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サディスティックな人が快楽を求めるプロセスは確認されるか

記事でも何度か登場してきている,近年ダークなパーソナリティとして注目されつつあるサディズムに関する研究を見ていきましょう。サディズムはパーソナリティに関連する障害として扱われることもあるのですが,普段の生活の中でもよく見られる,一般的なパーソナリティ特性でもあります。

サディズムというのは,他者の苦痛に喜びを感じる傾向を含むものとされています。これは「サディスティック・プレジャー・メカニズム」と呼ばれることもあるようです。

日常的サディズム

日常生活の中で見られる範囲のサディズムを,日常的サディズムといいます。一般的にサディズム傾向が高い人は,他者が苦しむ姿を見たり想像した後に,より大きな喜びを表すという研究知見があります。この点が,他のダークなパーソナリティ(マキャベリアニズム,サイコパシー,ナルシシズム)とは少し違う点で,これらのパーソナリティ特性はたいてい,他者の苦しみに対して無関心であるとされます。

もしも「サディスティック・プレジャー・メカニズム」が働くのであれば,サディズム傾向が高い人は,他の人たちがとても苦しんでいるときに,喜びを顕著に感じるはずです。しかし,これまでの研究では,この関係はそれほど単純なものではないようです。たとえばこれまでの研究では,サディズム傾向が高い人に対して,他者の苦痛に注目するように「指示」が出されると,快楽をあまり示さないという結果も報告されています。サディズムは快楽を増す方向というよりも,不快感が減っていく方向に影響するという指摘もあります。

プロセスの問題

さらに,「サディスティック・プレジャー・メカニズム」が働くなら,サディズムが高い人は日常生活の中で快楽を得るために,他者の苦痛を強く認識するはずです。しかし,研究結果では,むしろ他者の苦しみを小さくする方向に働きかけるという結果も得られています。

細かく見ていくと,サディズムが高い人は,他者の苦しみから快感を得るのですが,その快感を得ることと,実際の他者の苦しみに伴う不快感と両方を経験します。サディズムが高い人は道徳観や倫理観をあまり気にせず,しかし他者の苦しみから不快感も経験するのです。このあたりに,サディズムと他者の苦しみを認識することとの間に,少し複雑な事情が理想です。

このあたりの問題について,くわしく検討した研究を見ていきましょう。こちらの論文です(Sadistic or less reactive? Reconsidering the sadism-pleasure link)。

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