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不寛容なこの社会に生まれて。映画「すばらしき世界」

みなさんの今いるこの世界は、みなさんにとって「良い場所」ですか。
みなさんの大切な人たちにとってはどうでしょう。彼らにとっても「良い世界」ですか。

じゃあ、みなさんの知らない、全く関係ない、そこに存在している事に興味を持ちすらした事のない人たちにとってはどうでしょう。彼らにとってもここは、「素晴らしい世界」ですか。

今回ご紹介するのはこの映画

「すばらしき世界」

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一人の元殺人犯が、人生をやり直そうとする物語。あなたは、助けが必要な他者に手を差し伸べられるのか、そして、人を変えられるのは、人との繋がりでもたらされる暖かい愛だけだというメッセージが伝わってくる映画です。実在した男性をモデルに描かれています。

あらすじ

ある男が刑期を終えて出所した。彼は三上正夫。人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だ。頭に血の上りやすい三上だが、強面の見た目に反して優しく、理不尽な事を放っておけない性格。もう一度人生をやり直そうと悪戦苦闘する三上に若手テレビマンがすり寄り、ネタにしようと目論む。三上は再び居場所を見つけることができるのだろうか。三上と彼を取り巻く新たな人間関係は、どう絡み合っていくのかー。

キャスト(写真 上段:役所広司 下段:左から順に)

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三上正夫:役所広司
人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯。14歳で少年院に入り、以来暴力団と関わりを持ちながら生きてきた。
津野田龍太郎:仲野太賀
TVプロデューサー吉野に話を持ち掛けられ彼女とともに三上に密着する。
吉澤遥:長澤まさみ
やり手のTVプロデューサー。三上に密着しようと津田に話を持ち掛ける。
庄司勉:橋爪功
三上の身元引受人。妻と共に三上を暖かく見守る。短気な三上を宥める父の様な存在。
庄司敦子:梶芽衣子
勉の妻。夫と共に三上に寄り添う。
松本良介良介:六角精児
近所のスーパーのオーナー。三上がまっとうな仕事に着くことを陰ながら応援し助言する。
井口久俊:北村有起哉
三上の再就職を担当するケースワーカー。行政の限界を感じながらも、三上の再起をなんとか実現しようと向き合う。
下稲葉明雅:白竜
三上が頼ろうと尋ねる九州の暴力団の頭。
下稲葉マス子:キムラ緑子
明雅の妻。三上が暴力団に戻る事を止める。
西尾久美子:安田成美
三上の元妻。現在は再婚し娘がいる。久美子を守った事により三上は殺人を犯してしまう。

原作:「身分帳」 作:左木隆三

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佐木さんといえば、日本を震撼させた様々な事件を追った著書を多数執筆された作家です。特に「復讐するは我にあり」をご存知の方は多いのではないでしょうか。

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◎自分の居場所ってどこかな。あるのかな。見つかるのかな。

人は皆、自分の居場所が必要です。あなたは存在して良い、という証明として。けれど一度間違えた人間を受け入れてくれる場所は、この社会にはそうそうありません。「不寛容な社会」ー。西川美和監督の言葉を借りると、今の社会はそういう場所。

前科者である三上は出所後の生活に苦労します。前科があるから就職できない、お金もない、体調も優れない。何もかも上手くいかなくて我慢ならない。頼れる人は結局ヤクザの知り合いだけ。三上の様な人が居場所を見つけられなかったら、また過ちを犯してしまうかもしれない。では何が必要なのか?それは、人との暖かな繋がりなんですね。悲しみにも、憎しみにも、愛でしか立ち向かえないのだから。


◎誰かに優しくすること、それは自分を幸せにすること


三上の様に一度レールを踏み外してしまった人を、社会はどう受け入れる事ができるのか。居場所を与える寛容さを持ち合わせているのか。自分にとってのみ居心地の良い場所にするのではなく、助けを必要としている他者に暖かな手を差し伸べる余裕を持ち合わせているのか。

そんな問いを投げかけてくる作品です。

自分以外の誰かの為に何かをする事、それが如何に幸せを与えてくれるかを、私は客室乗務員というお仕事を通じてよく知っています。一見他者の為の行為が実は自分自身の幸せに繋がっていて、私がこの世界にいる意味を与えてくれていました。お客様を笑顔にしていたつもりが、実は私が笑顔と幸せを頂いていたんですね。そう思える事がたくさんありました。

三上がいっその事もう一度ヤクザの世界に戻ろうとした時、下稲葉の妻が必死に止めてこう言います。

「シャバは我慢ばっかりだよ、楽しいことなんかそうないけど、でも、空が広いっていうよ」ー。

誰かの為を思って心から発した言葉は、素敵です。本当に相手を思ってする行為は、必ず届きますよね。根底に愛があれば。愛は目に見えなくても、必要な時にきっと見えて来ると信じています。

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◎このすばらしき世界を、優しい場所にしよう

最後に、この作品にむけてAlexandrosの川上さんから寄せられたメッセージを紹介しましょう。このメッセージ、すごく好きです。やわらかくて優しくて。こういうまぁるい言葉を互いに掛け合えれば、世界はもっと優しくなるのでしょうか。こんな風に言葉を使える人になりたいものです。

"生きてる理由がわからないまま生きていいのかな?
と戸惑う昨今
息をして飯が美味ければ
それで良し
そう言われた気がした
ラッキーなんだよね我々は
つべこべ言わず
わがまま言ってないで
生きろよ

川上洋平([Alexandros])映画公式HPより"