強火で加熱したことによりトマト料理らしいおいしいトマトソースの香りがしてきます(青臭くない)。「油あり」は、「油なし」の香りに油の香ばさが加わっていました。香りの総量にも違いがあり、「油あり」よりも「油なし」の方が香りが強く感じました。香り成分は油に溶け出しやすい性質がありますが、その現象よりも高温加熱による香りの発散が強くなってしまったのかもしれません。

「油あり」は油のコクとともに甘味が広がり
「油なし」はフレッシュな酸味

味にはとても大きな違いが出てきました。「油あり」は口に含んだ瞬間、舌に油のコクとともに甘味が広がり、酸味は弱く感じます。一方「油なし」は、フレッシュな酸味をガツンと感じます。ここまで味の違いが出てくるとは、本当におもしろいですね!そのくらい差がある様に感じました。どちらの方がおいしいか?というとどちらもおいしく、どんな料理にしたいのか?どんな味にしたいのか?によって選べる楽しさがある、という感じです。この違いを使いこなせたら人生楽しくなりそうです!トマト、奥深いです。

この実験で、油の有無によるトマトペーストの「香り」「味」「の違いが出てくることが分かってきました!次回記事ではいよいよ!ここまでの全ての実験結果をまとめます。次回もお楽しみに*

次の実験記事はこちらから↓
▶︎Study88_7.【総まとめ】トマト料理の酸味・甘味・香りを自由自在にあやつろう!「強火・油あり」or「先にペーストに・やさしい加熱・油なし」を使い分ける!

この実験結果を参考に生まれた商品はこちら!↓



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