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面接でやる気は伝わるのか

その人がどういう人であるかを判断するには,多様性に目を向けるのが良いと思います。つまり,同じ条件の下で,個々人それぞれによってまったく違う行動を観察すれば,よりその人がどのような人物であるかという手がかりがよりたくさん得られるだろうということです。

授業中に静かに座って皆が真剣に授業を受けている様子を見て,「君はこういう人だね」と指摘するのは無理な話です(指摘できてしかも正しければ,通常の能力を超えた何かです)。
皆が同じ行動をとっていれば,手がかりはほとんど何もないのですから。

休憩時間に自由な行動をとるようになれば,ある人は隣の人と話し始め,ある人は本を開き,ある人はスマホを眺め,ある人は窓の外を見て,またある人は気晴らしに体操をし始めるかもしれません。このように同じ状況下でまったく違う行動が観察されると,「もしかしたらこの人はこういう人かもしれない」という手がかりが増えていきます。

これは,質問をするときでも同じです。

あなたは人間ですか?
「はい」

この質問には全員こう答えるでしょうから,その人を判断する何の手がかりも得られません。

あなたは自分に自信がありますか?
「はい」
「そうですね…まあまあでしょうか」
「あまりありません」
「全然ないです」

このように回答がばらつけば,そこには何らかの個々人の違いが浮き彫りになるということです(「あなたは人間ですか?」に「いいえ」とか「あまり自信はありません」と答える人物もいないわけではないでしょうが……それはそういう答えが出てくることに何か意味を見いだせばありかもしれません)。

ところが,さらにここで大きな問題があります。それは,「それが正しい推測なのか」ということです。

目次

・面接マナー
・面接の実験
・伝わるのか
・決め手は好感度
・確認すること

面接マナー

考えてみれば,面接マナーや押さえておきたいポイントといったものは「個人差をなくす」方法です。

皆が同じようにはっきりと挨拶し,ノックは3回で,一礼して部屋に入り,「座ってください」と言われるまで座らず,部屋に入る前にスマホの電源は落とし,同じような志望動機を話し,大学時代の経験もそれほど大差なく,退室前にも一礼をして去って行きます。

一連の「しきたり」の中で行動がされると,どうでもいい些細な点が個人差となりそこが目立って個人が判断されてしまうかもしれません。

「みな同じような学生が来る」という印象から,面接内容を工夫したりグループで作業をしたり,なんとかして個人差が観察できるようにあれこれと考えるのではないでしょうか。

面接の実験

心理学者のギフォードらは,面接で何が伝わるのかという研究を行っています(Nonverbal cues in the employment interview: Links between applicant qualities and interviewer judgments.)。

https://psycnet.apa.org/buy/1986-10588-001

地元の新聞に,臨時雇用の研究補助者募集の記事を出し,38名の応募がありました。年齢は18歳から67歳,履歴も多様な人たちです。彼らは実際に面接に参加し,面接の様子は本人の許可を得てビデオに撮られました。このうち,面接のビデオがうまく撮れていなかったり,面接者と知り合いだった4名を除き,34名の面接ビデオが分析の対象となりました。

それぞれのビデオテープの内容を精査して,面接参加者が微笑んでいた時間,ジェスチャーをしていた時間,話をした時間,面接者の顔を見る程度,体の傾け方,身体的な魅力,服装のフォーマルさ,性別,年齢などが記録されました。

面接参加者は面接後に,仕事への動機づけと社会的スキル(うまく人に合わせる技能)の質問紙にも回答しています。

また別の18名の研究協力者が,面接のビデオだけを見て面接参加者の動機づけと社会的スキルを推測しました。この研究協力者は,数年間面接の訓練を受けた人たちなのだそうです。

このようなデータを収集することで,面接参加者の仕事への動機助の高さや社会的スキルの高さが,面接のどのような振る舞いを通じて見ている人に伝わるかがわかります。どのような結果となったでしょうか。

伝わるのか

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