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サディスティック・パーソナリティ障害の基準は満たされるのか

割引あり

サディスティック・パーソナリティ障害(SPD)という診断基準があります。これは,アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-III-Rで提案されたものの,その次のDSM-IVには含まれていない障害名です。


サディズム

サディズムは,19世紀に提唱された用語で,もともとは他人に苦痛を与えることによって得られる性的快楽を指していました。しかしやがて,この言葉はサディスティックな行為から得られる性的ではない快楽や楽しみも含む意味へと変化していきます。

精神分析学者のフロイトは,サディズムの中に性的サディズムと全般的サディズムという2つが含まれると論じているそうです。

1980年代

サディスティック・パーソナリティ障害という診断を精神医学の診断基準に含めようとする動きは,1980年代に始まったそうです。この頃は,サディズムだけでなく,自虐的(マゾヒスティック)パーソナリティ障害という提案もされていたそうで,サディズムとマゾヒズムの両方が診断基準に掲載されていた可能性もあったとか。

サディスティック・パーソナリティ障害は,反社会性パーソナリティ障害や精神病質という他の概念と類似していますが,これらだけでは全てをうまく説明できないと主張する研究者もいたようです。しかし,サディスティック・パーソナリティ障害はその診断基準の妥当性を証明することが難しく,懐疑的な研究者も多かったことから,副次的なカテゴリにとどめられ,結果的に消えていったという経緯があります。

診断

サディスティック・パーソナリティ障害の臨床的記述によると,次のような特徴を持つものとされています。

◎対人関係面:辛らつで敵対的,操作的,共感性に欠け,冷淡で,目下とみなす相手にすり寄る。
◎認知的側面:硬直的で社会的不寛容。武器,戦争,悪名高い犯罪や残虐行為の加害者に魅力を感じる。

サディストは,他人を支配して過酷な罰や屈辱を与えることができるような社会的地位を求めるとも考えられています。また,多くは男性であるとも記述されています。

入院患者

実際に精神科に入院している青少年に対して,サディスティック・パーソナリティ障害の診断基準を当てはめたらどうなるかを検討した研究があります。どれくらいの割合で,診断基準を満たすのでしょうか。また,他の診断基準とどのような関連を示すのでしょうか。

では,こちらの論文を見てみましょう(Sadistic Personality Disorder and Comorbid Mental Illness in Adolescent Psychiatric Inpatients)。

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