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小説『少年と塊と、暗闇の中の火種』

 トビーは宇宙の舞踏会に生まれたわけではなかった。
 彼はガムボールのようにコスミックピンボールマシーンに放り込まれ、ボロボロの宇宙船「サザンクロス」の錆びた肋骨にしがみついていた。かつて祖母の夜話で聞いた星座は、今や虚無の永遠をあらわす光るネオンサインとなっていた。サザンクロスは空気が抜けたお祭り用の風船のようにしょんぼりと垂れて、誇らしかった船体は隕石の口づけで凹んでおり、トビーが体を伸ばそうとするとエアロックはガチョウのような苛立ちの音をたてた。トビーの仲間は、消えた両親の亡霊、寿命が尽きかけた生命維持装置のうめき声、それとグループという名の会話力のない塊(プクプクするだけ)しかいなかった。宇宙のウォンバットのようなものがトビーの空腹を物憂げに齧っていた。最後の宇宙ピザ(愛称は「宇宙の朽ち切ったピザ」)は1週間前に食べ終えてしまい、唯一の食べ物は苦しんでいる野菜の植物工場にあった。壊れかけた人工太陽の下で、しわくちゃのミイラみたいなトマトが生き延びていた。
「おまえは、もはや隕石の雨に打たれたチョコレートポットみたいに役に立たない」
 とトビーはぶつぶつ言った。最近の皮肉はすべて生気がなかった。

 ある日、レーダーにカクカクした小さな拍動が映った。トビーの胸の中の古びた願いの釘が軋み始めた。彼は通信パネルの前に走った。そこには数え切れないほどの点滅する電線があった。そして宇宙の幸運の神に祈りながら、トビーは遭難信号を送信した。返事はなかったが、やがてゴロゴロした音が聞こえてきて、壊れたラッパのような声が聞こえた。
「ああ、これは、バーソロミューブングルブレーンという名の船長、そしてきらきらスターフィッシュからの、ええと、信号です」
 その声は遠のいていった。
「そこに誰かいるのか? 宇宙の宝くじでも当たったのか?」
 湿り気の声を出して、トビーは言った。
「サザンクロスのトビーです。食べ物はありませんか?」
 小一時間の沈黙の後で、不安げな笑い声が聞こえた。
「食べ物ね?もちろんあるとも!宇宙カボチャの驚愕料理や脱水した宇宙ミミズがあるぞ!それはまさに宇宙の懐石料理だ!」
 きらきらスターフィッシュは、酷く咳き込んでいる鏡面仕上げのディスコボールのようだった。ブングルブレーン船長は、宇宙のアンテナのようにヒクヒクした襟ヒゲを生やした、むっちりとした男で、トビーに心から歓迎の意を示した。
「おぉ、若き宇宙飛行士よ、よくぞ来た!」
 彼は係留所でどなりながら言った。
「さあ、食べ物を取り、きれいな水浴びでも楽しもう。おまえはまるでゴミひと粒のパーティーに出ていたようだからな」
 トビーは、アイデンティティ混乱に陥っているかのような宇宙船に案内された。そこは点滅する光、ディスコボール、マッチョな人魚のホログラムポスターでいっぱいだった。彼は「宇宙カボチャの驚愕料理」(おそらく温めた緑色のドロドロ)を食べ、ブングルブレーンの終わりなき「宇宙の廃品回収業者」としての冒険話を聞かされた(それらの話は貴重な小惑星を迷い込んだというだけのことがほとんどだった)。しかし、トビーの胸には不安の種が芽生えていた。きらきらスターフィッシュは雑然と作られているように見えた。スパークルマクトゥインクルやキャプテンキャラミティーなどの名の乱雑な乗組員はナビゲーションよりも銀河間ビンゴのほうに夢中だった。そして彼らが目的地、伝説の「失われた領域」と呼ぶところについて話すと、トビーは何か恐ろしいものを探しているような気がして仕方なかった。トビーの疑惑は、たまたま機関室に迷い込んだときに確信に変わった。その部屋は焼けた油の臭いがして、機械はがらくたとガムでせっせと組み立てられていた。電線は危険に火花を散らし、ゲージは不規則に揺れ、コンソールに「注意!ムスッとした宇宙の小鬼の国へワームホールを開けたくなければ、これらをひっくり返すな!」と手書きのメモが貼ってあった。トビーは気持ち悪くなった気がした。彼は、ただ漂流しているだけではなく、実は能天気な船員たちに率いられ、災難に向かっているのだ。彼らに警告しなければならない。しかし、宇宙カボチャと幻想に酔いしれたブングルブレーン船長は、歴史的大発見の機にあると確信していた。
「トビー、わが子供よ」
 ブングルブレーンは宇宙のレンチをライトセーバーのように振りかざしながら言った。
「われわれは今に歴史を作ろうとしているのだ!失われた領域が待っている!栄光と富と、食べたい放題の宇宙えびを手に入れるのだ!」
 トビーは船長に機関の故障の危険性を説明しようとしたが、その言葉はブングルブレーンの大層な饒舌に取り潰された。必死になって、トビーはプクプクするグループを連れてサザンクロスに戻った。ボロボロの古い船はディスコボール型の化け物に比べれば避難所のように思えた。トビーは自身の限られた機械知識(壊れた宇宙トランシーバーをいじくり回したことから得た)を使い、サザンクロスのエンジンを再始動させることができた。それはスリングショット式の冒険で、未知の領域に飛び込むことになるが、ブングルブレーンの指揮下で破滅に向かうよりはましだった。サザンクロスが腐りついていた時、きらきらスターフィッシュはハイパードライブに入り、まるでムスッとした宇宙ドラゴンの臭い息のような煙を機関から撒き散らした。トビーはその光景を見つめながら、胃に不安の塊を抱えていた。
 彼はディスコボールの災難から逃れたが、やはり広大な虚無の中を彷徨っているのだ。 日々が週々と過ぎていった。サザンクロスの貧相な食料はさらに減った。トビーは硝子越しに果てしない黒を見つめていた。あの無関心な広大さはトビーをあざ笑うかのようだった。彼は、ほんの小さな存在に過ぎず、この宇宙の虚無に忘れ去られた物語でしかなかった。

 ある夜更け、レーダーの小さなきらめきがトビーを目覚めさせた。かすかな音に過ぎなかったが、確かにそこにあった。古びた願いの釘が再び軋み始めた。トビーは期待と恐怖を胸に、その音に向かってサザンクロスをナビゲートした。次第に信号の発信源が現れてきた。それは孤独な骸骨のようにくすんだ宇宙ステーションで、暗黒の中で浮かんでいた。そこは放棄された、失われた文明の記念碑のようだった。しかしトビーは必死の希望から、そこを調べることにした。サザンクロスを係留させることは神経を使う仕事だった。係留所は古いステーションの重みに耐え切れずに、がたがたと震えた。トビーは怖る気持ちも忘れてその中に入っていった。チラチラと点滅するフラッシュライトを手に持ち、用心深く進んでいった。ステーションの内部は、無数の廊下と埃まみれの部屋からなる迷路だった。壁には奇妙な透明な存在たちの渦を巻く姿が描かれていた。トビーは背筋に冷たい感触を感じた。この場所は間違いなく違和感があった。突然、低い響きがステーション内に鳴り響き始めた。その音は次第に高まり、やがてトビーの骨すらも振るわせるような 高pitched な音となった。そして、まばゆい光の渦の中から、ひとつの姿が現れた。細長く、月明かりのように輝く肌と、炭火のような目を持つその姿は、トビーを気味悪く見つめていた。
「ご挨拶するよ、旅人(トラベラー)」
 その姿は威厳を帯びた声で言った。
「おまえは自分の理解を超えた場所に迷い込んでしまった。時空を自在に操る場所なのだ」
 トビーはかすれた声で「な、何者なんだ?」と尋ねた。
「我らは『編み手(ウィーバー)』という存在だ」
 その姿は威力を込めて言った。
「宇宙の織り成す実在を操り、我々の思うがままに形づくっているのだ」
 冷たい恐怖がトビーの体を襲った。この広大な虚しさの中に、彼は一人でいたわけではない。彼の理解を超えた力が、そこにはあった。ひらめきひとつで現実を歪められるような力が。
「おまえに何を望むつもりなのか?」
 トビーはかすれ声で尋ねた。編み手は首を傾げ、燃え立つような目でトビーを見つめた。
「旅人よ、おまえには火種(ひぎり)があるのだ。何か...より大きなものになる可能性がある。我々はおまえが、いつか編み手となり、宇宙そのものを編み直す未来を見ている」
 トビーの心は混乱した。編み手になって宇宙を操るなんて?それは夢のようで、想像を絶する力に聞こえた。しかし冷静な部分では、あらゆる力には代償が伴うのだと警告していた。編み手は手を差し伸べ、測り知れない可能性を約束していた。トビーはその手を見つめた。この選択は重すぎた。そして、ふと祖母の顔が思い浮かんだ。しわくちゃの笑顔で、星座や流れ星の物語を読んでくれていた。トビーは夜空の広大な景色を見上げて感じた、あの驚きと畏怖を思い出した。それは今の自分が求めている感情そのものだった。編み手が差し出す冷たく計算された支配ではない。強い決意を胸に、トビーは首を横に振った。
「嫌だ」
 きっぱりと言った。
「確かに私は迷子で、ひとりぼっちだ。でも宇宙を支配したくはない。ただ、地球に帰りたいだけなんだ」
 編み手の姿が揺らめいた。炎のような目に驚きの色が浮かんだ。
「興味深い反応だ」
 と編み手は唸った。
「分かった、旅人よ。その逆らうその心根は、記録に残しておく。おまえにはまだ秘められた何かがあるのかもしれないな」
 渦巻く光の渦が脈打ち、やがて静まり返った。その姿は次第に消え去りながら、最後にこう言った。
「地球への道のりは見えていない。でもおまえのその火種があれば、導いてくれるかもしれない。さらばだ、旅人。星々の光があなたを照らし続けますように」
 そして編み手の姿は消え去った。トビーは虚ろな部屋の中で立ちすくんでいた。彼は宇宙の存在に逆らい、なおも生きていた。しかし、地球への帰り道はどこにあるのだろうか。トビーの絶望を感じ取ったかのように、グループはでっかい burp をした。この重苦しい静寂の中で、それはほっとするような音だった。トビーは笑った。奇妙にも明るく響く本当の笑い声だった。彼は迷子で一人ぼっちだったが、あきらめるつもりはなかった。
 それから数日間、トビーはステーションの中を探検し、何か役立つものを探した。そして埃まみれのデータアーカイブを見つけた。異星の言語と解読不能な記号の塊だった。しかしその中から、特異な星図を見つけた。知らない星座と、有りえない色の渦を巻く星雲と、「ターラ」と記された輝く場所へ細い点線が伸びていた。胸の中の古びた願いの釘が、ついに輝きを取り戻した。この星図は、荒廃したステーションからの贈り物か、はたまた謎めいた編み手の手引きかもしれない。それは地球への唯一の手掛かりだった。その科学は分からないかもしれない。しかし、この闇の中の道しるべなのだ。新たな決意を胸に、トビーはサザンクロスの簡素なナビゲーションシステムを使って、その異星の星図に基づいてコースを設定した。それは賭けに賭けた航海で、未知なる宇宙の領域へと向かう。しかし、これが彼の唯一のチャンスだった。サザンクロスが動き出すと、トビーは深呼吸をした。一筋の涙が頬を伝った。彼はほんの小さな存在に過ぎず、宇宙の海の中を漂流していた。しかし今は違う。行き先があり、目的があった。彼は地球へ帰るのだ。その旅路は遥かに長く、困難を極めた。異星の星図はトビーをあり得ないような風景へと導いた。内なる光を脈打つ渦巻く星雲、散らばった宝石のように輝くかれらの小惑星帯、果てしなく広がる真空の海。トビーは僅かな食料を節約し、生命維持装置の哀れな音とグループの時折のうっとりするような burp 以外の同伴者はいなかった。
 彼は予期せぬ危険に遭遇した - がらくたで作られた船を持つ無法の宇宙海賊、異世界のようなエネルギーで燃え盛る宇宙嵐、そして全ての既知の物理法則に反するかのように存在する、神秘的な発光生物との遭遇。しかし全ての困難を乗り越え、トビーは粘り強く前進した。サザンクロスの破損したシステムを修理し、金属のきしみ声と点滅する灯りの言葉を学んでいった。やがて虚無の静寂に慣れ、その広大さをある種の友人のように感じるようになった。ついに、永遠のように思えた時間の後、なじみ深い青い大理石が視界に入った。トビーの目に涙が浮かんだ。それは地球だった。かつて古びた写真やぼんやりしたビデオでしか見たことのない、故郷の姿だった。
 サザンクロスの着陸は、まさに機械工学の粋を極めた(そして大ぼらな幸運の賜物でもあった)。船体はがたがたと振るい、砂浜に骨々しく着地した。トビーは外に出て、潮の香りと海草の匂いに満ちた空気に満たされた。彼はついに帰ってきたのだった。トビーは振り返り、サザンクロスの傷だらけの船体を眺めた。この船は並外れた冒険の証しだった。単なる宇宙船ではない、広大な虚無の中での彼の友であり、家だったのだ。彼はグループのそばにひざまずき、この奇妙な小さな気泡切れ発生装置に、初めて感謝の気持ちを感じた。この仲間なくしては、この途方もない旅を成し遂げられなかったからだ。
 トビーの旅は彼を変えた。もはや彼は迷子の少年ではない。旅の疵を体に刻み込んだ、べテランの宇宙飛行士だったのだ。彼は奇跡的な風景、未知の存在との遭遇、そして宇宙の実在に逆らった経験を胸に宿していた。宇宙がいかに奇妙で驚くべきものであるかを、骨身に染みて知っていたのだ。しかし今は、馴染み深い地球の砂浜に立ち、波打ち際の音を長い奇妙な旅路の子守唄のように聴いていた。彼は家に帰ってきたのだ。そしてそれが、トビーにとって何より大切なことだったのだ。


END


※本作品は、Anthropic が開発した大規模言語モデル Claude によって自動生成された内容を編集させていただいたものとなります。

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