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『天使の翼』第12章(47)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 ……その後の残酷な過程は省略する。彼女は、うめきながらも、ぎゅっと目を瞑ってよく耐えた。切断されたロープがはらりと肉体を離れ、どさっと洞窟の床に落ちた時、彼女は、まるで人間のような、万感こもった溜息を吐いて、うつ伏せにくずおれた。かわいそうに、気絶したのである。
 わたしは、改めて、恐る恐る彼女の痛めつけられた肉体を見た。ロープで圧迫を受けていた部分は、ロープがなくなったことによって早くも盛り返していた……もちろん、完全にではないが、この分では、傷口が化膿したりでもしない限り、元の……と言うか、あるべき状態に回復するだろう。夢中だったので今頃気付いたが、デビルは、全身小さな小指の……人間の小指の先ほどの鱗でおおわれており、傷口を覆う鱗が再生すれば、完治する、と思いたかった……ちょうど痛めた人の足の爪が生え変わるように。

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