直接会ったことも話したこともないアイドルの彼らへ
J事務所のアイドルオタクは必ず買ったことがあるだろうアイドル誌。
まもなく大学卒業を迎え、近いうちに引越しが決まっている私は、山積みになっている雑誌たちを解体し、推しのページを切り取って保存する作業を行っている最中である。
約3年分溜まっていたため、懐かしさのあまり手を止めてついつい読み入ってしまう。
そこで思ったことが
「異性愛前提の恋愛系質問多すぎない?!」
である。
女性の好みの髪型・メイク、結婚相手の条件などなど、とにかく異性愛至上主義に溢れている…。
この界隈は女性ファンがかなり多いし、恋愛・性愛的な好意を持って応援している人もいる。
実際、ドル誌が発売されたらTwitterではその話で盛り上がるし、出版業界が不調な中でも売れ続けているから、それなりに需要があるのだろう。
それでも私はモヤモヤしてしまう。
もし、アイドルの中に異性を好きにならない人、恋愛やセックスが分からない、興味を持たない人がいたら、彼らはどんな気持ちで日々答えているのだろうか。
私はアセクシャルを自認している。
性的欲求を他者に向けることはなく、行為にも興味がない。
恋愛感情もよく分からず、誰かを恋愛的な意味で好きになった経験はほとんどない(アロマンティックスペクトラムの一種に入ると考えている)。
統計によると私のような性的指向を持つのは全人口の1%らしい。超レアキャラ。
アセクシャルという言葉を知るまでは、自分がマイノリティだなんて一度も思わなかったし、周りにもセクシャルマイノリティはいないと思っていた。
でも、当事者は、周りの多くの人間からは見えないだけでずっとここにいる。世界中のアイドルの中にも必ずいるだろう。
日本は同性婚が合法化されておらず、かといってパートナーシップ制度では異性愛者カップルよりも制限されることが多い。
介護制度も完全に家族がいることを前提に作られていて、独身者の老後は安心できない。
社会が異性愛・家族前提だと、それらは個人の価値観にも影響する。
「恋愛経験ないんだ、もっと自信持ちなよ!!
そんなんだから彼氏できないんだよ。」
「結婚して子供持つのが普通だよね。」
これは私が今までに周りから散々言われてきた言葉だ。
「異性と恋愛して結婚して、子供を持つのが当たり前で、そうじゃない人生を辿る人間は難アリ」
そんな価値観が日常に溢れる現代を静かに生きている。
アイドルのセクシャリティは、彼らがカミングアウトしない限り、一生分からない。
私がしている心配だって杞憂でお節介なことかもしれない。
それでも、悩みや葛藤を表に出すことなくステージに立ち、ポーズを決めて雑誌に載る彼らの心のその奥を見ようとして、
無理をしていないか、自分を押し殺していないかと勝手に心配してしまう。
疑似恋愛商法も多いアイドル界だ、全てが変わることはないだろう。
でも、言葉の使い方や思い込みなど、小さなことだがそれを変えるだけで、ステージで輝く誰かがきっと少しは救われるのだと思いたいし、そうなってほしいと願っている。
どうか、直接会ったことも話したこともないあなたが少しでも心穏やかに過ごせますように。
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