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創業ストーリー第2章|どうして「お寺」なのか

前回投稿しました創業ストーリー第1章では、私がどのような想いで株式会社TERA Tech Inc.(テラテクインク)を立ち上げ、どんな世界を目指しているのかをお伝えしました。

https://note.com/atsushi_mori180/n/n4b0447e7e3e7

今回の第2章では、どうしてお寺を事業の中心に据えようと思ったのかを、私の生きてきたこれまでの人生を振り返るかたちで、お伝えします。

 

子どもの頃の遊び場はお寺の境内


 私は、空海の精神が息づく地、香川県で生まれ育ちました。子どもの頃、仲の良かった友人の家がお寺だったため、私たちはいつもお寺の境内で缶蹴りやかくれんぼをして遊んでいました。年越しの楽しみは、毎年そのお寺にみんなで集まって、除夜の鐘を鳴らすこと。大学進学で故郷を離れても、年末年始には帰省し、10年以上その恒例行事を続けていました。友人のお父さんである住職にはいつも優しく見守ってもらい、お寺への安心感と温かみのようなものを感じていました。

幼少期によく遊んだ柞原寺(くわらじ)@香川県三豊市


大学では心理学を学び、食品メーカーに勤務


どんな道に進むとしても、人と必ず関わるから心理について学ぼうと考え、大学は心理学部に進学。人は置かれた環境に大きく影響を受けると感じた高校時代の経験から、なかでも環境心理学に興味を持ちました。

その心理学部で、今振り返ると運命だと感じる出会いをします。テラテクインク創業メンバーである平川住職です。しかし当時は、彼の実家のお寺について深く興味を持つわけでもなく、単に気の合う友人として付き合っていました。

中央左が平川住職でその右隣が森


就職活動は身近な食に関する分野に焦点を絞って行い、森永乳業グループ病態栄養部門 株式会社クリニコに就職。岡山に配属され、病院や介護施設へのBtoBの営業をすることになりました。もともと社交的なタイプではなく、営業職に苦手意識がありましたが、先輩に支えてもらって3年目には新製品販売で全国1位の売上を上げ、自信を持てるように。

丸3年が過ぎ、より大きな市場でマーケティングや戦略を学ぼうと考え、外資系メーカーであるマースジャパンリミテッドに転職しました。チョコレートバー「スニッカーズ」の営業を東京・北海道で4年間経験したのち、販売戦略企画室にアシスタントマネージャーとして着任。

マース有志メンバーでのカカオ農園視察旅行@ベトナム

マースで働いていた時期は、ロジカルに売上を上げていくための戦略やマーケティングを実践で学び取っていった感覚があります。と同時に、職務として大量生産・大量消費を推進していくことへの葛藤や当時の働き方に疑問を感じ始め、自分自身を見つめなおし、退職を決意したのが2019年、31歳でのことでした。 

 

地方創生と社会課題


 退職したものの、これから何をしていくかを決めていたわけではありませんでした。自分に何ができるかを考えるきっかけにと参加したのが、ランサーズ株式会社主催の静岡県下田市で開催された地域課題解決のためのイベントでした。

下田の地域課題解決イベントでのワークショップ

そこで行った3分間のプレゼンテーションをきっかけに、下田市の企業と連携し、地域活性化に貢献できる可能性が見えたのです。ワークショップ開催に向けて、2020年度の下田市の行政予算もつけてもらえることになりました。

下田市内企業に向けたプレゼンの様子

私自身、地方出身なので地方の課題と可能性を身に染みて感じていました。自分がこれまで培ってきた営業戦略立案のスキルを地域課題解決に役立てたいと、2020年2月に「3Reee(スリー)合同会社」を設立。3Reeeとは、Resource・Region・Regrowth(資源、地域、再成長)を意味する屋号、つまりは地方企業の支援と地域の活性化に尽力することを決意したのです。
 
同時期に、スタートアップ企業であるLoop Japan合同会社に誘われ、一人目社員として参画します。調味料や化粧品など、使い捨てのプラスチック容器をリユース可能な耐久性のある容器へシフトさせる『循環型ショッピング』の架け橋となるこの会社。持続可能なかたちで社会課題を解決するコンセプトに共感したこと、サービスの立ち上げフェーズに携わることができるということから、自社設立と並行して、Loopの仕事もやってみようと心を決めました。

日経トレンディのヒット予測に選出された時の一コマ


「お寺」を軸にさまざまな経験がつながる


 3Reeeの事業を通じて地方企業と関わるなかで、地方にも魅力的な企業があることを実感し、私は彼らのお役に立てることにやりがいを感じていました。しかし、コロナの影響で下田市からのプロジェクトの話が白紙になってしまったのです。ワークショップのような事業は属人化しやすく規模を拡大するのが難しいという問題に直面しました。では、どんな事業内容を展開すべきかと考えていたとき、その数年前、故郷香川での祖父母の葬儀の際に感じた違和感のことを思いだしました。
 
地元のお寺に葬儀の相談をしようとすると、日中お寺に誰もおらず、連絡が取れないのです。聞けば、檀家が減少してお寺の事業だけでは食べていけないので、昼間は塾講師をしているとのこと。葬儀に関しては葬儀社にまかせっきりに近い状態で、遺族としては大変残念な気持ちになったのです。
 
そのことを思い浮かべたとき、祖父母の「死」をきっかけに、これまでの自分のいろいろな経験がつながり、引き寄せらていくのを感じました。

・幼少期から地元のお寺にお世話になっていて、魅力を体感していた
・地域課題を考える中、お寺のコミュニティ的役割の可能性に気づく
・Loop立ち上げの経験から、社会課題の解決への意義や流れを経験
・地域コミュニティを体現している気心の知れ友人住職がいる

今では多くのお寺が危機的な状況にある現実を知り、これまでの経験を生かすことで、開かれたお寺として地域を支える寺族の力になれるのではないか、またなりたい。と思うようになり、自分が取り組むべき課題が見えた、と感じた瞬間でした。
 
そこで3Reeeの自社事業としてお寺に関する事業を2020年春に立ち上げ、さまざまな方向性を探りました。Loopはサービスのローンチ後に退職、自社事業に集中し、2022年10月に株式会社TERA Tech Inc.(テラテクインク)として、お寺に関する事業として始動し、今に至ります。
 
目指すべき事業についてまとめたところ、経済産業省所管の中小機構支援アクセラレーションプログラム「BusiNest」採択、山梨県主催山梨県スタートアップ支援アクセラレーションプログラム採択、と続けてチャンスをいただくことができました。

そして2023年12月、初めて出場したピッチイベント、日野市ビジネスプランコンテストでは、SDGs特別賞と日野青年会議所賞に選出いただきました。

日野市PlanTビジネスプランコンテストSDGs特別賞受賞時

そこでフィードバックとしていただいた中にあった、「死んでからの仏教から生きるための仏教」というコメントに、私ははっとしました。
 
お寺を通じて、社会の「孤立」をなくすためのこの事業は、まさに、お寺や仏教の力を、人々がこれからの時代を生きていく力に変えるお手伝いなのです。自分の人生を通してお寺とのご縁を感じ、この事業を進めていく使命のようなものを感じています。
 
2回に分けてお伝えいたしました、テラテクインクの創業ストーリーを最後までお読みいただき、ありがとうございました。

私の目指す世界に共感いただける方―お寺の関係者様、自治体の関係者様、一緒に事業を盛り上げていきたいという方……お気軽に声をかけていただけると嬉しいです。
今後とも、テラテクインクをどうぞよろしくお願いいたします。


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