中小企業、高度成長の黒子からスタートアップのエコシステムに

 この記事【「アトツギ」創業 眠れる宝、身近に】は、大廃業時代に入った中小企業が、新しいリーダーのもと、過去から引き継いだ技術と人材を活用してピンチをチャンスに変えていく『アトツギ創業』を、日本式スタートアップとして積極的に評価するリポートです。

 まず、記事に出てくる事例を整理してみると――

(1)テクノロジーの融合・・・出資などの手法で技術力のある中小をグループ化し、テクノロジーを融合させてイノベーションを起こす。中小の宝であるテクノロジーの矛先を新しいモノづくりへと向け変えて再生する。(2)請負型から提案型へ・・・デザインなど提案型の機能を新設することで、最終顧客である消費者との接点を繋ぎ、イノベーションを起こす。独自性を打ち出したプロダクトで単価UPを実現し再生する。(3)アトツギのネットワーク化・・・事業創出・資金調達などを支援し、ベンチャー的な中小企業を育てる。

このような施策からそのエッセンスを抽出するなら――

①埋もれた技術の発掘(技術の見立て)・・・個々の中小が持っているテクノロジーを見立てて、新しいプロダクトに結びつける洞察力が必要。②技術のデータベース・・・全国に無数に存在する中小がどのようなテクノロジーを持っているのか、データベースのような機能が存在すれば、伝手に頼った暗中模索と比べオープンイノベーションは加速するはず。③マッチング・・・起業家✖企業、企業✖企業、技術✖技術など、マッチングの精度でイノベーションの質が大きく変わってくると考えられる。

 「日本の産業は新陳代謝が進まない」と指摘されてしまう最大の要因は、上記のように、中小の持つ宝のような技術が、①新しいプロダクトへと繋がっていかない状況、②埋もれてしまって見える化されていない状況、③マッチングの機会が極端に少ない状況にある事は明らかです。そのような新陳代謝が、諸施策によって活性化した時、日本の中小企業群が、高度成長の黒子からスタートアップのエコシステムへと脱皮することが期待されます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33935610Y8A800C1MM8000/

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