吸殻とミルキー
まばたきがカメラのシャッターのようになる瞬間というのがある。
行きつけのコンビニへ続く階段を上りかけると、雨上がりのアスファルトに煙草の吸殻とミルキーの包み紙が並んで落ちていた。
まばたきをする。
その画が脳裏にプリントされる。
バス停で246の果ての方に目をやり、遅れたバスを待ちながら吸殻とミルキーの画を鑑賞してみる。
『家で煙草を吸えないパパがこどもを散歩させながら煙草を吸った説』
「ちょっと、掃除機かけるからタカシ連れて外に行っててよ。」
休日の気だるいパパはなかなか靴をはかない息子にミルキーを握らせ、なんとなくコンビニまで歩く。このくらい許されるよな、と自分も一服。青空に向かい口を尖らせ機関車のようにその煙を吐く。ミルキーをしゃぶるタカシが246を行く車に気をとられて走り始め、驚き思わず吸殻を足で踏みつけて後を追うパパであった。
『社会人×高校生カップル説』
美容師のカレシの久々の週末休み。
ショッキングピンクのスカートを選んだカノジョは甘ったるいものがお好き。
待ち合わせに少し遅れてきたカノジョの手をとり、煙草を揉み消して、ひとまずGUでもひやかすことにするのであった。
『アリの散歩説』
雨上がりに巣の外に出た働きアリはすかさず甘い匂いを感知する。ミルキーの包み紙。
頭を突っ込んでその破片を探す。
ズ、ズ、と紙が移動する。
吸殻に衝突する。
なんだかほのあたたかい。
慌てたアリはとりあえず逃げてゆくのであった。
そこで、バスが着く。
私はそれに吸い込まれる。
世界は、物語であふれている。
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発行所:アトリエはなこ
著者:はなむらここ
💌:atelierhanaco@gmail.com
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