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Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック

2023年6月,新しい本が出版されました。『Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック:5つの因子から「性格」を読み解く』(谷 伊織・阿部晋吾・小塩真司[編著],福村出版)です。

Big Five

ビッグ・ファイブ・パーソナリティは,外向性,神経症傾向,開放性,協調性,勤勉性の5つの次元から人間のパーソナリティ全体を記述しようと試みるパーソナリティの枠組みです。現在では,心理学の研究だけでなく他の研究分野,多くの学問分野,教育場面,臨床場面,企業のマーケティング,就活などにも応用されつつある枠組みとなっています。

今や,多くの人が知るパーソナリティの枠組みです。

興味はあるけれど

しかし,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの全貌を知ろうとすると,適切なまとめがないのも確かです。また,日本語での情報が限られていることから,間違って伝わっている面も多々ありそうです。

そこで,手軽なボリュームでビッグ・ファイブ・パーソナリティの歴史,内容,測定方法,発達や適応,応用までをまとめたほんが必要なのではないか,という話を数年前からしていました。

今回の本の編著者たちで,何となく話をしていたのは,海外の学会に参加していたときでしょうか。今回,たまたまその後の進展があったことから,福村出版より本書を出版する機会を得ることができました。

目次

目次は以下のとおりです。たくさんの項目が並んでいますが,意図的にそのようにしています。1つ1つの記事はできるだけコンパクトに,そして内容を多様にして,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの多面的な内容に触れることを目指しています。

この目次をざっと見ていただくだけでも,いかに多くの事柄がビッグ・ファイブ・パーソナリティに関連して研究が行われているかということが,理解できると思います。

第1章 Big Fiveへの道のり
 1-1 心理辞書的研究
 1-2 基本次元の探求から5次元への集約
 1-3 一貫性論争と状況論の中のBig Five
第2章 Big Fiveの各次元
 2-1 E:外向性
 2-2 N:神経症傾向(情緒不安定性)
 2-3 O:開放性(経験への開放性)
 2-4 A:協調性・調和性
 2-5 C:勤勉性・誠実性
第3章 Big Fiveの測定
 3-1 NEO-PI-R、NEO-FFI
 3-2 FFPQ、FFPQ-50(短縮版)
 3-3 主要5因子性格検査
 3-4 形容詞尺度:BFS
 3-5 Big Five尺度短縮版
 3-6 BFIとBFI-2
 3-7 TIPIとTIPI-J
 3-8 IPIP-NEO
 3-9 尺度間の関連
第4章 Big Fiveの発達
 4-1 気質からBig Fiveへ
 4-2 児童期から青年期のBig Five
 4-3 成人期のBig Five
 4-4 高齢期のBig Five
第5章 Big Fiveの基盤と変化
 5-1 進化的背景
 5-2 遺伝的背景
 5-3 Big Fiveと脳神経活動
 5-4 動物のパーソナリティ次元
 5-5 Big Fiveの性差
 5-6 Big Fiveの変化と介入
第6章 Big Fiveと他の次元への展開
 6-1 Big Fiveの高次因子モデル
 6-2 パーソナリティの一般因子モデル
 6-3 6次元:HEXACOとBig Five
 6-4 円環モデルとBig Five
 6-5 Big Fiveの類型
第7章 他のパーソナリティモデルとBig Fiveとの関係
 7-1 EysenckのパーソナリティモデルとBig Five
 7-2 BIS/BASとBig Five
 7-3 CloningerモデルとBig Five
 7-4 Dark TriadとBig Five
 7-5 YG性格検査とBig Five
 7-6 擬態語性格尺度とBig Five
 7-7 RIASECとBig Five
 7-8 価値観とBig Five
第8章 Big Fiveと他の心理学的特性との関連
 8-1 ポジティブ特性:自尊感情、主観的幸福感、楽観性、レジリエンス、マインドフルネス、コーピング、動機づけ
 8-2 ネガティブ特性:抑うつ、不安、反社会的行動、攻撃性、疲労、バーンアウト
 8-3 病理的特性:完全主義とパーソナリティ障害
 8-4 認知的特性:知能、創造性、偏見、価値、信仰
第9章 Big Fiveと日常生活場面
 9-1 学校場面:学業成績、学業行動、いじめ
 9-2 職業場面:職業パフォーマンス、収入
 9-3 人間関係場面:親子関係、恋愛、友人関係、夫婦関係
 9-4 ネット場面:SNS、ネットいじめ
 9-5 嗜好品・嗜癖行動:アルコール、タバコ、ギャンブル
 9-6 室内:部屋、写真、音楽
 9-7 住環境:居住地、移住、場所
 9-8 身体特性:BMI、身体活動、競技、握力、寿命
第10章 Big Fiveのこれから
 10-1 教育場面への応用
 10-2 臨床場面への応用
 10-3 バーチャル・キャラクターやロボットへの実装
 10-4 経済活動・企業活動への応用
 10-5 COVID-19パンデミックにおけるBig Five

目次

メタ分析

もうひとつのポイントは,できるだけメタ分析で報告されている研究知見を紹介することを心がけたという点です。

これだけ多くの研究がビッグ・ファイブ・パーソナリティについて行われているのだ,ということを知っていただければ嬉しいですね。

もちろん,研究テーマによっては,メタ分析がまだ行われていないこともあります。そこは,もしかしたらメタ分析で研究をするチャンスなのかもしれませんよ(メタ分析は,早い者勝ちとネタを思いついた人勝ち,という面があるのですよね)。それから,やはり日本国内の研究はまだまだです。もっと盛んに研究が進められるといいですね。

ぜひ,多くの人に手に取ってもらえれば嬉しく思います。ぜひよろしくお願いします!

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