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『天使の翼』第11章(64)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 列車は、高性能のエンジンに特有の高音域の駆動音を響かせながら、きわめてスムーズに、くねくねと線路に合わせて車体を曲げながら、瞬く間に、時速――壁の案内表示機を信じない謂われが在る訳でもなく――400標準キロを超えた!
 普通なら、今にも脱線しそうな危うさを覚えたろう……それが、不思議なことに――
 「遠心力をあまり感じないね」
 シャルルの一言、まさにそれだった。
 どういうメカニズムかは分からないが、もしこの対策が採られていなかったなら、曲率のきついカーブが連続し、勾配も急な路線である――列車のトイレットの前には、蒼白い顔をした乗客の、文字通り長蛇の列ができるに違いない……
 乗客、と言えば、アンコーナの山岳地帯に向かうこの列車には、ホームで見た限り、観光客・林業関係の出稼ぎ労働者・鉱山関係だろうかビジネスマン風の男達等々と共に、なんとも得体の知れない装束の男女――10名位――がいた。
 ――体に張り付くようなスキン・タイトなオール・イン・ワンのボディスーツ。……よく見れば、全員の色柄が、ちょっとづつ――まるで固体識別のように――違う。……唯一の共通点は、皆異様にカラフルだという点……

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