見出し画像

「私が証明書だ」みたいな

有休の消化が終わり、先週金曜で正式に退職となった。
平日の今日から正真正銘の「無職」である。
仕事をしないという点では、有休期間と変わりないのに、なんだか奇妙な解放感がある。

これまでは、大きな地震や台風が来たとき自動的に「安否確認」が行われていた。
登録してある2か所のメアドに、会社から安否を問うメールが届いて「無事」と「いつから出社できるか」を返信する。
しかし、もうそれもない。

南海トラフの注意情報は15日に解除ということだが、だからといって活動が収束したわけではない。
そもそも巨大地震といえば南海トラフという刷り込みが強くなったことに不安がある。
実際、神奈川県を震源とするのが来たし。
安否を確認してくれる機会が減ったのは、正直すこし淋しい感じもする。

先月の受診時、うっかり次回の予約を8/15に入れてしまった。
通常なら、というか私が処理するなら(長く人事部にいるので)、退職者には退職日の翌日「健康保険資格喪失証明書」が手元に届くように手配する。
在職時に使用していた保険証を返送の依頼文と返信用封筒も同封する。

でも、いまお盆なのだ。
会社は一斉休暇ではないけれど、担当者は休みを取るかもしれない。
念のため、先週のうちに確認のメールをしたら、やっぱり15日まで休みということだった。
休暇中は別の人が処理をするのかと思いきや、休みが明けてからやりますとのこと。

すぐに加入手続きに行かなくても、後日、退職日の翌日まで遡った日付で国保の保険証が発行されることは承知している。
もちろん、保険料も遡って徴収される。

退職と同時に会社の社会保険資格を失い、国保の保険証もまだ作っていない時点で受診したなら、いったんは10割負担の実費を支払い、後日国保の保険証が手に入ったら病院に請求に行けば、7割分は戻ってくる。
あるいは、同月内であれば、病院が請求先の変更をしてくれるので、それを前提に3割負担額の支払いでOKとしてくれる場合もある。
いずれにしても、退職者が無保険になることはないし、損もしない。
それはわかっている。
しかし。

こういうとき、私はできることは一通りやってみずにはいられない。
私の退職を扱う事務担当者はお盆休みだが、一応、部門の代表アドレスにメール。
「担当者にご連絡ください」だって。
その人が休みだから、そっちに聞いてるんだよ。
読んでないのか、中身まで。

市役所に電話。
「遡って発行するから大丈夫」というすでにわかっていることを教えてくれる。
喪失証明書がないとダメというのは、それはそうなんだよね。
そういう決まりになっている。
答えを承知でかけたのは、それが私の手順だから。
次のステップに進むための。

そして、今朝一番、役所に行ってきた。
歩いても40分くらいなのだが、外に出たとたん、あまりの暑さに、ここは素直に電車に乗ることにした。

会社の保険証の返送願いだけは9日に届いていた。
退職者を対象としたテンプレ文書。
まんまテンプレだから、宛名も日付も書いていない。
私だったら、宛名を入れて、いついつ退職に付きというのを付け加えるけどね。
年寄りの愚痴めくけれども、なんだかもろもろ「雑」なんだよなぁ。

契約書のPDFをプリントアウトした。
これでいつまでの契約かがわかる。
そして、だめもとで市役所に行ったわけだ。

国保の保険証が確実に手に入ってからということで、診療日を後ろにずらしてもらうことも考えたのだが、思いついたのが先週で、すでにクリニックは夏休みに入っていた。
このクリニック、お盆に続けて2週間の休診である。
私が予約している15日が休み明けの初日。
もう連絡がつかない。
それであきらめざるを得なかった。

「喪失証明書を出す担当者が夏休み中で、明後日の診療に間に合わないんです」と正直に訴える。
相手が「一旦10割負担で」の話を出す前に、退職日の明記された契約書と「退職したから会社の保険証を返して」の文書を見せる。
ね、ね、ね、私、退職してるでしょ。

最初、窓口にいたのは若い(私から見ればみんな若いが)職員さん。
写真付きの身分証明書をと言うので「マイナンバーカード」を見せた(見せるだけ)。
それらを見比べて、困惑したような表情でバックヤードに相談に行った。

ややあって、ちょっとベテランっぽい職員さんが代わって登場。
ここに(契約書に)書いてある人に、お電話をして退職日を確認できたら、いま国保の加入手続きができます、と言う。
ですよね。
だから来たんです。

でも、そこに記載されている担当者は休みなのだ。
電話番号は、昔ながらの会社の代表または直通電話ではなく、担当者個人の携帯番号である。(会社貸与の携帯)
だから、たぶん、休暇中は出ない。

もし確認が取れたときのために先に書いておいてくださいと用紙を渡されたので、記入台まで引き下がって、現場の直属の上司に電話した。
結構仲良しである。
この人のためにたくさん業務の融通をつけてきたから、評価も上々、のはず。
事情を説明して「私が確かに8/9に退職したということを証言していただけませんか」とお願いすると二つ返事でOKしてくれた。

用紙を記入して、窓口の人に「現場の上司のかたが退職日を確認してくれているのでここにかけてください」と依頼。
この間、役所の人がかけた契約書の電話番号はやはりつながらなったとのこと。

そして、「確認が取れた」と相成り、「証明書なし」ながらめでたく国保の保険証をゲットした。
実は、この際、マイナ保険証を勧められたり、当たり前のようにマイナ一体化の手続きをされたら嫌だなと思っていた。
「紙の保険証で」と念押ししようと思っていたけれど、証明書なしの例外案件で困惑してそっちは吹っ飛んでしまったのか、あるいはマイナのほうが発行が面倒だったのか、普通に紙で作ってもらえたので心底安堵した。

私は12月になっても、変更はせず、資格証明書みたいのをもらうつもり。
紙にこだわる最後の一人となる覚悟だ。
だって、マイナカードはそもそも任意だったはず。
なんでいきなり強制するのか納得がいかない。
そして、リスクはできる限り分散するのが常套手段なのに、なんでもかんでもくっつけて機能を一体化させるのは危機管理に逆行する愚策だと思っている。

一体化によって、過去の診療記録がすぐに見られる利点については、私はお薬手帳のメモ欄に、これまでの既往歴とかかった病院名を書き入れている。
そこに書いてある病院に問い合わせてもらえばよい。
いまはどこだって、名前と生年月日を入力したらすぐに検索できるでしょ。

なんだかんだいっても、マイナ関連には、膨大な利権が動いているからね。
そこがまた反発したくなる一因だ。
国民は、政治家や一部企業の金儲けのための駒じゃない。

ということで、無事に紙の保険証も手に入ったので、これから前のやつを会社宛てに返送する。
喪失届は5日以内に出すとなっているが、私もこの業務をしていたので、保険証がなかなか帰ってこないことはよく知っている。
なので、大抵は届だけ先に出してしまう。
でも私は「いい人」なので(嘘)、ちゃんと5日以内に添付できるように送り返しますよ。

仲良しの上司と打ち合わせて退職日の確認をしてもらったとき、気づいた。
そうか、電話での詐欺ってこうやるんだ。
最初にかけた人だけでなく、次に弁護士だの警察だの銀行だの名乗る人が、最初に話した人の言ったとおりに電話をかけてきて、同じことを言うから信用しちゃうんだ。
仮に、この上司が、本当は上司でもなんでもなく、闇バイトで雇った人でも「そうです。上司です。その退職日で間違いありません」と言ってくれたら通ったのよな。
その人の名も電話番号も、私が伝えただけで契約書にもどこにも書いてないので。

マニュアルや決まりに沿えば、これはNG案件だったのかもしれない。
そうとわかっていても、私は一度は押してみる。

証明書なしの案件なのに、私を信用してくれたのよな。
ありがとう、職員さん。
いまはなんでもダウンロードでき、対面でなくてはならないというようなことは減った。
でも、こういう交渉が実ったとき、やっぱり対面よねと思う。

ぶっちゃけ、一時でも10割払うのが嫌だったという話。
いや、お金の問題じゃなくて、何もせずに諾々と不都合を受け入れるのが嫌というへそまがりの話。


読んでいただきありがとうございますm(__)m