オンライン時代の “伝わる”文章コミュニケーション
これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2020 18日目の記事です。
実家に住んでいたころ、家族の洗濯物をたたんで各タンスに振り分ける役目を担っていた私は、家族からたびたび「私のブラウスは?」「俺のグンゼは!」などと、まるで盗人かのように洗濯物の行方を問い詰められることがあった。
ある日、お気に入りのタートルネックを探していた母が、例外なく尋問するテンションで迫ってきた。
「タートルネックのお母さんどこ?!」
心のなかで「それはあなたや」と思いながらも、母が洗濯物のタートルネックを探していることは想像にたやすいので正すことはしなかった。
・・・
こんにちは、フェンリルでコピーライターをしている高島です。
この記事でお伝えしたい内容の“まくら”として、母の言い間違いを例に出してみました。
ここまで極端ではないにしろ、文章の組み立てや言葉の選び方を誤ると、こちらの意図を正しく伝えられないことがあるよ。ということを、書いていきたいと思います。
文章でのコミュケーション
文章で想いを伝えることは多くの人にとって身近なコミュニケーションの手段であり、職種に関係なく必要なスキルのひとつだと思います。
そして、リモートワークの推進によってチャットやメールでのやりとりが増えている今、これまで以上に文章のコミュニケーションが重要になっていると感じています。
日々の業務において、文章のコミュニケーションを円滑にするためのコツはいくつかあります。
もったいぶらずに ずばっと言っちゃおう
分かりにくい文章になる特徴のひとつが「まわりくどさ」。
「なんか色々書いてあるけど、結局なにが言いたいの?」と感じる文章はたいがい、結論が後回しになっていたり、伝えたいことが整理されずにだらだらと書かれていたりします。
たとえばこんなメール。
先方からフィードバックをもらいました。12/20にアポイントを取っています。先方は2名参加で、こちらは3名、もしくは4名で伺うことになりそうです。資料を修正して準備しておいてください。
してほしいことは「期日までに修正した資料を人数分準備する」だけなのに、アポイントの日程や、あやふやな参加人数の連絡を経て、やっと本題です。いつまでに何部必要なのかも、読み取りがむずかしい。
必要な情報だけを残すと、こんな感じになります。
先方のフィードバックを修正した資料を、12/19中に6部準備してください。
指示が明確になりましたね。ちょっと極端な例になってしまいましたが、思いつくままに書き連ねるのではなく、「伝えるべきことを整理できているか」、送信ボタンを押す前にすこし見返してしてみてください。
あらためて見直したい5W1H
学校の授業やビジネス研修などでよく登場する『5W1H』。
Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)
文章構成の基本といえるもので、今さら意識することはあまりないかもしれませんが、当たり前のことすぎて抜け落ちてしまっていることはないでしょうか。
私は、社内のスタッフに対して取材を申し込む機会が多々あります。(採用目的のメディアや社内報などの用途で)
たとえば、このように取材依頼メールを送ったとします。
社内報の企画で●●さんの業務内容に関してオンラインで取材をさせていただきたいのですが、●月●日にお時間をいただけませんか?
「社内報の企画で取材をしたいと伝えている」「オンラインで、と方法を提示している」「日時の指定もしている」ことから、不足のないように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に自分がこのメールを受け取った場合を考えてみてください。
・どういう企画なの?
・どうして自分が選ばれたの?
・業務内容ってどんなこと?
・取材って何を聞かれるの?
など、当事者になってみると気になることが出てくるはず。
上記のメール内容では、『What(なにを)』『Why(なぜ)』の部分が不十分で、相手に意図が正しく伝わらなさそうです。
一度で必要な情報を伝える
メールを受け取った相手が「どういうこと?」と考える時間、疑問点をまとめてメールを作成する時間、返信を待つ時間、トータルで相手の時間をどのくらい消費させてしまうでしょうか。
依頼メールの時点で、「なにを」「なぜ」の部分をきちんと伝えておけば、無駄な時間をかけさせずに済んだはず。
上記のことを踏まえて、以下の内容でメールを作成しました。
社内報の取材依頼でご連絡いたします。次回の社内報で、社内でのユニバーサルデザインの取り組みを紹介する企画があり、勉強会の開催や社内の普及に努めていらっしゃる●●さんにお話を伺いたいと考えています。日頃の業務にどのようにユニバーサルデザインを取り入れているのか、社内のスタッフに意識してほしいことなどを中心に、オンラインで取材をさせていただけないでしょうか。取材日は●月●日に予定しており、ご了承いただける場合は追って詳細をご連絡させていただきますので、ご検討お願いいたします。
どうでしょうか?
<なにを>ユニバーサルデザインのことについて
<なぜ>この内容に造詣の深いあなたに聞きたい
ということを書き加えることで、受け取り手の「?」はおおかた解消されるはずです。
(冒頭に「社内報の取材依頼でご連絡いたします。」と書いたのは、先述した『結論を後回しにしない』を実践したものです)
また、もう一つのポイントとしては、『情報を精査して伝える』ということ。メールを送った時点では、まだ相手が取材を了承してくれるかどうか分からない段階なので、取材内容の連絡は最低限に留めておいて、文の末尾に「ご了承いただける場合は追って詳細をご連絡させていただきます。」と加えています。
これも、時間を無駄にしないための配慮なのですが、依頼の段階から長々と詳細を送ってしまうと、相手が全て読むのに時間がかかってしまいます。また、取材を断られてしまった場合、長いメールを作成した自分自身の時間も無駄にしてしまうことになります。
相手の時間も、自分の時間も有限。ということを意識することで、結果的にスムーズなコミュニケーションが生まれると私は考えています。
ポジティブな表現で伝えよう
円滑なコミュニケーションのためにも、お互い気持ちよく仕事をすることを心がけたいものですよね。それは、日々の些細なやりとりでも実践できます。
打ち合わせを設けたくて、相手に時間を指定して聞いてみたところ、以下のような返信があったとします。
14時まで会議あるので、その時間は参加できません。
もし私がこの返信を受け取ったとしたら、ばっさりと切られた感じがして、ちょっとだけ心が折れてしまうかもしれません。
では、以下のように返信がきたらどうでしょう?
14時までの会議が終わった後は、時間をつくれます。
「できない」で終わるのではなく「こうすればできる」と、ネガティブな表現をポジティブにすることで、相手に与える印象がぐっと変わります。
このように、「〜できません」「〜しないでください」など、否定や禁止にあたる言葉で締めくくるのは、意図せず悪い印象を与えてしまう可能性もあるので、肯定の表現に言い換えることができないか考えてみてください。
相手のことを考えて文章を書いてみる
伝わる文章を書くポイントはまだまだあるのですが、全てに共通しているのは「相手のことを考える」ということ。
限られた時間のなかで端的に伝えることも、ポジティブな言葉で伝えることも、相手への配慮があれば自然に実践できるはずです。
「"いい人"であれ」ということを言いたいわけではないですし、それぞれのパーソナリティに合ったコミュニケーションの方法があると思います。
また、相手との関係性や仕事内容によっては、そこまで意識しなくてよい場合もあります。
ただ、オンラインでのやりとりが増えているからこそ、「相手にやさしい気持ちを持つ」ということを大切にしたいな、と思う今日この頃です。
ブランディング部 コピーライター:高島