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私たちの体は微生物だらけ

今回も『心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで』に書かれた内容を紹介したいと思います。

まず,簡単なクイズです。私たちの身体には,どれくらいの生物が住みついているのでしょうか。想像でいいので,数字を思い浮かべてみてください。

研究プロジェクト

私たちの身体に,いったいどれくらいの生物が住みついているのかを大規模に調査するプロジェクトは,2005年からスタートしたそうです。その背景には,高速かつ精度が高く遺伝子配列を解析する機械が開発されたことも大きな要因となったようです。

これは心理学も同じです。コンピュータが開発される前と後とでは,研究の規模もスピードも大きく変わってきました。さらにパソコンとインターネットの普及,そしてその拡大に伴って,研究のスタイルも変化してきました。

どれだけいるのか

では,私たちの身体にはどれくらいの生物が住みついていると推定されるのでしょうか。

 人間の体に住んでいる微生物の大規模な調査は2005年にはじめて行われ,異なる生きものの遺伝子パターンを区別する超高速の遺伝子配列解析マシンが開発されたことが追い風となった。科学者の国際コンソーシアムが先頭に立って実施したそのプロジェクトは,まず健康な人々に定着している微生物の解明に重点を置いて取り組んだ。ニキビや虫歯,さらにもっと重い病気のある人を除外することによって調査対象のグループを絞り込んだあと,研究者たちは参加者の便,わきの下,耳たぶのひだのうしろ,喉の奥,足指のあいだ,膣の内部,そのほか深針が届くかぎりの,あらゆる奥まった場所や隙間などから試料を採取した。それから微生物を培養し,遺伝物質をセグメントごとに分析した。さらにコンピューターを用いて分析結果から微生物相全体の規模を計算した――私たち一人一人に住みついているウイルス,細菌,菌類,原生生物,その他すべての生物を合計した数を求めたのだ。最終的な集計の結果は100兆個を超え,人体のすべての細胞を合わせた数はそれより一桁少ない。微生物起源の遺伝物質の総量は,人間自身がもつ遺伝物質の150倍にもなる。簡単に言えば,自分の90パーセントは,実は自分ではない。

『心を操る寄生生物』(p.134)

最初のクイズの答えは「100兆」でした。まず当たらないのではないでしょうか。想像を超えた数字のように思えます。

指紋のようなもの

この微生物たちは生まれる前から私たちの体に住みつきはじめ,生まれるとそのスピードが一気に増加します。そして,個々人に独自の「微生物の様子」が形づくられていきます。

 これらの微生物の一部は胎盤を通過して,子どもがまだ子宮の中にいるあいだにその体内に定着する。だが小さな生きものの最大の波が襲うのは誕生時だ。母親が破水した瞬間から,子宮が収縮するたびに,膣管の表面を覆っている微生物が子どもに飛び乗る。その後,赤ちゃんはまるで微細な生物を吸い寄せる磁石のようになる。出産を担当する医師から,おくるみの布から,はじめて口に入れるおしゃぶりから,そしてあたりの空気から,微生物は次々とやってくる。それらは体のあらゆる隙間や裂け目に潜り込み,とくに栄養物が豊富な腸には多くが集まっていく。最初の二年間でその数は劇的に変化して,赤ちゃんひとりひとりに独特の組み合わせができあがる。そしてそれ以降は食べるものが固形物に移行するにつれて,安定したものになる。子どももおとなも通常はおよそ二千から三千種の微生物に住みかを提供しており,まったく同じ組み合わせをもつ人間はふたりといない。自分の微生物相は指紋と同じで,自分だけのものだ。

『心を操る寄生生物』(p.135)

目に見えませんので実感はできないのですが,ふと目にする自分の身体に,どれだけの生物が生活しているのかと考えてみるのも,おもしろいかもしれません。

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