企業の社会活動を学ぶ!茶殻混抄紙を使った紙ファイル制作ワークショップ
このnoteでは、atelier grayでおこなったイベントについて詳しくご紹介していきます。
「atelier gray(アトリエグレー)」は、株式会社 加藤文明社が運営するいつでも相談できてその場で製作できる印刷アトリエです。ものづくりの場所としてだけでなく、工場見学やセミナーなどのイベントスペースとしても活用いただいています。
千葉商科大学との取り組み
2022年12月9日、千葉商科大学との工場見学会が行われました。加藤文明社では産学連携事業として、政策情報学部でエディトリアルデザインを学ぶ学生に対し、印刷工場を利用したワークショップを毎年実施しています。2020年からは、同学部で映像を学ぶ学生の手でオンライン配信もおこなっています。
例年「本ができるまで」をテーマに本づくりの流れをレクチャーしてきましたが、今年は「紙を通じて企業の社会活動を学ぶ」というテーマのもと、学生たちのオリジナルデザインで紙製A4ファイルを作成するというワークショップを開催しました。
紙ファイルは加藤文明社が環境配慮の取り組みとしてお客様にご提案している製品で、クリアファイルの形はそのままで素材を紙に置き換えたものです。クリエイターのグッズなど販売物としてご活用いただいているほか、書籍を製造する際に発生する印刷損紙を再利用した「リユース紙ファイル」は、出版イベントでのノベルティとしてもご活用いただいています。
今回のワークショップでは、さらに深く企業の社会活動を学んでもらうために、紙ファイルの素材も少し珍しいものを選びました。清涼飲料水メーカーの伊藤園さまと製紙メーカーの北越コーポレーションさま(以下敬称略)が共同開発した、「お茶入り印刷用紙」という混抄紙です。
混抄紙とは、紙の原料である木の繊維(パルプ)に異質なものを混ぜて作った紙のこと。「お茶入り印刷用紙」には、飲料製品の「お~いお茶」を製造した後に排出される茶殻が入っています。「お茶入り印刷用紙」はどうやって作られているのか、どうして清涼飲料水メーカーである伊藤園が紙を作ることにしたのか…ぜひ企業の方のお話を学生のみなさんに聞いてほしいと考え、開発元の2社様にもワークショップへのご協力をお願いしました。
すると「学生のみなさんが混抄紙や茶殻リサイクルを知るきっかけになれば」とご快諾いただき、千葉商科大学・加藤文明社・伊藤園・北越コーポレーションの4者による産学連携のワークショップが実現しました。
当日のレポートをお届けします。
印刷工場見学
工場見学会当日、印刷工場へやってきた千葉商科大学の学生たち。初めて見る工場の景色を興味深そうに眺めるみなさんの姿は、毎年恒例の光景です。まずは加藤文明社の紹介も兼ねて、オフセット印刷や用紙断裁、インクの調色などを一通りご案内。書籍やチラシ、リーフレットなどの身近な印刷物がどんな工程で作られているのか、制作実例もまじえながらお見せしました。
混抄紙を使ったワークショップ
工場見学のあとは、いよいよ今回のメインイベント、紙ファイルづくりのワークショップが始まります。
ゲスト講師として参加してくださったのは、伊藤園 特販部の魚谷昭彦さんと北越コーポレーション 洋紙・白板紙事業本部の細見忠史さんです。「お茶入り印刷用紙」について、開発企業ならではの貴重なお話をしてくださいました。
伊藤園の飲料製品「お~いお茶」を製造した後に排出される茶殻を混ぜ込んだ「お茶入り印刷用紙」は、消臭性があり、紙自体からふわりとお茶の香りがします。魚谷さんのお話によると、名刺120枚で「お~いお茶」の600mlペットボトル1本分が抽出された茶殻が使われているんだそう。混抄紙自体に初めて触れる学生のみなさんは興味津々です。
この紙を使って、学生一人一人のオリジナル紙ファイルを作っていきます。紙ファイルは、印刷⇒型抜き⇒折り⇒貼りという工程で作られています。まずは事前に入稿してもらったデータを使って、デジタル印刷機で印刷する様子を見学してもらいました。
印刷した後の紙は風送り機という装置に入れ、乾燥させます。学生のみなさんは代わる代わる機械の前に立って、お茶の香りがする風を体験しました。
その後ロータリーダイカッターという機械で型抜きし、学生の手で2つに折って紙ファイルの形に仕上げます。下の方を両面テープで留めれば、紙ファイルの完成です。
「お茶入り印刷用紙」の開発経緯
ワークショップ中、ゲスト講師のお二人には「お茶入り印刷用紙」についての詳しいお話をしていただきました。北越コーポレーションの細見さんからは、「お茶入り印刷用紙」の製造方法についてです。
紙はパルプを水に溶かして均等に延ばし、圧を掛けて乾燥させながら作っていきます。「お茶入り印刷用紙」の場合はこのパルプが層になっていて、上下のパルプの間に茶殻を挟むかたちで混ぜ込まれています。試しに紙の端からはがしてみると、茶殻のかけらがたくさん入っている層が現れました。
混抄紙について、「リサイクルになるからといって、何でも混ぜ込めるわけではないのが難しいところ」と語る細見さん。技術的な問題だけではなく、法律的に原料として使えるかどうかなどクリアしなければならないルールや手順が多くあるんだそうです。
そんな難しい手順を経て開発された「お茶入り印刷用紙」ですが、そもそもなぜ茶殻を使って紙を作ることにしたのでしょうか。伊藤園の魚谷さんにお話を聞きました。
伊藤園は「茶殻リサイクルシステム」という独自技術を確立し、お茶の製造工程で排出される茶殻を使い、いろいろな製品を協力会社と一緒に作っています。ただ茶殻をリサイクルしているというわけではなく、茶殻の機能性を活かして製品に新しい価値を生んでいるというのが大きな特徴です。
「お茶入り印刷用紙」も、消臭効果という普通の紙にはない価値を持っています。このように茶殻を通じて環境面・社会面で価値を生むことができるのは、他にはない企業価値になり、企業のアピールに繋がります。魚谷さんはこの取り組みを「アップサイクル」という言葉で紹介し、ぜひ学生に覚えてもらいたい言葉だとおっしゃっていました。
コラボレーションによる新しい学びとこれから
今回、伊藤園・北越コーポレーションの2社様にご協力いただいたことで、これまでの千葉商科大学との工場見学会にさらなる価値が生まれ、新しい学びの場を作ることができました。ご参加いただいた伊藤園の魚谷さん、北越コーポレーションの細見さんに、この場を借りて改めてお礼を申し上げます。
千葉商科大学では教育理念として『実学』を掲げており、実学とは社会に出てからも役に立つ学問を意味します。SDGsやCSRという言葉を知識として知っていても、実際の企業がどんな取り組みをしているのか、生の声を聞く機会はなかなかありません。
企業の生の声を聞き、自分の体験を通じて得た知識は、これから社会に出ていく学生たちにとって大きな学びになったと思います。
今回のワークショップを通じて、学生のみなさんはどんなことを感じてくれたでしょうか。混抄紙という特殊な紙に初めて触れ、自分の手で紙ファイルを作ったことは、ものづくりの大きなヒントになったはずです。今回のコラボレーションをきっかけに、これまでにない新しいアイデアが生まれるかもしれません。
わたしたちはこれからも、学生のみなさんの学びの場として工場見学会・ワークショップを続けてまいります。活動の様子はnoteやTwitterで発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
次の記事もお楽しみに。
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