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【発表内容】Web3の観点からみたRWAトークン

登壇とパネラーとして参加しましたフィンテック養成勉強会「Web3の新しいフロンティア: RWA(リアルワールドアセット)の役割とリスク」での、登壇した際に発表したRWAについての内容です。発表時にカンペとして用意したテキストを再編集しました。


最初に

本日、川本からは、ブロックチェーンによって現実資産がトークン化されることによって、Web3の観点からどのようなコトが起きるのかをお話ししたいと思います。

まず結論から

現実資産がRWAトークン化されることで、本来RWAが持つ真の価値を全てのステークホルダーで分け隔てなく共有することが可能となります。

この結論から今日は2つのポイントから順を追って説明します。
真の価値と、分け隔てなく共有する。の2つのポイントです。

2つのポイント

ポイント1
真の価値とは

そもそも価値とはどうやって価値づけされるのか。それは、それを持っている人と、それを欲する人の需要と供給の間で合意された価値基準によって価値が決まります。人によっては、それをモノとの交換に合意することもあれば、現金と交換することに合意する場合もありますし、中には相手の情熱などに共感して形なきものと交換に合意する場合もあるでしょう。それは当事者同士の相対的な価値基準によって決まります。

実物が手元にあることで、所有する満足感を得ていました。また、第三者に証明する際にも実物が現実に存在していることを、所有者自身が管理、保管しているという事実として手元にあることで証明していた。所有者である以上、そのモノ自体の生殺与奪が存在しているので、大事にするも壊すも、所有者の自由であり、それができることで、所有者であると証明していることにもなっています。

現実資産をRWAトークン化して付加価値としてのストーリーや想いなどをデジタルにして載せることで、それ自体の価値を高めるコトもできる。そこには、それを欲する人ととの間に、ある種の共感を得るコトができるからです。その共感が伝播することで、さらなる共感を生むことで、称賛や羨望などから承認欲求を満たすことにつながる。そこに所有する満足を上げる仕組みがある。さらには、自己満足や他者への自慢などが所有欲を満たすことにもつながる。

それらを踏まえて次に、現実資産がRWAトークン化されることでブロックチェーンの特徴から出自と来歴が証明されます。出自と来歴が証明されることで、当事者同士が相対的な価値を決めるために、価値を裏付けることで、マッチングを成立させるための変数の一つになります

出自が証明されるとは
現実資産を世の中に生み出した瞬間は、その生み出した人しかその現実資産を認識し得ません。なので、その人しか、その時点では現実資産とリンクしたRWAトークンを発行するコトができません。これは、製作者の秘密鍵を使ってのタイミングでしか、mintできないからこそ制作者が意図的にした出自が明確に証明できます。そこで初めて世界で一つしかない現実資産と、同様に世界で一つしかないRWAトークンが、現実資産のクリエイター兼RWAトークンの発行者という同一人物を介してリンクしていることが、ブロックチェーンによって証明されます。トークンには、誰がmintしたのか、いつmintしたのかのタイムスタンプ、画像や思いや仕様などのメタデータを記録できます。

来歴が証明されるとは
ブロックチェーンとは、台帳に過ぎません。AからBへトークンが移動した。これが一つのトランザクションとして、無数に記録されています。RWAトークンの来歴を証明できるのは、移転を繰り返すごとにブロックチェーン上に、トランザクションが刻まれるため。このトランザクションは真正性として担保され、改ざんがとても難しい、そして当事者間の個人へ帰属する。トランザクションには、誰がいつ、誰から誰に、RWAトークンを移転したかが記録される。来歴とは、このトランザクションを追跡することで証明されます。

ブロックチェーンの特性を生かすことの1つ目として出自と来歴が証明されることで、2つ目の特性である見える化が生きてきます。それが次のポイントになります。

ポイント2
分け隔てなく共有するとは

出自と来歴がブロックチェーンによって証明されるということは、それは誰からも見える化されているということになります。

出自が見える化されるとは
現実資産とリンクしたRWAトークンがmintされ出自が見える化されることで、現実資産が誰の手によって生み出されたのかが見える化します。さらに、現実資産を生み出した人が、他の現実資産を生み出していれば、それも見える化されます。たまたま生み出された現実資産もあれば、長い年月によって過去に沢山の現実資産を生み出した結果、今最高の現実資産が生み出されることもあります。その全ての出自をブロックチェーンに記録することで、現実資産を生み出した個人へ帰属することから現実資産の価値に変化が生まれます。価値の裏付けがあることで、それを相対的に判断する際の手助けになります。

例えば

  • トランザクションをmintされたタイミングから、最新のホルダーまでを追跡できる。

  •  手元に現実資産がなくミュージアムなどで展示されていたとしても、ホルダーとして証明される

  • mintした制作者が、他にも現実資産を製作した、RWAトークンを発行している事実が見える化されることで、継続的に作品を世の中に作品を送り出してきたことがわかる。

来歴が見える化されるとは
RWAトークンの来歴が証明されることで、その現実資産を今持っているのが誰なのか、過去に誰が現実資産を持っていたのかが見える化されます。たまたま初めて手に入れたのがこの現実資産ということもあれば、類似の現実資産を多く集めている中で手に入れた珠玉の一品としての現実資産ということもあります。現実資産の来歴が個人に帰属することで、それを持つ人の背景が見える化されることで、その現実資産がどういう変遷を辿って、今自分の手元にあるのかが見える化されます。現実資産の所有の証明は、今現在それを手元に持っているかどうかになりますが、ブロックチェーン上では過去に持っていたことも証明されることで、それも価値の裏付けの一つとなるのです。

例えば

  • その作品が、RWAトークンとして多くのホルダー間で移転を繰り返すことで、人気のある需要と供給のある流動性の高い作品であることがわかる。

  • ホルダーも同様に、今までにどんなRWAトークンをホールドしてきたかで、その趣味趣向やコレクター性などがわかる。

  • 目利きがよく効くホルダーが、今までにどんなRWAトークンの流動性の中心となってきたかで、良質な現実資産の取引に貢献していることがわかる。

  • コレクター性の強いホルダー、そして目利きの良いコレクター、などを通じて流動性が高いRWAトークンは、リンクしている現実資産自体の価値が高いことがわかる。

その現実資産の価値の裏付けがトークンによって出自と来歴が証明され全てが見える化することで、全てのステークホルダーへ分け隔てなく共有されることからフェアになることで、それを本当に必要とする人たちがいることで真の価値が誰からも分け隔てなくわかるようになります。

つまり、過去において現実資産の出自と来歴がRWAトークンによって証明され見える化されることで真の価値を認識することから、現時点において現実資産とRWAトークンを誰に渡す方が価値を持続的に上げていけるのを判断できる。それは、将来的に現実資産の価値が上がった際に、過去に持っていたという事実が自身の評価に繋がる。ということでもあります。

さて、ここで気づいた人もいると思います。

RWAトークンの出自と来歴が証明されることで、現実資産の価値の裏付けにはなるが、物理的なモノとしての現実資産それ自体はどうなるのか?

当然、RWAトークンが移転されると共に現実資産もトークンホルダーへ移転されるべきではあります。ですが、それを確実に行う手段は存在しません。オンチェーンとオフチェーンがあるように、そもそもが現実資産とRWAトークンは物理的には別ものなのです。これらの橋渡しが今後の課題になります。

ですが、これからの未来において、現実資産とリンクしたRWAトークンで価値を証明して、新しい価値を裏付ける仕組みを受け入れる価値観が生まれれば、もはやそのもの自体が手元にあることは重要ではなくなります。それを実現すべく、先日ミュージアム向けのパッケージサービスをリリースしました。


ミュージアムの収蔵品である現実資産は、ミュージアムでの展示そのままで、その収蔵品の現物資産とリンクしたRWAトークンを手に入れることに価値が生まれる仕組みです。これによって、ミュージアムはトークンを販売もしくは寄付と交換することで、運営費用を手に入れるコトができます。トークンを集めるユーザーは、収蔵品にかかる管理、保管、保全のコストをかけるコトなく、コレクションすることが可能となります。

ここで重要なのは、現実資産がなくなる訳ではないのでRWAトークンが見える化されているのと同様に現実資産が物理的にそこに見える化されているという証明が必要です。物理的に現実資産をミュージアム内に展示して多くの衆人環視に晒される場所に置いて、展示物としての現実資産の横にはQRコードなどでいつでもトークンアドレスからブロックチェーン内の記録へアクセスできる方法を用意するなどして、誰にとっても公平な環境を作ることが重要です。決して、現実資産が特定の人にしかアクセスできずに、そのRWAトークンだけが流動しているという不健全な環境を作ってはいけません。

こういった形で、現実資産をトークン化することで、新しい価値観を受け入れることから、新しいビジネスの形態が生まれます。近い将来、この価値観が認められるようになって、メタバースというバーチャルな世界においても意味を発揮すると考えています。これは、また別の機会にお話ししましょう。

まとめ

現実資産をRWAトークン化することで、既存のビジネスをWeb3にエスカレーションして、次の成長ステージとするためのヒントにしてほしいです。

  1. ブロックチェーンを活用したWeb3とは、あらゆるモノやコトが個人に帰属が重要になります。そのため、真の価値となるための裏付けを、現実資産の出自と来歴の証明がRWAトークンとリンクして個人へ帰属することによって裏付けられます。

  2. リアルとデジタルを、リアルが持つ価値をデジタルへの写し鏡とするのではなく、リアルが存在することでリンクされるデジタルなトークンには、新たな価値がさらに付与されることを考える。リアルとデジタルが裏と表という一対の関係性を持ちつつも、それらが相互に補完し合う関係性であることが望ましいです。

  3. 現実資産が単純にトークン化され利便性が上がるから価値が上がるのではなく、出自と来歴から価値の裏付けを全てのステークホルダーで共有できることから、真の価値を理解できるステークホルダーと共有する事で健全なやり取りが行われることから、現実資産をトークン化する前に比べて現実資産をトークン化した後には、格段に価値が上がるという構造が好ましいです。

最後に

現実資産のRWAトークンは、それ単体を目的とした場合の効果は限定的であると考えます。トークン化することで、取引が容易にもなり取引にかかる雑務が減るでしょうし、いつでも誰でも簡単に取引ができるようになるので、二次流通が加速します。ですが、それは、現実資産としての利便性を上げるに過ぎないです。

重要なのは、現実資産をトークン化することで、誰でも簡単に出自と来歴から価値の裏付けが証明されていることを認識できて、二次流通において誰からも分け隔てなく価値の裏付けが見える化されている状態での健全な取引ができる事です。

Web3のRWAトークンは、トークンエコノミーに存在する、他のFT、NFT、SBT、GT、STなどと有機的に、ステークホルダーの間を循環することから個人へ帰属することで、本来の価値を発揮するものと考えて欲しいです。現実資産がRWAトークンと、それ以外のトークンとの相乗効果と相互補完の関係性によって価値を高め合うことができるようになります。

※本記事の本文はNFTです。https://solscan.io/token/3V9L6nfgdyLhFueBLUkys7fj5p2M8d634AGx3pQcb8WR