前鋸筋を診るポイント
一般の人にとっては、そもそも何て読むのかわかりませんよね?
「ぜんきょきん」と読みます。
「猫背」や「巻き肩」の原因にもなる筋肉と聞くと、わかりやすいかもしれません。
今回は、施術家や専門家向けの内容になっています。
はじめに
前鋸筋は第1~9肋骨から始まり、肩甲骨の内側縁につく、面積の大きい筋肉です。
(詳しい図などは適当に検索してもらうか、一応リンク貼っておきます。)https://nobiru-karada.com/functional-anatomy-serratus-anterior#toc1
前鋸筋を考える時に1つの筋肉としてみるのではなく、筋繊維の方向から3つに分けて考えてみるとわかりやすいです。
また、筋肉のまわりには外腹斜筋、広背筋、大胸筋、小胸筋、大小菱形筋などとの繋がりがあり、それらと併せてみていくことで前鋸筋の理解が深まります。
今回は僕が普段使っている「ヒューマン・アナトミー・アトラス」の3D画像と、実際の施術経験からお話していきます。
1,3つに分けて考える
筋繊維の方向から、
①上部 ②中部 ③下部
の3つに分けて考えてみます。
①上部は、起始を第1~3肋骨、停止が肩甲骨内側縁の上角~肩甲棘付近まで。
筋繊維の方向から、肋骨前面を下方へ下げる様な作用が考えられる。
②中部は、起始を第4~6肋骨、停止が肩甲骨内側縁の肩甲棘付近~下角まで。
線維の方向から、上部と下部両方の作用が考えられる。
③下部は、起始を第7~9肋骨、停止が肩甲骨内側縁の下角付近に集中している。
世の中には「肩甲骨はがし」なるものなどがありますが、僕はただ漠然と肩甲骨はがしをするのでは意味がないと思っています。
前鋸筋が硬ければ、「肩甲骨が張り付いて体から離れない」とか「肩甲骨の隙間が出来ない」という事がありますが、その原因が上・中・下部のどこにあるかをプロなら見極める必要があると思っています。
2,周りの筋肉とのつながり
①小・大菱形筋
この筋同士の関係は、「対」になります。
菱形筋が短縮すれば、肩甲骨同士を寄せる様な姿勢になり、この時前鋸筋は伸張します。
一緒に短縮するという事もありますが、基本は相反する作用だと考えます。
②外腹斜筋
この筋の連結が起こるのは、第5~9肋骨です。
前鋸筋の字の如く、ノコギリ状になっている部分でガッチリ噛んでいる印象。
③広背筋
広背筋外側縁で繋がっている。
④大胸筋
大胸筋外側縁と前鋸筋は、3D画像でみる限りでは直接繋がってはいないが、間の組織などでの繋がりが感じられる。
「猫背」や「巻き肩」など、胸郭との動きの中で連動したり、関わりが深いつながりです。
前鋸筋は、別名「ボクサー筋」と言われていますが、この筋単体で使う事などは日常生活の中では少ないのではないでしょうか?
3,呼吸と免疫に関係する
呼吸で主に働くのは横隔膜ですが、前鋸筋には呼吸補助の作用もあります。
そのメカニズムを少し説明します。
息を吸う時、肋骨上部の前面は上方に上がります。肋骨の下部は、横に広がります。
ポンプハンドル運動とバケツハンドル運動というものです。(図を引用→ https://care-plus.co.jp/semi/archive/sp/000600.html )
簡単に言うと、前鋸筋が硬くなっていると呼吸時に肋骨がうまく動かないという事です。
つまり、「呼吸が浅い」原因の一つになります。
次に免疫との関係ですが、
体は酸素を必要としています。
呼吸が浅くなると「酸素の交換」がしにくくなり、体の隅々まで酸素が行き渡らなくなります。
細胞が働く原動力の酸素が不足すると、免疫だけでなく体に支障が出ます。
いま、コロナで「パルスオキシメーター」が注目されていますが、前鋸筋の問題が数値として出るかはわかりません。
わからないというのは、数値測定して検証していないという事もありますが、呼吸や呼吸補助に働く筋が他にもいくつかあります。
肋間筋、胸鎖乳突筋、斜角筋などがそうです。
呼吸が止まれば人間は死んでしまいます。
そんな生死に関わる重要な部分には、一つがダメになっても、代わりが効く様になっているものです。
例えば、筋肉を動かしているのは神経です。
それを支配神経と言って、基本的には一つの筋肉に対して一つの神経が分布しています。
しかし、中には複数分布している筋肉もあります。
この理由として、体の重要な部分が、ケガか何かで一つの神経が遮断しても、もう一方ある事で、麻痺の程度を抑えていると聞いた事があります。
生物の進化過程で、合理的な体の構造になっているのです。
まとめ
・3つの部位に分ける
・筋肉の繋がり
・呼吸との関連
前鋸筋の起始停止からわかるように、
今回は肋骨側にフォーカスをあてて書いています。
肩甲骨側の問題(例えば、肩甲上腕リズムなど)と、合わせて見ていくことでより理解が深まります。
そのあたりはまた機会があれば、書いていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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