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「移住」というより「引っ越し」と思う(日本全国子連れテレワーク、山本裕介さん)

なるほど!子育てザ・ワールド!9回目。

毎回、本当にたのしいお話をたくさん教えていただいて、どんどん新しいチャレンジへの扉が開かれている感覚が生まれております。

経験したことのない、言語も価値観も違ういろんな場所での子育ての話。
それはとても魅力的ですが、そこにはまだまだハードルが高いのも事実かなと思います。
そしてそれは日本であっても同じで、要は、今いる地域、コミュニティから離れて子育てするというのは、なかなか難しいということですね。

そうした中で、日本全国各地で子連れテレワークをされている方がいます。
なになに?どういうこと??
って思いますよね?

というわけで今回は、全国10ヶ所以上で子連れテレワークして、現在は軽井沢にいらっしゃる山本裕介さんにお話を伺いました。

山本祐介さんのご紹介

第9回目(4月17日(土))ゲストは、山本祐介さん

外資系IT企業勤務マーケティング担当。
小学3年生と1年生の男児の父。
広島県出身、東京での20年以上の暮らしを経て、5年前から日本全国15ヶ所以上で子連れテレワークをし、地方の良さを認識。
昨年子どもの教育をきっかけに軽井沢に移住し、現在はフルリモートで軽井沢100%の生活。
10年前に複業として妻を飲食店を青山で開店し、今年10年ぶりに軽井沢で新規開業予定。

山本さんは、ファザーリング・ジャパンにも関わってくださっていたことがあり、今回ご登壇いただくことになりました。
あと、きこり部に所属されていて、土日の朝は大体山に入って木をきっているとのことで、いつもは9時からスタートするウェビナーですが、今日は11時スタートだったのです。

めちゃくちゃ面白いですね〜。

なぜ移住という選択を?

なぜ移住を?
これはみんなが聞きたくなるポイントですよね。
移住するって、今いる場所を離れたいというモチベーションか、どうしてもこの地に行きたいというモチベーションか、大きく分けて2つの理由があると思うんです。
山本さんの場合はどうだったんでしょう。

山本さん)
元々は働き方改革の一環で、テクノロジーを使って場所を選ばず柔軟に働くことができれば、みんなもっと働きやすくなるし、子育てもしやすくなるし、自分の人生も楽しくなるということを、会社のキャンペーンとしてうたっていたんです。
本業がマーケティングで、自分でやってないと説得力がないと思って、フェイスブックか何かの広告で「世界遺産で働きませんか?」のを見て、それを頼りに2016年に知床に行ってみたんです。
子連れでいったらすごく楽しくて味を占めて、北は知床、南は奄美大島、西は五島列島と、いろんなところに行って、今は長野の軽井沢にやってきています。
仕事柄やってみないと・・・というのは新しいですね。
ただ、それだとやってみて終わる、また元の場所に戻ることが多いと思うんですが、そうならなかったというのは、よほど楽しかったんだろうなぁ。

地の果てでも電波が届く

山本さん)
知床(しれとこ)ってアイヌ語で地の果てという意味らしいんです。
そこから船に乗って海の上に行ったら、そこでもなお電波が届いたんですよ。
電波が届かないってもはや言い訳にならないなぁと。
ということをSNSで呟いたらすごく大きな反響があって、自治体からも少しずつお声がけをいただくようになりました。

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すごい!
他にも、奄美大島でフリーランス協会さんの「フリーランスだったら島でも働ける」っていう企画に、なぜか会社員なのに参加されて、ウミガメに触れ合ったり、島の人たちが三線を引くのに混ざったりして地域の方々と関わったり、子ども同士で交流されたり、周りの人に子どもの面倒をみてもらってその間に仕事したり・・・。

「子連れでいろんなところへいく!」みたいな感じは今でこそおもしろがられますけど、今でも勇気のいることですから、当時、ワーケーションとかテレワークという言葉がなかった時代、実は勇気のいったことじゃないかなと思うと勇気づけられますね!

地方というのがオシャレな選択肢になった

Linda)
わたし、北海道育ちで知床とかめちゃくちゃ行ってたんです。
けど、私の頃の写真は超田舎って感じだったのに、山本さんがPC持っていくと急にオシャレになりますよね〜。
っていうのも、以前は地方に行くっていうと田舎感というか都落ち感があったんだけど、やっぱりこの働き方改革とかの流れで、皆さんの人生の選択肢の中に、かっこよさをもった地方への移住というのが入ってきたなぁという感じがしますね。

ATSUSHI)
僕は、フルリモートというのが大きなキーワードだなと感じました。
リモートが当たり前になったとはいえ、やはりハイブリットじゃないと難しいではないかと思っているんですが、フルリモートによって仕事の生産性に支障が出たり、働く上での不都合っていうのはなかったですか?

山本さん)
そこは人によるんだと思います。
自分の場合はまだフルリモートなんです。
そんな中で一年くらいやってみて感じたのは、そもそも普段みんながどういう生活をしているのかとか、ワークライフバランスについてどういう考えを持っているのかとか、どういう時間帯だとアクセスしやすくてどの時間帯は子どものお迎えなのかとか、相互理解が進んだことで働きやすくなった面もあるってことですね。
大枠で言うとあまり変わっていないのかなというのが僕の感覚です。

Linda)
オフラインでのインプットとか、オフの時間に得るものが、日常ではないものを自分も子どもも得られるという意味で、ワーケーションは今の時代にマッチしていますよね。
人生100年時代だから副業やらなきゃ、別のインプットやらなきゃ、新しい異業種交流やらなきゃ、とかいうことをあえてやらなくても、そこにいるっていうだけでできるというのはすごく素敵だなぁと思います。
それで、私も一つ質問なんですけど、お子さんたちにとっては、初めてのところに行ったり初めての人に会ったりっていうのは、あまりハードルは高くなかったですか?

山本さん)
子どもたちにとっては遊びの延長のような感じでした。
あと、まわりの方がとてもよくしてくださるんです。
日常生活でもすごく気にかけてくれるし、地元のいろんなところに連れて行ってくれるし、なんていうか、初日から親戚のうちに遊びにきたような感じで・・・「日本は子育てしづらい」という話をよく聞きますが、実際には意外とみんな寛容なのでは?っていうのがやってみてわかったことでしたね。
そういう経験を経て、保育園の給食の原材料地をみて「こないだあそこ行ったよね」っていう話をしたり、奄美大島とか台風が多いから台風のニュースを見て「あの人大丈夫かな?」って子どもが言ってきてくれたりして、そういうのがすごくいいなぁと思いますね。

Linda)
それすごくわかる。
まさにスライドのタイトルにあった複数の地元を持つっていう感じですね。

都会からの移住のきっかけ

ワーケーションをスタートした一番最初のきっかけは広告でしたが、その後、いくつも拠点を移されて今は軽井沢に移住されています。
その辺りの背景もぜひお聞きしていきたいところですね。

山本さん)
移住のきっかけはいろいろあるんですけど、象徴的だったことを一つご紹介します。
当時、住んでいたところの近くにイケてるいちごのカフェができたっていうのを聞いて、自転車で行ったときのことです。
スムージーとかショートケーキとかいろんな商品があって、ショーケースのどれでも頼んでいいよって子どもに言ったら、何を指さしたかというと生のイチゴを指さして「これが食べたい!」って言うんです。
こんなオシャレなカフェ来て生のイチゴをわざわざ食うの?って思ったんですけど・・・よくよく考えたら子どもからするとおしゃれとか関係ないし、普通にイチゴを食べたいよなって思ったんですね。
このあと、お店の中で鬼ごっことかし始めて大変なことになって「うるさい!」とかって叱っている自分を振り返ってみると、親のエゴが先行しているなと。
子どもからすると、イチゴが食べられればこういうところである必要ないし、そもそもカフェで静かにしろとか言うのも、言われる側も嫌だろうなって思って。
自分たちの理想の都会の子育てライフスタイルと子どものプラスになることっていうのは違うのかな?っていうことを感じたんです。
もう一つ感じたことは、仕事で地方に何度か行かせていただいた時に、都市と地方の逆転現象が起きているなということでした。
上の子を都内の学校に1年通わせたんですが、校舎は正直古いし、カリキュラムも自分の頃と変わってない。
一方で地方は既に淘汰が進んでいるので、いくつかの学校が合併したときに校舎は新しくなってるし、パソコンも一人一台整備されてる。
もしかすると、地方の方が競争があって良くなっていってるのかなと思ったんです。
あと、コロナ前から思っていたことなんですけど、都会で再開発してビル建てて人を閉じ込めて、商業施設で消費させるって、もう違うんじゃないかなと。
夫婦で飲食店をやっていたんですけど、田舎に行くと家賃も安くて参入障壁が下がっているのでけっこう個性的なお店も多いんですよね。
そういう意味でも、地方と都会が逆転しつつあるのかなと思ったりしました。

大自然より小自然

そうした逆転現象を目の当たりにして地方への移住を決められたということですが、どうして軽井沢?

山本さん)
かこさとしさんがかかれた「未来のだるまちゃんへ」っていう本を読んだことありますか?
子どもが制御できないような大自然の学びよりも、子どもが手とか足とかで味わえて、ある意味コントロールできて戦えるような小さな自然の方が学びが多いってことを書いていたっしゃったんですよね。
自分の実感としてもすごく良くわかるお話で、大自然だけなら知床とかの選択肢もあったんですけど、軽井沢って街なんだけど自然とすごく近いっていうのがあって、それがいいなと。
それと、軽井沢に新しい学校ができたこととのジョイントでやってきました。

Linda)
私も「未来のだるまちゃんへ」って読み返したんですけど、ぎょっとするような出会いがあるっていうのが書かれていたんですよね。
小自然には、子どもが驚いて、それをハンズオンで体験できるっていうことがあふれていて、それがすごく残るんですよね。
そういうことを大事にされる中で、幼稚園保育園のうちはいろんなところに行きやすいけど小学校に入るとそういうわけにもいかなくなってくると思うんですが、小学校に入るっていうことは移住の大きなきっかけでした?

山本さん)
実際のところ、幼稚園保育園の時のほうが子どもを連れていきやすいというのはあると思います。
ただ、小学校に入ったからといって動きづらくなるということは考えてはいなかったですね。
こういう話をすると、都会の小学校がダメだとなりがちなんですけど、都会の学校は親の関わりしろがあまりないなぁと思っていたんです。
学校をよくしようと思ってPTAに入ってもできることがあまりないというか。
それに対して、今の学校は親もふくめてみんなで学校を作るっていう感じで、それに惹かれたっていう感じですね。

ATSUSHI)
それはやっぱり新しい学校へ行こうというのが移住のポイントだったということでした?

山本さん)
その学校に受かるかどうかわかっていなかったので、もし落ちても軽井沢に他の学校に通うことになっていたと思うんです。
その学校に行かせたいから軽井沢・・・というより、もちろん要素の一つではありますけど、複合的な要因でやってきたっていう感じですね。

ATSUSHI)
地方への移住というと、〇〇の学校に通わせたいからっていう理由があったりすることも多いと思うんですが、目的が学校というわけではなかったということですね。

山本さん)
僕らは、どこまで自分たちの仕事を残したまま、住む場所とか教育の環境とかをピボットできるかっていうことを考えました。
ある学校のリーダーの方がおっしゃって印象的だったのは、子どものために全部を投げ打って移住するのは、子どもにかかる心理的なプレッシャーがすごいし、家族が不安定になるからそれはお勧めしませんっていう話だったんです。
本当にその通りだなと。

移住に関する誤解

ATSUSHI)
なるほどなぁ(ずっと「なるほど〜」って唸ってました)。
完全に移住するというわけではなく、軸足をどこかに残しておくっていうのが大事だということですよね。
フルリモートもできるようになったし・・・とはいえ、それでもハードルって高いとも思うんですね。
住んだ地でうまく馴染めなかったりとか。
このへんはいかがですか?

山本さん)
地域のコミュニティって良くも悪くも弱くなってきていますよね。
昔は、地域の草刈りに参加してお祭りにも参加してっていうのがありましたけど、それが今もいきているとは残念ながらいえなくなっているなと認識していて、これからは新しくやってきた人たちの趣味趣向のコミュニティと、地縁のコミュニティが重なり合って豊かになっていくんじゃないかなと思います。
あと、人間は適応力が高いし、子どもや配偶者が生活に慣れるか不安とか、地方に馴染めないとか、そういうこともあまり心配ないと思います。

Linda)
ここまでのお話っていく側の視点ですよね。
自分はこういう関わりがしたいとか住み方をしたいとか。
一方で、向こうの方たち、いわゆる受け入れ側の人たちって、いろんな形の関わり方をよしとしているんですか?
ウェルカムな感じ?

山本さん)
すごくいいご質問だと思います。
地域側も課題があるのは明確なので、それをどうやってみんなのリソースをつかって解決していくかっていう共通認識は持てている気がします。
こちらで何か活動する時も、名前に「新しい」とか「Re:」(生まれ変わるみたいな)を付けないようにしようって言っていて、今までの既存の動きを否定しにかかっているというニュアンスを出さないようにと考えたり、気を使ってはいますよね。

Linda)
なぜお聞きしたかというと、私の母は五島列島出身なんですけど、血縁があってなおものすごく気を使うんですよね。
もともといらっしゃる方を否定しないで大事にしつつということをわかっていないと危険ですよね。

移住ではなくて引っ越しというパラダイムシフト

ATSUSHI)
そういえば、僕の友達が去年、結婚して五島列島に移住したんです。
島民の皆さんもとてもよくしてくださるそうで、本当に楽しそうなんですが、それってやはり地域によるのかなと思ったりするんです。
ある種、ガチャのような運的な要素もあったりするんですか?

山本さん)
それこそ五島列島に行ったときに、カフェを経営して移住してめちゃくちゃ馴染んでる若い女性の方がいて、僕もその方に「移住してどうですか?」って聞いたんです。
「どうして移住って言うんですか?」ってチョットキレ気味に言われたんですよ。
「東京から大阪に行くときに移住って言わず引っ越しって言いますよね?」
「なんで五島にやってきたら移住って言われるんですか?」
そう言われて確かにそうだなと。
どこかに移住して東京に戻ると「あいつは馴染めなかったんだ」って移住っていうと妙なニュアンスがついちゃうんですけど、世田谷区から杉並区に引っ越すのも本質的には変わらないですよね。
で、ご質問に戻ると、引っ越し先の運って普通にあると思うんですよね。
基本はそれと同じなのかなと思うんですよね。

Linda)
今後もお引っ越しされる可能性はあるってことなんですか?

山本さん)
全然ありますよ。
この1〜3年くらいで軽井沢のために何する?って言うことを考えているくらいで、その先また他のエリアに行きたくなったら考えればいいと思うんですよね。
この移住っていう言葉の異様な重さというものを何とかしたほうがいいんじゃないかなと思います。

Linda)
今、聞いてくださっている方で変わろうかなって思っている方は都会の方が多いと思うんです。
都会だと個性が埋もれるというか、突き抜けるというか強烈な個性を打ち出さないと難しいなっていうイメージがあるんですけど、ここまでのお話を伺っていると、自然の中では伸びやかなその子らしさが芽吹くように伸びていくのかなと思いましたが、お父さんから見てお子さんたちが変わったなって思われますか?

山本さん)
学校の影響も大きいので、環境を変えたことで変わったとは一概にいえないかもしれませんが、一つ、都会との差であるのは、自然を相手にすると正解みたいなものがないじゃないですか。
そういう環境の中で、あるべき姿にはめていくのではなく、やりたいことが毎日変わってもいいし、途中でやめてもいいし、また始めてもいいし、そういう軽さ、軽やかさみたいなものが生まれてきたような気はします。

想定外のことこそ学びの宝庫

山本さん)
想定内のことしかおこらないと学びが減っていくんですよね。
先日、みちばたで野鳥の死骸が道に落ちていたのを見つけて、上の子は標本にするから学校に持っていくって言って、下の子はお墓にするっていうんですね。
実は大人である自分自身も野鳥って衛生面で基本的に触ったらダメっていうことをよく知らなくて。
こうした想定外のことというのは偶発的なことが多いので、そういうことが得られやすい場所にみんなで移動すると楽しいんだろうなと思うんです。
僕は、軽井沢に来たときに、成功とか失敗とか期待値のようなものを一度捨てたんですよね。
どうなったら軽井沢のライフが幸せになるだろうかとか一切考えない、だってわからないから。
だから今、きこり活動をしたりしていて、そういうニュートラルかつオープンで、想定外も何でも楽しんでやろうっていうスタンスが、移住とか地方で暮らすとかのポイントなんじゃないかなと思います。

Linda)
学びが広がらないっていうのかな、本当にそうですよね。
次男と一緒にカンボジアに行ったときに、次男が「ここにいると俺は何でもできる気がする。俺にできることがいっぱい転がってる」って言ったんですよね。
「でも、日本にいるときはそれがわからない」とも言うんです。
そういう意味でも違う環境に行くっていうのはすごく大事だなぁと思いますよね。

いかがでしたか?

今回もお付き合いいただきありがとうございました!
なるほど!子育てザ・ワールド、のワールドにはもちろん日本も含まれているんですけど、今回、日本の、またいろんな地方のお話でしたね。
移って住むのは、海外も地方も同じ。
そしてそれは、東京から大阪に引っ越すのとも同じ。
言われてみればそのとおりなんですけど、本当に新しい発見です。

どこで何をするにせよ、目的は自分たちの、子どもたちの人生をより良くしていくこと。
その軸を大事にしつつもでも、難しく考え過ぎずにできることをやっていきましょうね。

これからもどうぞよろしくお願いします!

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