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【12の質問】Web3の観点からみたRWAトークンについて

登壇とパネラーとして参加しましたフィンテック養成勉強会「Web3の新しいフロンティア: RWA(リアルワールドアセット)の役割とリスク」で、事前に会の主催者でもありパネルディスカッションのモデレーターでもある藤井氏から、事前に12個の質問を受け取りました。

RWAトークンの議論をきっかけに、Web3についても整理する事ができました。とても良い質問でしたので、当日の勉強会では時間の都合もあり全ての質問にお答えできなかったのでこちらに掲載します。ちなみに、金融に対してストレートにフィンテックという観点ではお答えしていません。金融に対してWeb3という観点でRWAトークンの考え方を綴っています。


1.RWAブームの背景

•2022-2023年になって、なぜRWAが特に注目されるようになったのでしょうか?

ブロックチェーンのトークンの使い途が暗号資産、NFTなどの一部の人たちによるハイリスクハイリターンなお金の使い方から、良くも悪くも一般に認知されて来たことと、暗号資産とNFTだけでは手詰まり感も出て来ていることから、多くのステークホルダーを巻き込めるよりユーティリティ性の高いブロックチェーンの使い方が求められています。実際に、ブロックチェーンを使ったユースケースが渇望されており、RWAトークンもその一環です。これは、RWAトークンだけが、暗号資産やNFTというような単体での利用が望まれているのではなく、トークンエコノミーのエコシステムを作る手段の一部としてRWAトークンが望まれていると考えています。

インフラとしてのブロックチェーン、プラットフォームとしてのブロックチェーン、事業としてのブロックチェーンを考えている、いろいろな事業体は、ユースケースが不足していることに危機感を感じています。なので、既存の方向性を変えるような発表をして見たり、大企業との取り組みを加速してみたり、仕組み化するためのビジョンを打ち出してみたりと、色々と試行錯誤を繰り返しています。今のところはそんな中での暗号資産、NFTなどに続く新たなトークンとしての位置付けです。

2.Web3とRWAの組み合わせの意義

•Web3技術とRWAの組み合わせが新しい金融インフラの確立に寄与すると言われていますが、具体的にどのような点でその組み合わせが有効と考えられるのでしょうか?

Web3とはあらゆるモノやコトが個人に帰属する社会と経済を創造する事です。そのため、現実資産にまつわるあらゆるモノやコトを確実に個人へ帰属させる事がブロックチェーンによって可能になります。情報の真正性が担保された出自と来歴から、現実資産を今誰が所有していて、過去に誰が所有していたのか、その所有者は他にもどんな現実資産を所有していたのか、それに付随する思いや熱量なども見える化することで、現実資産の価値が本当にそれを必要としている人たちの間で健全に取引されるようになります。Web3によって新しい、信用と信頼の仕組みが生まれることで、それが金融という中の仕組みを堅実で健全でフェアな仕組みに変える事が期待されています。

3.NFTとRWAの関連性

•NFTとRWAの組み合わせによる新しい金融の形成について、具体的な応用例やそのメリット・デメリットを教えてください。

現実資産のトークン化にもNFTをベースにしたスマートコントラクトが必要になります。RWAトークンはNFTの派生だと考えます。NFTには、モノやコトの唯一性を記録して証明できます。特にコトなどの体験や熱量や思いなどをNFTにして、個人へ帰属させることに可能性を感じています。そのコトが証明されたNFTのホルダーが、RWAトークンのホルダーとして、多様なトークンを保持したトークングラフが見える化することで、現実資産への価値決定のプロセスに影響を与えるようになります。例えば、RWAトークンをmintしたユーザーが、過去にどんなRWAトークンをmintしているのかが分かるので、今回mintしたRWAトークンに対しても、過去の信用から未来の信頼が生まれます。それを判断してRWAトークンを受け取る際の裏付けとなります。受け取る側にもトークングラフが存在することから、RWAトークンをmintしたユーザーも誰にRWAトークンを渡す方が、その現実資産を大事にしてくれるのか、価値を高めてくれるのかを判断できるようになります。過去の信用と未来の信頼からお互いがフェアに現実資産の取引が可能とになります。

気をつけなければならないのは、現実資産はリアル、NFTはデジタルであり、NFT化されたRWAトークンは、リアルの現実資産の移転を確実に担保できるわけではありません。そこは性善説によって成り立ちますが、それを誰も保証できないのです。NFTを持っているからと言って、請求した現実資産を手に入れる確実性がありません。オンチェーンとオフチェーンの橋渡しが物理的に不可能だからです。これらを解決するためには、少しでも多くの要素をオンチェーンとしてスマートコントラクトを充実させる事です。例えば、決済はFT、信用はGT、資産性はST、唯一性はNFTなどを、全てのステークホルダーが活動にトークンエコノミーを組み込んで、その活動のほとんどがオンチェーン上に記録され証明することで、スマートコントラクで完結できる範囲が広がります。それくらいの仕組みを作ることで、オンチェーンとオフチェーンの垣根が薄まってくる事で、リアルとデジタルの垣根にも何かしら上手く仕組み化する事が可能になると思います。

4.パブリックチェーンとRWAの関係性

•RWAのトークン化や取引において、パブリックチェーンとの関係性やその重要性について説明してください。

ブロックチェーン上に記録されれた情報の真正性を担保するには、パブリックであることの方が、情報としての価値が高いと考えます。未来の信頼をブロックチェーンで証明するには、過去の信用として記録されている情報が、パブリックチェーン上にあることでの安心感は重要かと思います。誰からも改ざんされ難い状況は重要かと思います。さらにその中でも、どんな状況においても誰からも分け隔てなく共有できる情報にこそ価値があります。情報へアクセスすることに制限があるようでは、過去の信用から未来の信頼は生まれません。それくらいパブリックであることが求められます。

また、パブリックチェーンの何でも良いわけではなく、トランザクションが早く、手数料が安いことがとても重要です。トークンエコノミーでは、RWAトークンは手段の1つでしかないので、他の多様なトークンと相まってRWAトークンと共に現実資産の価値を上げていくので、多くのNFTのmintと移転によるトランザクションが発生します。そこでは、分け隔てなく共有できる情報と共に情報へのアクセスが早くて安いこともとても重要です。

5.伝統的金融機関のRWAへの参入

•伝統的な金融機関がRWAの世界に参入する際の糸口や、その際のチャレンジについてはどのようなものが考えられますか?

Web3の完成形をRWAのトークン化で目指すのはまだまだ難易度が高いので、そこをゴールに見据えた設計は必要ですが、そこに至る道筋は多様にある方が好ましいです。まだまだ成熟しきっていないので、状況に応じてピボットが多く発生するかと思います。ですが、RWAをトークン化する以上、Web3は切っても切れない状況になるので、目的としてのゴールはしっかりとブレないようにする必要はあると思います。

6.金融業界への影響

•Web3とRWAの連携が金融業界に与える最も大きな影響や変革は何だと考えますか?

金融の取引における仕組みの中での手順などのスマート化は確実に起きると思いますが、個人の信用と信頼の仕組みがWeb3によって大きく変わることの方がインパクトは大きいと考えています。Web3によってあらゆるモノやコトが個人へ帰属することから、過去の信用と未来の信頼の仕組みが大きく変わることで、金融の幅が広がり小口での個人の証券化をトークンエコノミーのエコシステムにおける手段の1つとして考えています。その際に個人が所有する現実資産の真の価値をRWAトークンが担保することで、個人が信頼のおける第三者を必要とせずに個人に帰属した信用と信頼で、金融商品を生み出し、また取引して資産を拡大したり、資金を調達したりできる仕組みを構築したいと考えています。

7.リスク要因の議論

•RWAのトークン化やWeb3技術の導入に伴うリスク要因について、どのような点が考えられ、それをどのように回避または軽減することができるのでしょうか?

オンチェーンとオフチェーン間を橋渡しすることでの確実性が低い問題は常に残り続けます。ブロックチェーンに対してリテラシーの低い人たちには、オンチェーンによる有益性が素晴らしいものに見えるかもしれませんが、そのため相対的にオフチェーンのリスクが薄まって見えることから、そこに漬け込んだ詐欺的な行為が出てくる可能性があります。回避または軽減するためには、オフチェーンにおけるアクションのほとんどを可能な限りオンチェーンに寄せたスマートコントラクトが必要になります。これは、企業のバリューチェーンにオンチェーンを組み込んで、価値創造のほとんどがスマートコントラクトで完結する仕組みです。オフチェーンに残るのは、オンチェーンにするのが不可能な物理的に物が移動することくらいです。ただし、ここに至るにはいろんな障害を乗り越える必要があるので、完全なWeb3として完成するのは試行錯誤を繰り返した先にある世界かと思います。

8.未来の展望

•今後5年、10年という中長期的なスパンで、Web3とRWAの関連性やその進化について、どのような展望を持っていますか?

この20年でインターネットが社会インフラと化しました。それには紆余曲折が合ったように、Web3も完全なWeb3を実現するには、いろいろなことの変化に耐え抜いて行かなければなりません。インターネットの延長線上にある仕組みとして、商習慣やコミュニケーションのあり方、信用と信頼の定義などなどを、年単位で変化を恐れずに乗り越えていくことになります。それを有益に使う方法の一つとしてWeb3があります。その流れの中の一つとして、RWAトークンという考え方があります。それはトークンエコノミーにおける一つの手段でしかなく、他の暗号資産やNFTなどの多様なトークンと相まって、相乗効果と相互補完などの関係性によって成立します。Web3では、RWAトークンそれ単体での進化はほとんど見込めません。スマートコントラクトに効果的に組み込んでこそ、Web3での真価を発揮します。

9.RWAの普及のための課題

•RWAの普及や認知を広めるためには、どのような課題や障壁が存在すると考えますか?

RWAトークンが流動するマーケットプレイスを作るという既存の仕組みと切り離した安易な考えではなく、現実資産が動いている既存の仕組みの中でRWAトークンをどう循環させていくのかを考えることです。これは、マーケットプレイスを作ることよりも難しいことではありますが、既存の事業を次の成長ステージへアップデートするための良いきっかけになると思います。

RWAトークンによって現実資産の取引がスマート化されますが、それは既存のコストが減ったり利便性が向上したりすることに過ぎません。トークンをトークンエコノミーのエコシステムの1つとして考えることで、可能性の幅が広がります。より個にフォーカスした事業の仕組みを作ることが重要です。その手段の一つとして多様にあるトークンの中でのRWAトークンという考え方を持つことです。このように切り替えることは一朝一夕でできることではなく、事業によっては既得権益を壊して、スクラップ&ビルドするくらいの大胆な行動に出る必要があるかと思います。それは短期的にはコストが膨らむでしょうが、Web3の可能性に賭けるなら、一時的な出血には目を瞑って、中長期的なスパンで物事を考える事が重要です。しかし、企業によっては、Web3においてユースケースもいまだに少なく、かなりチャレンジングな内容になります。それをチャンスと捉えて取り組む事ができると、企業は新たな成長ステージへ進むことができます。

10.技術的な進化とRWA

•最近の技術的な進化やイノベーションがRWAのトークン化や取引にどのように影響しているのでしょうか?

トークンエコノミーの本質を押さえたユースケースの構築に忙しくて、どのように影響をしているかは未知数です。まずは、Web3を活用したRWAトークンがmintされ循環されて、多くのユーザーに利用してもらえるユースケースを生み出すことが望まれています。なので、最近の技術の進化やイノベーションの出ては消えてを繰り返すトレンドに右往左往している暇はありません。Web3の本質としての、あらゆるモノやコトが個人へ帰属する社会と経済を創造できる基礎となる土台をまずは確実にすることが重要です。どのように本質を見極めてWeb3を確立するかを、我々は試されています。

その仕組みが手段の1つとして取り入れられたユースケースが生まれてから、初めて、そのタイミングでの技術的な進化やイノベーションを取り入れる事が可能になると考えています。なので、その時になってみないとわかりません。

11.RWAの市場規模やポテンシャル

•現在のRWAの市場規模や、今後の成長ポテンシャルについての見解を教えてください。

世の中的には数百兆円市場規模なんてのも言われています。ですが、兆という単位的には合ってると思います。現実資産が、RWAトークンをきっかけにオンチェーンのスマートコントラクトにシフトしていけば可能性は大いにあり得ます。

Web3で機能するRWAトークンによって良いものは良い、悪いものは悪い、というコトが今よりもハッキリとするようになります。ですので、可能性あるシナリオの1つとしては全体のパイは変わらずだけれども、価値が再評価された上で本当に必要とされる良いものだけにお金が集まる市場になることを期待しています。

12.RWAのエコシステムの構築

•RWAのエコシステムを健全に発展させるためには、どのような取り組みや協力が必要とされていますか?

RWAトークンを単体でフォーカスするのではなく、それ自体を既存の仕組みに上手に取り入れることです。暗号資産やNFTはそれ自体が目的となっているので、それ自体の取引所が先に生まれてしまいました。ですが、一般ユーザーにはなかなか浸透していません。RWAトークンを単体で扱うようなアプリ的な発想では持続しません。エコシステムとは、多様なステークホルダーを巻き込んで成立する生態系です。そのためには、既存の事業におけるステークホルダーが、理解して参加できるような仕組みが必要になります。これは、バリューチェーンの仕組みに組み込んで、それを共有する全てのステークホルダーの考え方をアップデートすることになり、変化を恐れずに許容してもらう必要があります。その手段の1つとして現実資産をトークン化したRWAトークンの活用を、Web3への入口のきっかけとして使うのは良い方法です。

各業界で、試験的にWeb3を取り組める共同体を組成して、そこで限定的にWeb3を取り込んでいろいろなユースケースを試すべきです。大きな変化が起こる可能性があるので、これを1社だけで負担する事ができて、ゲームチェンジを起こすことができる企業は稀だと思います。Web3においての主役は個人です。個人は多様性の中において、情報を得る手段も多様になることで、そこから生まれるアクションも当然ながら多様です。そのため、仕組みを大きく変えるには、1社だけがリスクを抱えて、リターンを得るのではなく、業界全体で個人とのつながり方を共に創りながら変えていく必要があります。

日本の各業界がWeb3で新しいルールを、業界全体で作った上で、そのルールの上で競い合うことで、業界自体が発展していき、日本が世界で勝てる土台がWeb3によって作られると考えます。

※本記事の本文はNFTです。
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