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映画感想『ちいさな独裁者』

偶然、軍服を拾った若いドイツ脱走兵は、ナチス将校の威光を手に入れ、独軍兵士を服従させ、やがて恐ろしい行為へと走る。

戦場から還った人たちの多くが、戦争のことを語らないとよく聞く。うちの祖父も周りの人たちの祖父たちもそうだ。
戦争に美談なんて無くて、ただ暴力があるのみだ。人間性は誰かに奪われるか、自らで無くすか。

善き人たちは生き残らなかった。
殺すか殺されるかの酷い戦場。
しかもお互いドイツ人同士だ。
人間の黒いところだけをあぶり出す。
これが戦争だ、と。
戦争をしてもよい理由などひとつもないところを切々と訴えるために。

普段のわたしは劇場内のガサガサ音にイライラすることが多い。いつも通っている横浜の映画館シネマジャック&ベティは比較的ご老人のお客さんが多いから仕方がない。飴だったりお菓子だったりを思いついた時に出したいのだろう。

今日のこの作品はのっけから緊張の連続で、なぜか朝から動悸が続いていたわたしの心臓まわりは、動悸に動悸を重ねた結果、ちょっと楽になっていた。(適当書いております、医学的知識皆無です。)

鑑賞中の動悸は落ち着いたものの、手のひらの冷や汗が止まらない。緊張しすぎてつらい。ふたつ隣席のお爺さんがカバンの中からお菓子か飲み物を取り出す。ほっとした。わたしは現代に居て、この酷い世界は作りもの。もっとガサガサが欲しい!わたしを落ち着かせるガサガサ音を!いつものやつを!

こんな時に限って老人たちは静かである。みんな緊張しているのだ。そういうことか…普段わたしはのんびりとした作品を好んで観る。リラックスして観られるから、観客もその空気となじんでガサガサいつもより多めに出しております、ってことなのね。

動悸がおさまった胸をおさえつつ、わたしも老人たちみんなも、無事に終映まで体がもつことを祈った。これは本当だ。

エンドロールも悪夢のようだし、裁判でドイツ老兵が “昔を思い出すよ、はっはっは” みたいなことを言うのも醜悪だったし、あらゆる嫌悪の種類をもってしてメッセージを刻み込んでくる作品だった。
観るべき一本ではある。つらくて、早く帰宅して録画した『ラ・ラ・ランド』をもう一度観たいと涙ぐんだけれども。

公式サイト http://dokusaisha-movie.jp/
スマートフォン(Chrome,Safari)でうまく動かず。
アバウトザムービーで史実を読むとさらに心がえぐられる。



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