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ロシアの大学生たちの自尊感情とその後の変化

こんな時期ですが,今回紹介する研究はロシアで行われたものです。ロシアの研究者たちの状況は,どうなっているのでしょうね。顔見知りの研究者もいますので,ちょっと心配です。


成人形成期

青年期から成人期にいたるあいだの時期を,成人形成期(emerging adulthood)と呼ぶことがあります。この言葉は,心理学者アーネット(Jeffrey Arnett)によって名づけられたものです。

この言葉についての詳細は,このAmerican Psychologistの記事(論文)をみるといいのではないかと思います。

この時期の自尊感情

自尊感情の平均値を年齢を追って見ていく研究結果からすると,自尊感情は小学校から中学や高校あたりで下がり,その後は大学生,成人期を通じて上昇していくというトレンドを描きます。思春期や青年期の時期,中学生や高校生の時期に,自尊感情の平均値はもっとも低くなる傾向にあるのです。これはアメリカのデータでもそうですし,日本の研究でも同じようなトレンドを描くことがわかっています。

ということは,成人形成期というのは,自尊感情の平均値が徐々に回復し,上昇に向かう時期に相当します。もっとも,これはあくまでも平均値の話ですので,この中にはずっと高いままの人もいますし,ずっと低いままの人も,上昇する人も下降する人もいます。

ロシアの研究

では,日本やアメリカ以外の国では,成人形成期に相当する大学生の時期に,自尊感情はどのような得点を示す傾向を見せるのでしょうか。今回紹介する研究は,ロシアで行われたものです。大学生を対象として,縦断的な調査が行われたデータを分析したものです。どのような結果が報告されているのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Is self-esteem increasing during emerging adulthood? A two-wave case from Russia)。

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