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“ワクワク”を持って働くために。たった20日で生まれたアートなヘアサロン『ki.tone』

オシャレになりたい人、自分らしく輝きたい人が集まるヘアサロン。明るい接客と綺麗な姿で迎えてくれる美容師さんを見ていると、華やかな世界に見えるが、一方で泥臭く日々コツコツと練習し、多忙なスケジュールをこなす。誰もが憧れる世界だからこそ、そこで生きていくのは厳しく大変なこともある。

でも、どの道を選んだって大変だから、せっかくなら自分の好きなことで苦労した方がいい。ワクワクしないと人生もったいない!

そんな思いで人生を謳歌しているのは、愛知県東海市にあるヘアサロン『ki.tone』のオーナーである、新美憲一さんと、奥様のはなこさん。

今回は、atelier hito(以下、hito)と仕事をした『ki.tone』のお二人にインタビュー。お二人に店舗作りのエピソードや空間づくりへのこだわりをはじめ、組織としての働き方、考え方などを伺っていきます。

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新美憲一さん、はなこさん
美容学校卒業後、アパレルに就職。海外放浪一文無しになり帰国した後、美容師業界に入る。2014年に、1号店目となるヘアサロン『guka.』を、2017年に『LIL'』を創業。2021年に『ki.tone』を立ち上げる。物件好きで、お客様が建てる家の間取り図を見せてもらうのが趣味。


場所は愛知県東海市。名鉄太田川駅から約5分歩くと、『ki.tone』が入った建物が見える。外から見ると一見、小ぢんまりとして見えるが、中に入ると……

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あれ、思ったより広い?!ビタミンカラーのパーテーションに、丸い鏡……いい意味で美容院らしさを感じさせない、遊び心のある空間が広がっていた。


「まるで美術館のような、アート空間をイメージして作ったんです。今までの店舗は比較的シンプルだったので、ここは雰囲気も変えて、デザインで遊んでみたいなって」


そう話すのはオーナーの新美憲一さん。

そんな憲一さんを隣で支える奥様のはなこさんとともに、『ki.tone』ができるまでのエピソードやそこに込めた思い、今後の展望についてお話を伺った。


たった20日で完成?!まるで美術館のようなアートな空間

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ーー店内に入った瞬間、シンプルなのに細部まで可愛らしさが詰まった空間で、ここでおしゃれになりたい!って思いました。


新美憲一さん(以下、憲一):ありがとうございます(笑)!この『ki.tone』は今までの店舗にはない雰囲気にしたくて、挑戦したお店です。実はスケジュールがタイトだったこともあり、結構ハラハラしながら作りましたが……。

新美はなこさん(以下、はなこ):私たちの店舗3つ全てが4月20日にオープンしています。2店舗目の『LIL'』を作った時に、偶然にも1店舗目の『guka.』と同じ4月20日と同じオープン日にできたので、『ki.tone』は絶対4月20日にしたくて(笑)。(hitoの)岡島さんに無理言ってお願いしました。


ーーなるほど!そこはこだわっていきたい……(笑)。いつ頃にhitoさん達に依頼したのでしょうか?


はなこ:2020年の11月に初めてご連絡したので、ゆとりがあったはずですが……この建物が新築物件で箱となる建物ができるまで待ったので、工事開始は4月だったんです。


ーーつまり20日で作り上げたってことですね!?


憲一:そうなんです(笑)。これまで新築のテナントで展開したことがなかったので、予想だにしないハプニングが起こったりと、一筋縄ではいきませんでした。駆け足で作ったし、トラブルもあったのに、それでもhitoさん達は一つも嫌な顔せず真摯に向き合ってくれて、とても頼もしかったです。

はなこ:そうそう。時間がない中、急な対応が発生しても、「今から行きます!」みたいな。そういう風に対応してくださったので、すごく有り難かったです。


ーーatelier hitoはどのようにして知ったのですか?


はなこ:私がInstagramで見つけました。店舗立ち上げやリニューアル工事の度に、今までさまざまな工務店さんに依頼してきましたが、今までの工務店とは全然違う会社に頼んでみたいなと思っていたら、たまたまInstagramの発見タブにhitoさんの投稿が流れてきたんです。気になって他の投稿をみたら、すっごく素敵で!すぐに新美(憲一)に話して、打ち合わせに伺うことになりました。


ーーこれまでいろんな工務店さんに依頼したからこそ、hitoさん達はここが違ったという部分はありましたか?


はなこ:これまでの工務店さんは私たちのやりたいことを叶えてくれました。でも提案があまりなくて。私たちの理想像をつくってくれるけれど、理想像って自分たちの頭の中からしか湧いてこない。「そういうやり方があるんだ」とか、「こういうデザインの仕方があるんだ」っていうのは、あまりありませんでした。

でもhitoさんは、私たちのやりたいことを汲み取って落とし込んでくれるだけでなく、「それならこうした方がいい」と提案してくれました。あと、困った時にとりあえず岡島さんに言えばなんでも対応してくれたので、ものすごく安心感がありましたね。

atelier hitoからの建築的な推しポイント1

◆新美さんとの打ち合わせの中で生まれたコンセプト

「美術館のような美容室」

デザインを考える中で頭に浮かんだのは回廊式。しかしそれをすることで無駄な空間が生まれてしまう。そこでテナントの中に片廊下式のような箱を設け、入り口からの眺めはカット席だけが見えるようにしました。美術館を意識した全面白色の空間に。カット面だけは木板を貼りアクセントにし、そこへ円形のミラーを貼ることで一つの作品のように見せました。

今回こだわったもう1つのポイントが席同士の間にあるアクリルパーテーション。それはアート作品のように異形のアクリルを溶接しビタミンカラーでアクセントを入れています。この間取りとパネルの打ち合わせが一番時間をかけ打ち合わせしました。

全体的にも新美さんは信頼を置いてくれていたのでデザイン提案がしやすくとても洗練された空間へとなりました。

※回廊式:一つの空間をぐるぐると周る道筋のこと
※片廊下式:アパートに多く見られる廊下に面して片方にのみ部屋があること


ーーとても急ぎ足で作ったとは思えないクオリティです。特に気に入っている部分は何でしょうか?


憲一:色付きのアクリル板は「え!そんなことできるの?!」って驚きました。アクリル板をただ仕切りに使うんじゃなくて、こんな形や色使いで遊べるんだなって。

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はなこ:お客さまからは、「アクリル板があることで、周りの目を気にせずゆっくりできてよかった」っていう声もいただきますね。他にも鏡が丸くて可愛いとか、あと思った以上にレジカウンターが好評です。カウンター作りにおいてはあっさり決まったので意外でした。

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ーーお客さまからも内装について触れてもらえるのはうれしいですよね。逆に「ここはもっとこうしたらいい」といった改善点はありますか?


憲一:アクリル板と床の接続部分の隙間に、髪の毛が入ってしまうところですね。使ってみないとわからなかったので、盲点でした。

atelier hitoからの建築的な推しポイント2

◆アクリルの改善点

ヘアサロンにおいて髪の毛問題やカラー材による汚れ問題はつきもの。今回はパーテーションを脱着可能にしたため、隙間ができてしまいました。
それを防ぐ手法もあるのですが……機能性とデザイン性の両立は、オーナーさんとしっかり話し合うところですね。


ワクワクできないとやりたくない

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ーーここまで店内空間のことや、お二人のこれまでのことをお伺いしました。今度はこれからやっていきたいことについて、聞かせて欲しいです。


憲一:美容院にこだわらず、新しい店舗展開は考えています。ヘッドスパ専門店とか、カフェとかもいいなと。

はなこ:彼はたまたま美容師を手段としてやってるっていうだけで、極論面白ければなんでもいいっていうスタンスなんですよ。だけど、美容師という選択をしたからには、ストイックにとことんこだわってやる。そう決断した人だなって、私は側にいて感じています。

憲一:ワクワクできないとやりたくないんですよね。ただ楽しむのではなくて、すごく真剣に遊ぶみたいな。スタッフたちにもワクワクしながら育ってほしいですし、お客さんにもそのワクワクが伝染していくように、もっと発信していきたいと思っています。

というのも、美容師業界って昔からの働き方や考え方が根付いているところもまだ多く、大変な職業として世間から認知されているんですよね。


ーーたしかに美容師さんと話す姿だけを見れば華やかで楽しそうですが、裏ではめちゃめちゃ泥臭く練習して、売上を上げるために朝から夜まで頑張るみたいなイメージです。


憲一:そう、うちに入ったらもちろん忙しいし、体力も使うし、サービス業なのでお客様への気配りも必要です。でも美容師っていう職業を愛して、楽しんで、ワクワクして欲しいから、ポジティブな負荷をかけて成長できるような場を提供し続けられたらと思います。

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ーーお話を伺っていて、スタッフさんが成長できたり、気持ちよく働ける環境づくりを意識しているのだなと感じました。


はなこ:美容師という仕事なので、個性があっていい。でもチームなので、スタッフみんなで同じ方向を向いて進まないといけないと思っています。みんなのベクトルだけ揃えて、それぞれの正義を守る。


ーーたしかに接客はお客さまありきですし、マニュアルとして刷り込むって本質的ではない気がします。


はなこ:そうそう。お客さまへの寄り添い方は個々で決めていいし、全てがマニュアル通りにできることでもないんです。スタッフには自分の頭で考えることを大事にして欲しいと考えています。

なぜここにいて、何を価値としてるのか、何を生み出すことが仕事の本質なのかを考えて、その上で自由に伸び伸びと、何より仕事に対してワクワクして欲しいなと思います。そのための働く環境づくりを、私たちは精一杯取り組んでいきたいです。

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せっかく苦労するなら、自分がやりたいと思うことで苦労するのが理想ではないか。憲一さんがおっしゃる「ワクワクしないとやりたくない」ってくらいの度胸と熱い思いを胸に、新しいことに挑戦していきたい。そんな風にお二人の言葉は背中を押してくれました。


▽atelier hito 公式サイト



direction:atelier hito
writer:fujico

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