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退職すると健康になるのか

お勤めの皆さんには,「定年退職」という制度はあるでしょうか。私が子どものときに父親から聞いた話では「定年は55歳」でした。確かに,1980年代までは定年退職は55歳というのが一般的だったように思います。1990年代に入ると,60歳を下回る定年は設定できなくなり,今では希望すれば65歳まで雇用する義務があります。

今の日本で55歳とか60歳が定年だと,やっぱり「まだまだ先は長い」という印象かもしれません。その後も金銭的にも余裕があり,十分に幸せに暮らしていけるなら,それでもいいですよね。

このように見てくると,確かに平均寿命が延びてきたことは確かなのですが,定年退職の年齢はどんどん伸びてきていることがわかります。

そして年金のことを考えると......いったい何歳まで働く必要があるのでしょうか。

大学の定年

いま私が勤めている大学の定年は70歳です。昔から70歳だと思いますので,社会全体の定年になる年齢が,どんどん私の大学に追いついてきた,という感覚ですよね。

ちなみに,マレーシアの知り合いの研究者の定年は「60歳」だと聞きました。国によってもそのあたりの年齢は異なってきそうです。

世界の多くの大学教員には終身在職権という制度があります。これは,いったんその権利を得ると,特別なことがない限り,定年までその身分が保障されるという制度です。これは,不安定な身分に制限されずに自由な研究活動を保障するためという意味があります。

そして次に書くように,アメリカでは年齢による定年がありませんので,就寝在職権を得ると基本的に自ら「リタイア」とするまで身分が保障されることになります。

定年退職という制度

世界を見ると,定年退職という制度自体がない国もあるようです。たとえばアメリカ合衆国では,40歳以上になると年齢を理由に雇用を止めるということ自体が禁止されているようですので(一部の職種以外では),日本のように「何歳になったら定年退職」という感覚自体がなさそうです。

こう考えてくると,ひとくちに「退職」といっても,その様子は国によっても時代によっても同じではないことがわかります。

退職と健康

人間が長く生きるようになって,退職する年齢もどんどん伸びています。それは日本だけの問題ではなく,世界的にそういう傾向はあるようです。では退職すると,健康にどのような影響があるのでしょうか。そんな研究に取り組んでいるのが,この論文(Is retirement good for your health? A systematic review of longitudinal studies)です。

先ほども書いたように,「退職」とは言うのですが,「退職とは何か?」と考えるとなかなか定義が難しいように思います。それまで勤めていた企業や団体を退職した後で別のところに移動することもよくありますからね。一線を退いて後進たちに任せる,という身の引き方もあります。

そこでこの研究では退職を「中年期以降の個人が労働力から退き,それ以降は仕事に対して心理的な献身を低下させること」と定義しています(意訳です)。一線を退くようなあり方も含むと言うことでしょうか。

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