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『天使の翼』第11章(110)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 泡を食って視線を左右するうちにも、先導車が頭から断崖に突っ込んで、紅蓮の炎を咲かせた。先導車のルーフに張り付いていたデビル・ハンターは、爆発の寸前に辛くも身を翻し、濛々たる黒煙の中から躍り出た。
 どう考えても、デビル・ハンター達は、車列の位置関係を正確に把握している……まず先導のエアカーを大破させ、車列を乱し、2台目の指揮官機のルーフに食らい付いて、操縦を困難にさせていた――唯一の脱出策と思われる断崖上への浮上が危うくなってきた。そして、連行中の容疑者は、わたし達隊長機の2台後ろに乗っていたはずだが、既に車列と呼べるものはなく、わたしには、判別がつかなかった……
 人間グライダーと化し、くるくると小回りの利く彼らに、重量のあるエアカーは到底太刀打ちできるものではない。気付くと、12機のパトロール・エアカーは、機銃を使った応戦すらしていなかった。その余裕はないだろうし、そもそも、この混戦状態では、下手に射撃すれば同士討ちになりかねない。いたずらに翻弄され右往左往するSSIPのパトロール・エアカー。このような地形ではエアカーは極めて不安定で、思いのままに滑空するデビル・ハンターとまともに激突したら、バランスを崩して墜落する危険は非常に高いと言えた。何も武器を持たないデビル・ハンター達は、エアカーという、決して100%の飛行機械ではない車両の弱点を見事についた襲撃を仕掛けてきたのである。

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