見出し画像

AI(Artificial Intelligence)かAI(Augmented Intelligence)か?

 AI(人工知能)によって仕事が奪われたり、人類が支配されるといったAI脅威論をはじめとして、人間とAIとの関係については、長く議論され続けていますが、この記事【AIに負けない 人間+IT+ロボで「超人」目指す】(日経電子版)で紹介されている内容には、一石を投じるものがあると思います。



 それは、『人間拡張』という概念で、「人間とIT(情報技術)やロボットを組み合わせて、人が本来持つ能力を飛躍的に高める」と記事にはあります。ここでは、現代におけるITやロボットの活用が謳われていますが、人間本来の能力を高める、という意味では、『人間拡張』という行為は、先史時代に人間が道具を発明して以来綿々として続いてきた営みだ、と言えるかも知れません。

 人間本来の能力は、言うまでもなくヒトという生命体、一生物としての制約を受けており、人間の知能も、ヒトという生物としての物理的・化学的な制約の中で機能しています。当然、得手不得手があって、例えば大量のデータを高速で計算処理するような場合は、スーパーコンピューターの力を借りてきました。

 知能の面でも『人間拡張』は行われてきた訳ですが、AI(人工知能)についても、人間拡張の手段として捉える考え方が、記事の後段にある『拡張知能』です。AIを人工知能=Artificial Intelligenceではなく、拡張知能=Augmented  Intelligenceとして定義し直すもので、共に頭文字がAIなので、「もう一つのAI」とも呼ばれるそうです。

 確かに、人工知能(Artificial Intelligence)という表現では、あたかも人格を持った人工人間のようなニュアンスが払拭できず、人工知能が独自の目的を持って人間に立ち向かってくるようなイメージが定着してしまったのかも知れません。人工知能(Artificial Intelligence)という呼び名は、AI脅威論などのネガティブイメージで汚染されてしまっており、これを拡張知能(Augmented  Intelligence)として再定義することは、きわめて有意義な事だと思えます。

 AIを使う目的を決めるのはあくまで人間であり、困難な課題を解決するための『拡張知能』として、AIとの協働のあり方を模索することこそが、有益な議論ではないでしょうか。そこには、ブラックボックスのホワイトボックス化の問題や、バイアスのかかったデータ、ユーザーとのインタラクションによるバイアス等々の様々なバイアスの問題など、数々の課題が山積しているかも知れませんが、知能の生物学的な制約を克服した人類の輝かしい未来が、その先に開けているのだと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?