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人生の目的と物忘れ

生きがいのある人生とは何でしょうか。

いくつかの要素があると思うのですが,自分の人生に何らかの目標を抱くこと,自分の人生の中で「これをやろう」とする原動力が存在すること,そしてどこかの方向に向かっていると感じること,などです。

このような要素は全体的に,人生の目的についての意識を持つこととされています。そしてこの人生の目的意識は,成人期における健康状態の改善に一貫して関連していることが報告されています。また,加齢に伴う認知的な低下を予防するような働きも,人生への目的意識を持つことが有効だという研究結果も報告されているそうです。このことは結果的に,高齢期の認知症の予防にもつながることが期待されています。


主観的認知

自分自身の認知機能についての個人の認識のことを,主観的認知といいます。自分自身がどれくらいの記憶力があるのか,どれくらい明晰な思考力を持つのか,新しいことを学ぶ能力がどれくらいあるのかといった認識のことです。

この要素として,認知的失敗という現象の研究も知られています。たとえば,人の名前をうまく記憶できないというのも,自覚できる認知的な失敗のひとつです。他にも,買おうとしていたものや探していたものをつい忘れてしまうとか,やろうとしていたことがあるのに他のことに気をとられてしまうとか,単純にものを忘れてしまう……年齢を重ねるとともに,こういったことは増えてきます。

◎物忘れ:予定していた約束を忘れるなど
◎注意散漫:すでに読んだことをを忘れてもう一度本を読み始めるなど
◎不注意:ものを落とす,人にぶつかるなど
◎名前:名前を忘れる,思い出せない

では,実際に人生の目的と認知的な失敗との間には関連があるのでしょうか。広い年齢層でこの関連を検討すると,どの年代でも関連は見られるのでしょうか。今回はこのような問題について検討した研究を見てみましょう(Sense of purpose in life and subjective cognitive failures)。

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