「国会は役に立たない」という若者の声を読んだ
「国会は国民生活に役立っていない」という若者の声がなんと3割。なかなかショッキングな記事である。しかし、詳細を見てみると、なかなか鋭い指摘もあった。今回はこの内容について注目した部分をまとめてみたい。
(※本文中で使用したグラフの画像は、リンク先のファイル[詳細版]よりキャプチャしてそのまま使用しています。)
調査概要
調査は2019年2月下旬にインターネット調査で行われ、17~19歳の男性400名、および女性400名、計800名の回答が得られている。また、印刷業・出版業、マスコミ・メディア関連業をはじめ、一部業種の関係者は調査から除外されている。
1.国会は国民生活の向上に役立っているか
各記事でも言及されているが、「役立っていない」という声が30.0%、「役立っている」が20.9%、「わからない」が49.1%となっている。詳しく見ると、国会で何が議論されているか認知している人や、国会中継を見ている人ほど「役立っていない」「役立っている」という声がいずれも大きくなっていくことが読みとれる。
2.国会中継の視聴有無
「見ない」という回答が57.9%にのぼり、特に女性では64.3%と男性よりも多くなっている。ただ、「時々見る」「見る」人は4割と、予想以上に多い印象であった。また、「見ない」人ほど、他の質問に対して「わからない」「関心がない」等の回答をする割合が高いことも読みとれる。
3.国会は有意義な政策論議の場となっているか
「思わない」人が54.8%、「思う」はわずか5.0%、「わからない」が40.3%となっている。特に「国会中継を見る」層において、65%以上の人が「思わない」と指摘しているのは注目すべき点である。
4.有意義な場になっていると思わない理由
「議論が噛み合っていない」(57.3%)
「政策以外のやり取りが多すぎる」(50.2%)
「同じ質問が繰り返される」(44.3%) といった意見が上位を占める。
以下、「国民の関心と乖離がある」(33.8%)
「パフォーマンスが過ぎる」(28.3%)
「政策提案が少ない」(16.9%) と続いている。
「パフォーマンスが過ぎる」という意見は、一部メディアやネット論壇などで頻繁に使われる表現である。その多くは、野党批判のレトリックとして使われている印象で、最近は与党の国会議員すらも使うようになった。
だが、「パフォーマンス」という言葉が、与党の問題行動の免罪になっているという側面には注意しておいたほうがよいだろう。多くの場合、野党の「パフォーマンス」の裏には、与党側の問題も存在していることが見過ごされている印象をうける。
5.国会をさらに機能させる上で何が必要か
「女性議員の国会進出促進」(31.3%)
「委員会など国会運営のあり方を見直す」(28.5%)
「多選の制限・議員の若返り」(27.0%)が上位にあがっている。
以下、「行政の監視機能の強化」(25.3%)
「議員定数の削減」(23.0%)
「衆参両院の役割分担の明確化」(21.8%)
「IT活用」(21.5%)
「党首討論の定例化」(12.4%)
「通年国会の導入」(10.8%)と続いている。
自由記述では、
「無駄な話し合い・野次をやめ、建設的な議論をする」
「議員の資質」
「成果主義・ペナルティの導入」
「時間を短く・効率よく」
「議員の給料を減らす」
「国民の意見をリアルタイムで取り入れる」
「一院制」 等の観点からの意見がみられる。
「国民の意見をリアルタイムで取り入れる」というのは、直接民主制に近い柔軟な発想でおもしろいと感じた。「IT活用」も非常に若者らしい発想だと感じた。
一方で「成果主義」「効率」「給料減」「一院制」など、近年の日本を覆っている、余裕のない「息苦しさ」のようなものを象徴するような意見が散見されるのも印象的であった。
現政権も、議論が不十分な中で強引に法案を通してしまうがゆえに、こうした「効率主義」的な意見を持つ人から支持されやすいのかもしれない。
6.「国会活性化」に関する自由回答集より
やたらと、野党に対して厳しい目が向けられている印象を受けた。
No.33「少なくとも共産党はやめておいた方がいい」
No.43「野党があまりにグダグダ」
No.104「野党は足の引っ張り合いを.....」
No.237「野党の質問時間を減らす 野党へのペナルティを強化する」
No.408「野党のくだらない揚げ足取り......」
No.530「野党のヤジをなくす」
No.734「野党のあり方」
No.765「野党の向上」
No.794「与党に対する野党の無駄な追及を......」などなど。
こうした意見も一理あるが、与党はどうなのか率直に聞いてみたい。例えば、「ヤジを飛ばす」ことや「揚げ足をとる」ことは、与野党の議員に共通して起こっている話である。わざわざ「野党」に限定する背景が気になる。また(深い意味はないが)以上はすべて男性の意見であるのも気になる。
共感した意見もいくつかあった。
No.3「一人一人意見を述べて賛否を問うべきまずは全ての意見を聞く」
議論の大前提として重要なことである。合わせて「党議拘束」についても改めて検証してみてもいいのかなと思っている。
No.446「国会議員のリコール制度を設ける」
いいアイデアだなぁ。
No.606「嘘をつかない政治」
当たり前のことだがその通りである。
No.607「人の話を最後まで黙って聞けないような人を国会の場に立たせるべきでない」
No.516「頭のよさや経歴だけでなく、精神の成熟度でも政治家を決めてほしい......」
まったくその通りだと思うが、そうした国会議員を選んでるのは誰なんだということも付言しておきたい。無論、17歳も含まれていることを考えれば「他人事」感が出てくるのも仕方ないのだが......。
おわりに
今回は、日本財団の調査から内容を抜粋して、18歳前後の若者の、国会に対する“厳しい”視線について私見を交えながら書いてみた。野党に対する直接的な厳しい視線が浮き彫りになった一方、「議論が噛み合っていない」「嘘をつかない」等、与党に対する批判も間接的に行われているといえる結果がみえた。
スタンスは様々だと思うが、現状の「国会」に対する問題意識が浮き彫りになっている以上、今後のあり方について、国会議員だけでなく「国民的な」議論に発展していくことを願いたい。「国会は役に立たない」から「国会をもっと役に立つものにするためにどうするか」という方向にシフトしていくことが必要だろう。また、その流れの中で「野党が悪い」「与党が悪い」といった悪者決めに終始しない議論が行われることに期待したい。
参考記事
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