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教えて下さい。これは愛ですか。偽物ですか。誰ならわかりますか。映画「ファーストラヴ」

みなさんは、傷ついたことってありますか?
その傷を今でも、心のどこかに隠していたりしますか?
それでその傷が痛んで、人知れず泣いたりしたことはありますか?

今回は急に質問から始めてしまいました。なんだかとってもそう聞いてみたかったので。無性にそう聞いてみたくなったので。この映画を見た後に。今回紹介する映画は、島本理生さんの小説が原作の「ファーストラヴ」。 「傷ついてしまっていても、あなたは大丈夫だよ。また歩き出せるよ。」そんな風に語りかけられているような映画です。

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あらすじ
女子大生、聖山環菜が父親を刺殺した。「動機はそちらでみつけてください」環菜は取り調べて挑発的な発言をし、世間を騒がせる。公認心理士の真壁由紀は、環菜に取材を始める。環菜と向き合うにつれ、由紀は環菜が隠す心の傷に気が付くが、それは同時に自身が胸の奥にひた隠しにしてきたある記憶を蘇らせることになるー。


登場人物

真壁由紀:北川景子
公認心理士。夫は写真家の我聞。環菜の取材を進めるにつれ、環菜と自分を重ね合わせるようになる。幼い頃、海外で買春する父の異常な視線に怯えながら育った過去を抱えている。

聖山環菜:芳根京子
女子大生。有名な画家であった父を刺殺。思春期の頃に父の主催するデッサン会に強制的に参加させられた事がトラウマになる。母にも守って貰えず、リストカットを繰り返すようになる。

庵野迦葉:中村倫也
環菜の弁護士。幼い頃に母が出奔。由紀の夫、我聞の実家に引き取られる。母の愛を知らずに育った為、母の面影を求めて空虚な恋愛を繰り返す。大学生時代に由紀に振られた過去がある。

真壁我聞:窪塚洋介
写真家。由紀の夫。由紀と弟の過去は知っているが、全てを理解して由紀を包み込む。

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◎ファーストラヴってなんですか。

みなさんは愛って何だと思いますか?
自分は本当の愛を知っていると思いますか?
心から愛された事があると自信を持って言えますか?

よく思うのですが、愛が何なのかを知ってる人はどれくらいいるのでしょうか。恋とか好きじゃなくて、愛。愛って何だろうって真剣に考えたり、これが愛だと確信を持てた経験てありますか?この世界には愛が絶対的に足りなすぎるような気がしているのは私だけでしょうか。

映画では、愛が必要だったのにもらえなくて、愛だと信じたかった何かが愛では無くて、傷ついてしまう登場人物が多く出てきます。

これは愛なのか。愛では無いのか。
正しく愛をもらって育っていなかったら、本当の愛がどれかがわからないんです。でも辛くて、救いが必要だから、本物かどうかわからなくてもしがみついてしまう。それが更に自分を傷つけるとも知らずに。

まだ愛を知らなかった頃に初めて知った、愛だと思った、愛だと思いたかった、愛。この映画のタイトルは、そういう意味の”ファーストラヴ”なのかなあと思いました。

なんでしょうね、”ファーストラヴ”って。

「愛されたい」「救ってほしい」
そんな叫びが聞こえる映画です。

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◎救いってなんですか。

常々感じるのは、
救いを他者に求めているうちは、人は救われないのでは、という事です。

人は大なり小なり心に傷を抱えて生きているはず。傷が一つも無い人なんていないんじゃないでしょうか。傷ついた経験があるから他者の痛みがわかるとも言える。その傷から救ってほしい、辛い環境から助け出してほしい、もっともっと愛して欲しいー。そう思って、誰かに救いを求めるのは自然な事。

でも不思議と、救済を他者に依存しているうちって、上手く行かないんですよね。

救済を求めやすいわかりやすい形って恋愛だと思います。自分以外の他者とまるで家族の様な関係を目指せるシステム。でもね、悲しみで繋がる恋愛は本当に上手く行かない気がします。依存するから。依存されて、自分以外の誰かを背負って、二人分の人生を扱っていくなんて、本当に大変なんですよ、依存された方は。辛うじてそれに耐え得る可能性があるのは、「きちんと愛を貰って育ってきた人」、由紀の夫の我聞みたいな人だけです。けどそういう人だったら依存していいってわけじゃないから。なぜならみんな自分の人生があるから。ずーっとずーっと誰かをおんぶして歩き続けるのは限界があります。

救いを他者に求めているうちは、環菜のように偽物を掴む危険性が高い。迦葉だってずっと数をこなす恋愛ばかりで、本当の恋愛を出来ずにいました。「自分の足で立てる」「自分一人の力でもhappyでいられる」「自分で自分を輝かせられる」そう確信できた時、自分で自分を支える第一歩を踏み出せた時、人は初めて本物の愛に出会える気がします。その愛は恋愛の愛だけじゃない。自分の傷をさらけ出して傷と向き合えた環菜が出会った愛は、自分と真剣に向き合おうとしてくれた由紀からの愛でした。初めて知った本当の愛、それもまた”ファーストラヴ”ですね。

愛って、身内とか異性から貰うものって漠然と思ってしまいがちですが、ちょっと顔を上げて周りを落ち着て見渡してみると、それだけじゃない。見ず知らずの誰かからの何気ない優しさに気付けた時、その中に愛を見いだせるはずです。「女性が女性を救う物語を書きたかった」と原作者の島本さんも語っていましたが、血縁とか色恋とか無しの他者からの、自分を生かしてくれるような愛だってたくさんあるんですよね。

もちろん自分の傷と向き合う為に、他者の力を借りる事は良い事です。由紀のようなプロの心理士さんとか。カウンセラーとか。自分ひとりじゃどうにも扱えない傷もあります。そういう時は素直に人を頼りましょう。それは依存じゃないですから。傷と向き合いたい、なんとかしたい、という自発的意欲があるなら、それはもう自分の足で一歩を踏み出せているってこと。あなたは大丈夫だよってことです。

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◎まとめ:今とても傷ついているかもしれない人に見て欲しい
もし今悲しい思いをしている人がいるなら、一度見てみて欲しい。その悲しみに、心の傷に、優しくそっと手を当てて癒してくれるような映画です。あなたは一人じゃないし、きっと本当の愛に出会えるし、大丈夫だよ。そんな優しいメッセージがある映画です。

ちなみに本とは少し設定も変わっていますので、ぜひ本も合わせて読んでみてください。あとUruの主題歌も。そっと目を閉じて、歌詞をちゃんと思い浮かべて、聞いてみてください。あなたと出逢って、初めて愛を知ったよ、って心から言えるような人生を歩める人が、たくさんたくさん増えるといいなと思います。