自分を少しだけ”特別”にしてくれたモノ
私は自分に自信がない。
別にブスだと言われて育ったわけじゃない。いじめられていたわけでもない。
人生で告白された回数も自慢じゃないが、いや、若干自慢だが、別に少なくはない。
特別美人というわけではないけど、アイドル顔やアニメ顔が好きなヲタク趣味な女子からは、運動部時代からなぜか絶大な支持を得ており、他チーム女子からも「ずっと可愛いと思ってた♡」と声を掛けられる始末。
両親や祖父母からもたっぷり愛情を受け、容姿を貶されることもなく、自分がブスだなんて思っていたわけではない。
ただ、友達が、可愛すぎたのだ。
というのも、小学校、中学校、高校、大学、私の隣はなぜかいつも美人がいた。
美人は決まって、男女問わず人気者だ。私が隣にいたとしても、みんな決まって友人だけに話しかける。私に用があってくる人はいない。いつもおまけの気分だった。
私と二人きりになった時でも、その友達についての話しかしない人も少なくなかったし、性別問わず、そういう人は今でも私の身近にいる。今あなたの目の前にいるのは、その友達ではなく、紛れもなく、私なのに。私については、何も聞いてくれないのね、と、いつも小さく心が痛んだ。
別に、ちやほやしてほしかったわけじゃない。自分はこの場にいながら、この場にいないような、じわじわと、自己肯定感を消されていくような感覚があった。自分には個性がない、個性がないから興味を持ってもらえない、そんなふうにも思った。いつも友人ばかり特別扱いされるのがなんとなく苦痛だった。年頃の女の子が、人との関わりの中で、自分の”存在価値”というのを確認することはそんなにおかしな話ではないはずだ。
だけど、私にもひとつ、必ず注目されることがあった。
小さい頃から歌を歌えば、大人にも、友達にも注目された(…らしい、小さすぎて記憶にない)。
カラオケに行けば、今まで友人にしか興味なかった男の先輩たちは、驚いた表情をして私に注目した。
隣の部屋にいた知らない人が、私の歌を聴きにきたこともあったし(田舎エピソード)、友達とカラオケ行けば、動画を撮られなかったことはなかった。みんな、私の後には歌いたがらなかったし、「先輩に歌教えてもらいたいっす☆」と言い出した後輩もいた。
別に、ちやほやしてほしかったわけじゃない。だけど、”歌”が少しだけ、私を特別にしてくれた。
この話にオチがあるわけじゃない。
自分に歌がなかったら、どんな人生だったんだろうと、ほぼ副業声楽家のくせに、一丁前に思ったのである。
自分が思っている以上に、歌は自分の生活の一部になっている。歌をしていない自分が想像できない。
自分が思っている以上に、歌うことが好きだ。
トップを争う歌手になれなくてもいい。
だけど、これからも、歌で彩られた毎日になりますように。
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