見出し画像

100歳を超えても睡眠は大切

高齢化は日本だけの問題ではなく,世界中の多くの国における社会的な問題です。しかしながら,長寿は心理学でも重要なアウトカム(結果)として取り上げられるもので,しかも「望ましい」とされる結果です。にもかかわらず,国全体で高齢になってくると「問題」だとされます。

国連人口本部の推計によると,2100年には100歳以上の百寿者が世界で2500万人以上に達すると言われています。


認知症

高齢者が増えると確実に認知症患者も増加します。世界保健機関(WHO)によれば,現在でも世界で65歳以上の女性の8.1%,男性の5.4%である5500万人以上が認知症を患っていると推定されています。さらにこの数字は増加傾向にあり,2030年までに7800万人,3050年までに1億3900万人へと達するという推計もあります。

アルツハイマー病をはじめとする認知症は現在,世界の死因のトップ10に入っており,2019年には南北アメリカ大陸とヨーロッパの両方で死因の3位にランクされているそうです。このような状況を背景に,介入可能な認知症の危険因子を特定することが重視されています。

睡眠

ひとつの重要な生活習慣は,睡眠です。どの世代でも言えることなのですが,高齢期においても睡眠習慣は健康にとって重要な要因になります。

しかし,高齢期とくに百寿者の睡眠に関してわかっていることは限られているそうです。また限られた研究の中でも,睡眠時間が短いことが問題になる一方で長すぎても問題になっていて,また相互に矛盾するような研究結果もあり,なかなか一筋縄ではいかなさそうです。


本研究の目的は、睡眠状態(睡眠時間と睡眠の質を含む)と認知機能との関連を検討し、睡眠の質と認知機能との間で最も関連性の高い領域を特定することである。本研究の目的は、高齢者人口の健康と福祉を促進するために不可欠なデータと科学的根拠を提供することである。

そこで,100歳以上の人々を対象として中国時で実施された調査データを用いて,睡眠と認知機能との関連を検討した研究結果を見ていきましょう。こちらの論文です(Association of Sleep Status With Cognitive Functions in Centenarians: Evidence From Hainan Centenarian Cohort)。

ここから先は

1,162字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?