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わたしにとってタンゴは「度が過ぎた趣味」だから(Haruna✖️Sakurako)

-Profile-

Haruna…2016年に東京でタンゴを始め、わずか4年のキャリアでアジア選手権決勝進出、上海タンゴマラソンシングル部門優勝。2019年以降、都内各所のミロンガでゲスト出演。2020年には東京の他、中国の北京、上海、広州、深セン、重慶、成都、武漢、蘇州、さらに香港、韓国のソウルの各イベント及びミロンガに出演予定。2020年蘇州タンゴフェスティバルのゲストとして招待されている。ブエノスアイレス旅行中にタンゴに出会った後も、現地で学び修練する為に3度渡航している。

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Sakurako...3歳から器械体操を始め、インターハイ、国民体育大会など受賞歴多数。18歳で引退し、22歳でフランスのボルドーへ3ヶ月、パリに1年留学する。パリの大学に在学中は「ここでしかできない経験を」をモットーに選択体育でタンゴを選ぶ。担当教員の勧めでパリ最大級のスポーツ連合であるParis Universite Clubに加入。帰国までの数ヶ月、タンゴの朝練→大学の授業→レッスンアシスタントというダンス漬けの毎日を過ごした。 2016年に帰国した後は、アルゼンチンタンゴのアジアチャンピオンである窪田央に師事。2017年、福岡市民会館で世界的タンゴアンサンブルのアストロリコ四重奏と共演する。 2019年1月、ダンスインストラクターとして本格的に活動開始。 リード役・フォロー役どちらも研究し、レッスンでは両役つとめることで男女問わず、未経験の方に分かりやすく指導する。

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さまざまな音楽経験が、独特のリズム感を生み出した

Sakurako(以下、桜) 初めてタンゴを見たとき、「これは自分でもできる」って思ったというエピソードが好き。

Haruna(以下、春) そうなんだよね(笑)大学院の卒業旅行でブエノスアイレスに行ったの。「カフェ・トルトーニ」っていう老舗の地下で初めてショータンゴを見た。あの時は、根拠のない自信があったんだよね。
「これならわたしにもできそう!」っていう。
それで、踊る気満々で現地でタンゴシューズを買って帰ったの。

 すごい行動力(笑) Harunaは小さい頃からいろいろなことに挑戦してるし、タンゴに出会ったのも何かの縁なのかもね。

 今までやってきたのは、バレエ、ヴァイオリン、テニス、ピアノ、ドラム、声楽かな。

 これまでの経験で、タンゴに活きてることは?

 音楽をやってたのは、大きいかな。曲のパターンやルールがわかるから、知らない曲でも次の展開の予測がついたり、どの楽器が鳴ってるとか転調したとか、聞き取りやすい耳はある程度できていると思う。あとは曲の流れと体のリズムを一致させるって感じかな。

 それはうらやましいな。うちもエレクトーンを10年くらい経験したのに、踊ってるときは全然曲を聞けてない…

 音楽との関係でいえば、踊るときはヴァイオリンを演奏する感覚に近いかな。呼吸の仕方、抑揚のつけ方は楽器を弾くときも意識するし。

桜 面白い!身体と楽器で媒介は違うとはいえ、自分の見えないナニカを表現する点では近いものがあるのかもね。

 そうだね。

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クリスチャン・ナオ、ペアの一体感のナゾ

桜 今はクリスチャン・ナオさんに習ってるんだよね。どんなところがすごいと思う?

 一体感のある動きの中で、それぞれが体の能力を最大限に引き出せている点かな。二人のパワーバランスが均等というのか。

 パワーバランスってどういうこと?

 片方だけ目立って、もう一方が裏方役みたいなカップルいるでしょ。
これもひとつのあり方だから良い、悪いってことはないんだけど。

 たしかに。世界的に有名なダンサーでも、目立つもの同士が組んだときに、なんだか踊りがごちゃごちゃに見えちゃうときがある。

 その点、クリスチャン・ナオさんはお互いに華やかな踊りでかつ一体感があると思う。

 たしかに。あの一体感はどうやって作るんだろうね。

 最近気づいたんだけど、女性側が一体感を作るのがひとつの理想なのかなと思う。男が進む方向とか音どりの根幹とかを決めて、そこに女が動きを合わせて「ふたりで踊っているかのようにみせる」って感じ。
つまり、女性側が働かないと、ふたりの一体感が作れない。

 その解釈は新しいね。たしかに、男性がハイレベルなペアが数組いたとして、たしかに「上手な踊り」は成立する。
だけど、踊りに一体感があるかどうかは別な気がするね。

春 「一体感」には女性側の力量が大きく関わっている気がするなぁ。

 一体感を作り出すうえで、「相手を感じる」のもキーポイントだよね。
相手と組むときに何か意識してることは?

 大事なのは相手の重心と軸がわかること。入門のときにまず始めるエクササイズは重心移動だよね。相手が左右、どちらの足に軸を置いているのか。その先になると「いま重心が少し右に傾いた」「体重がかかとに乗っている」とか、より細かい変態的な練習になる。
プロのダンサーはこの感覚が優れていると思う。相手を感じる精度の違い、みたいな。

 それは分かるなぁ。初めて組んだときは「相手の顔が近い!」くらいで、感じるも何も、自分の体を動かすので精一杯だった。

 始めたばかりの頃はピクセル画の映像みたいな。感覚がザラザラして分かりづらいというか。それがどんどん練習を積んでいくと4Kテレビのようにより鮮明に相手が分かるようになる…はずだと思って練習してる。

桜 相手を感じる能力は、グレードアップしていく電子機器みたいなのね。

 あとは、感情や情動的なことは練習中は考えないようにしてる。
「相手と気持ちを合わせる」といっても、「気持ち」は常に変わっていくもの。再現しづらいし、反復練習ができない。もっと物理的に、相手の位置を正確にとらえて互いに動きやすい場所を探すことの方が重要だと思う。

理想のパートナーは、お互いが意見を言い合える信頼関係があること

桜 ペアで踊ることについて、やっぱり生涯のパートナーを見つけたい?

 ブランド化されたカップルにあこがれはあるよ。ただ、ずっと一緒に踊っていける固定のパートナーを見つけることがベストかどうかはわからない。

 世界で活躍するプロダンサーの中にも、パフォーマンスの度にパートナーを変えている人もいるしね。

 そうそう。この世界は女性が多いから、そもそも選ぶことすら難しい。

 特にステージタンゴをやりたいんだったら、なおさらパートナー探しは大変だよね。

 同じ目標を持っていて且つパートナー不在の男性って、日本全国探してみてもほんの一握りでしょ。せまい選択肢の中でそのときの自分にとってのベストのパートナーを見つけるしかないよね。
ソロか、ペアか。なぜその選択をしたのか、あるいはせざるを得ないのか。
そのあたりの事情をほかのダンサーにも聞いてみたいね。

 今後、この企画が続いてたら聞いてみるね(笑) Harunaはどんな人が理想のパートナーなの?

春 踊りの感覚が合うかどうかよりも、一日の練習時間がどれだけ確保できるのか、目標設定は同じくらいなのか、金銭感覚(月にいくらレッスンやスタジオに使えるか)は合うのか、とか物理的な条件が大事だな。
あとは踊った時の感覚について意見を出し合い、矯正できるとか、圧倒的なレベル差があり、どちらかがもう片方を教えるとか。
どんなパターンでもいいけど、大事なのはふたりが成長していく上でのプロセスが確立できてることだから。

 なるほど。アブラッソが合うとか、組んだときの匂いが良いとか、そういうものは二の次なんだね。

 あとは、パートナー選びの点で言えば、プロなのか趣味で踊るかでも選ぶ基準は変わってくるよね。前者の場合は仕事をする上での信頼関係が必要だけど、後者の場合は顔が好みだとか、フィーリングが合うだとか、何でもいいよね。

 Harunaはどのポジションなの?

春 わたしの場合は、タンゴは「度が過ぎた趣味」だから(笑)。
人前でデモをしたい。そしてやるからには観客に「ああ、見てよかったな」と思われるパフォーマンスができるようになりたい。
だから練習してるし、今のパートナーはこの考えを共有できるから。

 「度が過ぎた趣味」のなかで追及していることは?

 無駄な力を使わずに、自然な動きをつなげられるよう意識してる。
「自然に動く」って口で言うよりずっと難しいよね。つい筋肉に頼っちゃう。

 わかる!すごいダンサーはよく「自然に」とか「普通に」って表現するけど、無駄を全部省いた動きをしたらそんな表現になっちゃうんだろうね。

春 そうそう。今のわたしは気合で踊っているというのか(笑)
そうじゃなくて、「骨」で立って踊りたい。
あと、たまに息が止まっちゃうんだよね。
元から呼吸が浅いのもあるんだけど、踊りに集中していると、途中で「わたし、いま息が止まってた!」と気が付くこともある。

 あ、呼吸の話はうちも気になる。
凄腕ダンサーは組んだときにどんな意識してるのか、とか。
床を踏むとき、毎回吸う、吐くのタイミング合わせてるの?とか。
この話は今ここでするには時間がないから、今度の企画でできたらいいなぁ。

 とにかく、息が止まっちゃうと体重が床までしっかり伝わらなかったり、無駄に力が入ったりするし、それは「自然な動き」ではないよね。
呼吸への意識は今後の課題だね。


※2022年現在、Harunaは都内でレッスンやプラクティカ、エクシビジョンを行っています。対価をいただくという意味でプロ活動を始めたので、遂に趣味を超えました。引き続きタンゴを追求中です。

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