HACCPを上手く使うために⑩ ~手順2 製品の記述 製品の規格ってどこまで考える?~
こんにちは! あたたけ です。
引き続きHACCPの話、『手順2 製品の記述』について
製品仕様書の記載項目を順に見ていきましょう。
⑤製品の規格(成分規格、自社規格)
製品の規格としては、次のようなものがあります。
製品の記述では、何から何を作るのか、スタートとゴールを示すのですが
そのゴールが『製品の規格』にあたります。
で、この製品の規格は『成分規格⇒自社規格』と分けて、
順に整理するとわかりやすい(混乱しにくい)と思います。
ではまずは『成分規格』から。
『成分規格』という表現が適切かは迷うところですが、
『法律や衛生規範で定められた基準』と捉えてください。
公に示されている最低限の基準となります。
HACCPに関する資料・教科書にまとめられていることが多いので
それらを参考にすれば大丈夫です。
『食品 規格基準』とかで検索してもすぐに出てきます。
ただし、すぐに出てくる資料は『日本全体での基準』がほとんどです。
各自治体の条例などで基準が定められていることもあります。
迷ったら、『保健所に相談』が確実ですね。
さて、この『公的な基準』ですが、
これを守れば食品事故は防げるのでしょうか?
一例をあげますと、『弁当及びそうざいの衛生規範』には
次のような基準が示されています。
製品のうち、サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、
検体1gにつき細菌数(生菌数)が1,000,000以下であること。
細菌数(生菌数)というのは、簡単に言うと『汚れの指標』です。
当然、汚れがヒドイと食中毒の可能性は高くなりますが、
ここ数年の食中毒は『菌数が高くなくても起こるもの』が多い、
つまり、細菌数の基準はOKでも食中毒は起こりうるのです。
なので、成分規格に上乗せする形で、自社規格を定めることが多いです。
ちなみに、『取引先規格』というものもありますが、
取引先にとっては自社規格であっても
自分たちにとっては成分規格と同じレベルのものだとお忘れなく。
では、自社規格はどのように決めれば良いのか?
実は、これはとても奥が深い問題だと思います。
ゴール(製品の自社規格)を決めるには、
スタート(原材料)や道のり(製造工程)で
規格から逸れるどのような要因(≒ハザード)があるか
理解する必要があります。
であれば、『ハザードに対してそれぞれ基準を決める』のが
自社規格のあるべき姿だとわかります。
一方、HACCPの後の手順、『手順6・原則1 ハザード分析』では、
『食品事故の可能性として考えられるハザードを全て挙げる』のですが、
ここで挙げたハザードと、製品の規格がすり合っていないことが多いです。
まず、一つ目の難しいところが、
『重要なハザード全てに対し、製品の規格を決めているか』
ということです。
研修などで、ハザード分析の際
『ハザードは全て、微生物はそれぞれ別に挙げろ』と言っておきながら
製品の記述ではそこまで細かく話をしない。
結果、『このハザードって、どのレベルまで管理するの?』という
とても大切な疑問がほったらかしになり、
『よくわからん』となるわけです。
で、これを解決しようとして、
『あらゆる食中毒菌が陰性(≒いない)』とかにすると
二つ目の難しいところ、
『製品の基準が達成されていることの確認(≒検証の一部)が出来るか』
という問題が起こります。
検証できない基準って、
守れていなくても誰もわからない、
わからないから守る必要がない基準ってなりますからね。
ハザードへの理解が深い方にとっては、
『そこまで細かく製品の基準を決めなくてもわかるでしょう』と
なるのかもしれませんが、
『そこまで基礎知識を持っている人が大半だと思うな!
そんなに簡単に知識がつくと思うな!』と声を大にして言いたい!
あと、薬剤とか硬質異物の混入なんかも同じですね。
『ダメなこと・目指すところ』という大切な情報を
『暗黙の了解』という誤解を生むもので終わらせず、
『入っていないこと』とキチンと示す方が
HACCPチーム、で共通認識を持つためには良いのかなぁと思います。
少し見方を換えると、
『全体では一定の知識があっても、個々の知識にはバラツキがある集団』
で何かをする際には、全員で共有すべきことはキチンと示すことが大切、
と言えるかもしれません。
実際は、製品の記述の段階ではハザードを想定しきれないことが多いです。
ですので、ハザード分析の結果として、
製品の規格で示していないハザードが上がってきた際には、
必ず、製品の規格を見直すということをお忘れなく!
※この辺りは、ハザード分析(もしくはハザード自体)の回で
あらためて考えていきます。
『ハザード分析から製品の規格を見直す』ということで。
ちなみに、『ハザードをある程度まとめる』のが良いと考えています。
⑥保存方法・期限・配送方法
これらの項目は、
『⑤製品の規格を満たした場合、その後、何に気をつければいいか』
を示す項目です。
言い換えれば『ゴール後の注意点』となります。
なので、HACCPプラン(≒スタートからゴールまでの注意点)を
考える上では製品の規格(ゴール)ほど重要ではないのですが、、、、
製品設計や開発のことを考えると、
『製品の規格に基づき保存方法や期限等を決める』というよりも
『製品設計(品質)の一つとして、販売条件・配送条件を踏まえ、
保存方法や期限が先に決められ、それを満たすための規格を決める』
ということが多いのかな、という気がします。
そう考えると、保存検査というものは、『期限設定』が目的ではなく、
『製品の規格の妥当性確認』が目的なのでしょう。
(まぁ、やることは同じですけどね)
ここまでが製品仕様書の記載項目の内、
『手順2 製品の記述』に関する項目です。
『手順3 意図する用途』については次回にします。
ということで、今日の一言です。
『製品の規格は、製品のゴール。
ゴールが見えていないと、普通の人は不安になって足が止まる。
足を止めないためには、誰にでもわかるレベルのゴールを示す。』
それでは、今回はこの辺りで!
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